您现在的位置: 贯通日本 >> 作家 >> 新美 南吉 >> 正文

花のき村と盗人たち(はなのきむらとぬすびとたち)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-10-23 6:50:05  点击:  切换到繁體中文


 そうです。ほんとうに、盗人ぬすびとのかしらはいていたのであります。――かしらはうれしかったのです。じぶんはいままで、ひとからつめたいでばかりられてました。じぶんがとおると、人々ひとびとはそらへんなやつがたといわんばかりに、まどをしめたり、すだれをおろしたりしました。じぶんがこえをかけると、わらいながらはなしあっていたひとたちも、きゅうに仕事しごとのことをおもしたようにこうをむいてしまうのでありました。いけおもてにうかんでいるこいでさえも、じぶんがきしつと、がばッとたいをひるがえしてしずんでいくのでありました。あるとき猿廻さるまわしの背中せなかわれているさるに、かきをくれてやったら、一口ひとくちもたべずにべたにすててしまいました。みんながじぶんをきらっていたのです。みんながじぶんを信用しんようしてはくれなかったのです。ところが、この草鞋わらじをはいた子供こどもは、盗人ぬすびとであるじぶんにうしをあずけてくれました。じぶんをいい人間にんげんであるとおもってくれたのでした。またこの仔牛こうしも、じぶんをちっともいやがらず、おとなしくしております。じぶんが母牛ははうしででもあるかのように、そばにすりよっています。子供こども仔牛こうしも、じぶんを信用しんようしているのです。こんなことは、盗人ぬすびとのじぶんには、はじめてのことであります。ひと信用しんようされるというのは、なんといううれしいことでありましょう。……
 そこで、かしらはいま、うつくしいこころになっているのでありました。子供こどものころにはそういうこころになったことがありましたが、あれからながあいだ、わるいきたなこころでずっといたのです。ひさしぶりでかしらはうつくしいこころになりました。これはちょうど、あかまみれのきたな着物きものを、きゅうににきせかえられたように、奇妙きみょうなぐあいでありました。
 ――かしらのからなみだながれてとまらないのはそういうわけなのでした。
 やがて夕方ゆうがたになりました。松蝉まつぜみきやみました。むらからはしろゆうもやがひっそりとながれだして、うえにひろがっていきました。子供こどもたちはとおくへいき、「もういいかい。」「まあだだよ。」というこえが、ほかのものおととまじりあって、ききわけにくくなりました。
 かしらは、もうあの子供こどもかえってるじぶんだとおもってっていました。あの子供こどもたら、「おいしょ。」と、盗人ぬすびとおもわれぬよう、こころよく仔牛こうしをかえしてやろう、とかんがえていました。
 だが、子供こどもたちのこえは、むらなかえていってしまいました。草鞋わらじ子供こどもかえってませんでした。むらうえにかかっていたつきが、かがみ職人しょくにんみがいたばかりのかがみのように、ひかりはじめました。あちらのもりでふくろうが、二声ふたこえずつくぎってきはじめました。
 仔牛こうしはおなかがすいてたのか、からだをかしらにすりよせました。
「だって、しようがねえよ。わしからはちちねえよ。」
 そういってかしらは、仔牛こうしのぶちの背中せなかをなでていました。まだからなみだていました。
 そこへ四にん弟子でしがいっしょにかえってました。

