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文語詩稿 一百篇(ぶんごしこう いっぴゃっぺん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-10-29 16:48:21  点击:  切换到繁體中文



  〔うたがふをやめよ〕


うたがふをやめよ、  林は寒くして、
いささかの雪凍りしき、  根まがり杉ものびてゆるゝを。

胸張りて立てよ、  林の雪のうへ、
青き杉葉の落ちちりて、  空にはあまた烏なけるを。

そらふかく息せよ、  杉のうれたかみ、
烏いくむれあらそへば、  氷霧ぞさつとひかり落つるを。



  電気工夫


(直き時計はさまかたく、   ぞうに鍛へしは強し)
さはあれ攀ぢる電塔の、   四方に辛夷の花深き。

南風かけつ光の網織れば、     ごろろと鳴らす碍子群、
艸火のなかにまじらひて、  蹄のたぐひけぶるらし。



  〔すゝきすがるゝ丘なみを〕


すゝきすがるゝ丘なみを、  にはかにわたる南かぜ、
窪てふ窪はたちまちに、  つめたき渦を噴きあげて、
古きミネルヴァ神殿の、  廃址のさまをなしたれば、
ゲートルきりと頬かむりの、  闘士嘉吉もしばらくは、
萱のつぼけを負ひやめて、  面あやしく立ちにけり。



  〔乾かぬ赤きチョークもて〕


乾かぬ赤きチョークもて、   文を抹して教頭は、
いらかを覆ふ黒雲を、     めがねうつろに息づきぬ。

さびしきすさびするゆゑに、  ぬかほの青き善吉ら、
そらの輻射の六月を、     声なく惨と仰ぎたれ。



  〔腐植土のぬかるみよりの照り返し〕


腐植土のぬかるみよりの照り返し、  材木の上のちひさき露店。

腐植土のぬかるみよりの照り返しに、  二銭の鏡あまたならべぬ。

腐植土のぬかるみよりの照り返しに、  すがめの子一人りんと立ちたり。

よく掃除せしラムプをもちて腐植土の、  ぬかるみを駅夫大股に行く。

風ふきて広場広場のたまり水、  いちめんゆれてさゞめきにけり。

こはいかに赤きずぼんに毛皮など、  春木ながしの人のいちれつ。

なめげに見高らかに云ひ木流しら、  鳶をかつぎて過ぎ行きにけり。

列すぎてまた風ふきてぬかり水、  白き西日にさゞめきたてり。

西根よりみめよき女きたりしと、  角の宿屋に眼がひかるなり。

かつきりと額を剃りしすがめの子、  しきりに立ちて栗をたべたり。

腐植土のぬかるみよりの照り返しに  二銭の鏡売るゝともなし。



  中尊寺〔一〕


七重の舎利の小塔に、  蓋なすや緑の燐光。

大盗は銀のかたびら、  をろがむとまづ膝だてば、
赭のまなこたゞつぶらにて、  もろの肱映えかゞやけり。

手触れ得ず十字燐光、  大盗は礼してゆる。



  嘆願隊


やがて四時ともなりなんを、  当主いまだに放たれず、
外の面は冬のむらがらす、   山の片面のかゞやける。

二羽の烏の争ひて、      さつと落ち入る杉ばやし、
このとき大気飽和して、    霧は氷と結びけり。



  〔一才のアルプ花崗岩みかげを〕


一才のアルプ花崗岩みかげを、    おのも積む孤輪車ひとつわぐるま

(山はみな湯噴きいでしぞ)  髪赭きわらべのひとり。

(われらみなぬしとならんぞ)  みなかみはたがねうつ音。

おぞの蟇みちをよぎりて、   にごり谷けぶりは白し。



  〔小きメリヤス塩の魚〕


小きメリヤス塩の魚、  藻草花菓子烏賊の脳、
雲の縮れの重りきて、  風すさまじく歳暮るゝ。

はかなきかなや夕さりを、  なほふかぶかと物おもひ、
街をうづめて行きまどふ、  みのらぬ村の家長たち。



  〔