       三

「かしら、ただいまもどりました。おや、この仔牛こうしはどうしたのですか。ははア、やっぱりかしらはただの盗人ぬすびとじゃない。おれたちがむらさぐりにいっていたあいだに、もうひと仕事しごとしちゃったのだね。」
 釜右ヱ門かまえもん仔牛こうしていいました。かしらはなみだにぬれたかおられまいとしてよこをむいたまま、
「うむ、そういってきさまたちに自慢じまんしようとおもっていたんだが、じつはそうじゃねえのだ。これにはわけがあるのだ。」
といいました。
「おや、かしら、なみだ……じゃございませんか。」
海老之丞えびのじょうこえとしてききました。
「この、なみだてものは、はじめるとるもんだな。」
といって、かしらはそでをこすりました。
「かしら、よろこんでくだせえ、こんどこそは、おれたち四にん、しっかり盗人根性ぬすっとこんじょうになってさぐってまいりました。釜右ヱ門かまえもんきん茶釜ちゃがまのあるいえを五けんとどけますし、海老之丞えびのじょうは、五つの土蔵どぞうじょうをよくしらべて、がったくぎぽんであけられることをたしかめますし、大工だいくのあッしは、こののこぎりなんなくれる家尻やじりを五つましたし、角兵ヱかくべえ角兵ヱかくべえでまた、足駄あしだばきでえられるへいを五つました。かしら、おれたちはほめていただきとうございます。」
鉋太郎かんなたろう意気いきごんでいいました。しかしかしらは、それにこたえないで、
「わしはこの仔牛こうしをあずけられたのだ。ところが、いまだに、りにないのでよわっているところだ。すまねえが、おまえら、わけして、あずけていった子供こどもさがしてくれねえか。」
「かしら、あずかった仔牛こうしをかえすのですか。」
釜右ヱ門かまえもんが、のみこめないようなかおでいいました。
「そうだ。」
盗人ぬすびとでもそんなことをするのでごぜえますか。」
「それにはわけがあるのだ。これだけはかえすのだ。」
「かしら、もっとしっかり盗人根性ぬすっとこんじょうになってくだせえよ。」
鉋太郎かんなたろうがいいました。
 かしらは苦笑にがわらいしながら、弟子でしたちにわけをこまかくはなしてきかせました。わけをきいてれば、みんなにはかしらの心持こころもちがよくわかりました。
 そこで弟子でしたちは、こんどは子供こどもをさがしにいくことになりました。
草鞋わらじをはいた、かわいらしい、七つぐれえの男坊主おとこぼうずなんですね。」
とねんをおして、四にん弟子でしっていきました。かしらも、もうじっとしておれなくて、仔牛こうしをひきながら、さがしにいきました。
 つきのあかりに、野茨のいばらとうつぎのしろはながほのかにえているむらよるを、五にん大人おとな盗人ぬすびとが、一ぴき仔牛こうしをひきながら、子供こどもをさがしてあるいていくのでありました。
 かくれんぼのつづきで、まだあの子供こどもがどこかにかくれているかもれないというので、盗人ぬすびとたちは、みみずのいている辻堂つじどうえんしたかきうえや、物置ものおきなかや、いいにおいのする蜜柑みかんのかげをさがしてみたのでした。ひとにきいてもみたのでした。
 しかし、ついにあの子供こどもあたりませんでした。百姓達ひゃくしょうたち提燈ちょうちんれてて、仔牛こうしをてらしてたのですが、こんな仔牛こうしはこのあたりではたことがないというのでした。
「かしら、こりゃっぴてさがしてもむだらしい、もうしましょう。」
海老之丞えびのじょうがくたびれたように、みちばたのいしこしをおろしていいました。
「いや、どうしてもさがして、あの子供こどもにかえしたいのだ。」
とかしらはききませんでした。
「もう、てだてがありませんよ。ただひとつのこっているてだては、村役人むらやくにんのところへうったえることだが、かしらもまさかあそこへはきたくないでしょう。」
釜右ヱ門かまえもんがいいました。村役人むらやくにんというのは、いまでいえば駐在巡査ちゅうざいじゅんさのようなものであります。
「うむ、そうか。」
とかしらはかんがえこみました。そしてしばらく仔牛こうしあたまをなでていましたが、やがて、
「じゃ、そこへこう。」
といいました。そしてもうあるきだしました。弟子でしたちはびっくりしましたが、ついていくよりしかたがありませんでした。
 たずねて村役人むらやくにんいえへいくと、あらわれたのは、はなさきちかかるように眼鏡めがねをかけた老人ろうじんでしたので、盗人ぬすびとたちはまず安心あんしんしました。これなら、いざというときに、つきとばしてげてしまえばいいとおもったからであります。
 かしらが、子供こどものことをはなして、
「わしら、その子供こども見失みうしなってこまっております。」
といいました。
 老人ろうじんは五にんかおまわして、
「いっこう、このあたりで見受みうけぬひとばかりだが、どちらからまいった。」
とききました。
「わしら、江戸えどから西にしほうへいくものです。」
「まさか盗人ぬすびとではあるまいの。」
「いや、とんでもない。わしらはみなたび職人しょくにんです。釜師かまし大工だいく錠前屋じょうまえやなどです。」
とかしらはあわてていいました。
「うむ、いや、へんなことをいってすまなかった。お前達まえたち盗人ぬすびとではない。盗人ぬすびとものをかえすわけがないでの。盗人ぬすびとなら、ものをあずかれば、これさいわいとくすねていってしまうはずだ。いや、せっかくよいこころで、そうしてとどけにたのを、へんなことをもうしてすまなかった。いや、わしは役目やくめがら、ひとうたがうくせになっているのじゃ。ひとさえすれば、こいつ、かたりじゃないか、すりじゃないかとおもうようなわけさ。ま、わるくおもわないでくれ。」
老人ろうじんはいいわけをしてあやまりました。そして、仔牛こうしはあずかっておくことにして、下男げなん物置ものおきほうへつれていかせました。
たびで、みなさんおつかれじゃろ、わしはいまいいさけをひとびん西にしやかた太郎たろうどんからもらったので、つきながら縁側えんがわでやろうとしていたのじゃ。いいとこへみなさんこられた。ひとつつきあいなされ。」
 ひとの老人ろうじんはそういって、五にん盗人ぬすびと縁側えんがわにつれていきました。
 そこでさけをのみはじめましたが、五にん盗人ぬすびと一人ひとり村役人むらやくにんはすっかり、くつろいで、十ねんもまえからのいのように、ゆかいにわらったりはなしたりしたのでありました。
 するとまた、盗人ぬすびとのかしらはじぶんのなみだをこぼしていることにがつきました。それを老人ろうじん役人やくにんは、
「おまえさんは上戸じょうごえる。わしはわら上戸じょうごで、いているひとるとよけいわらえてる。どうかわるおもわんでくだされや、わらうから。」
といって、くちをあけてわらうのでした。
「いや、この、なみだというやつは、まことにとめどなくるものだね。」
とかしらは、をしばたきながらいいました。
 それから五にん盗人ぬすびとは、おれいをいって村役人むらやくにんいえました。
 もんて、かきのそばまでると、なにおもしたように、かしらがちどまりました。
「かしら、なにわすれものでもしましたか。」
鉋太郎かんなたろうがききました。
「うむ、わすれもんがある。おまえらも、いっしょにもういっぺんい。」
といって、かしらは弟子でしをつれて、また役人やくにんいえにはいっていきました。
御老人ごろうじん。」
とかしらは縁側えんがわをついていいました。
なんだね、しんみりと。上戸じょうごのおくのるかな。ははは。」
老人ろうじんわらいました。
「わしらはじつは盗人ぬすびとです。わしがかしらでこれらは弟子でしです。」
 それをきくと老人ろうじんをまるくしました。
「いや、びっくりなさるのはごもっともです。わしはこんなことを白状はくじょうするつもりじゃありませんでした。しかし御老人ごろうじんこころのよいおかたで、わしらをまっとうな人間にんげんのようにしんじていてくださるのをては、わしはもう御老人ごろうじんをあざむいていることができなくなりました。」
 そういって盗人ぬすびとのかしらはいままでしてたわるいことをみな白状はくじょうしてしまいました。そしておしまいに、
「だが、これらは、昨日きのうわしの弟子でしになったばかりで、まだなにわるいことはしておりません。お慈悲じひで、どうぞ、これらだけはゆるしてやってください。」
といいました。

 つぎあさはなのきむらから、釜師かまし錠前屋じょうまえや大工だいく角兵ヱ獅子かくべえじしとが、それぞれべつのほうていきました。四にんはうつむきがちに、あるいていきました。かれらはかしらのことをかんがえていました。よいかしらであったとおもっておりました。よいかしらだから、最後さいごにかしらが「盗人ぬすびとにはもうけっしてなるな。」といったことばを、まもらなければならないとおもっておりました。
 角兵ヱかくべえかわのふちのくさなかからふえひろってヒャラヒャラとらしていきました。

       四

 こうして五にん盗人ぬすびとは、改心かいしんしたのでしたが、そのもとになったあの子供こどもはいったいだれだったのでしょう。はなのきむら人々ひとびとは、むら盗人ぬすびとなんからすくってくれた、その子供こどもさがしてたのですが、けっきょくわからなくて、ついには、こういうことにきまりました、――それは、土橋どばしのたもとにむかしからあるちいさい地蔵じぞうさんだろう。草鞋わらじをはいていたというのがしょうこである。なぜなら、どういうわけか、この地蔵じぞうさんには村人むらびとたちがよく草鞋わらじをあげるので、ちょうどそのあたらしいちいさい草鞋わらじ地蔵じぞうさんのあしもとにあげられてあったのである。――というのでした。
 地蔵じぞうさんが草鞋わらじをはいてあるいたというのは不思議ふしぎなことですが、なかにはこれくらいの不思議ふしぎはあってもよいとおもわれます。それに、これはもうむかしのことなのですから、どうだって、いいわけです。でもこれがもしほんとうだったとすれば、はなのきむら人々ひとびとがみなこころ人々ひとびとだったので、地蔵じぞうさんが盗人ぬすびとからすくってくれたのです。そうならば、また、むらというものは、こころのよい人々ひとびとまねばならぬということにもなるのであります。





底本:「ごんぎつね・夕鶴 少年少女日本文学館第十五巻」講談社
   1986(昭和61)年4月18日第1刷発行
   1993(平成5)年2月25日第13刷発行
入力:田浦亜矢子
校正:もりみつじゅんじ
1999年10月25日公開
2006年1月27日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。



●表記について
  • このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。
  • [#…]は、入力者による注を表す記号です。

上一页  [1] [2]  尾页


 

作家录入:贯通日本语    责任编辑:贯通日本语 

  • 上一篇作家:

  • 下一篇作家:
  •  
     
     
    网友评论:(只显示最新10条。评论内容只代表网友观点,与本站立场无关!)
     

    没有任何图片作家

    广告

    广告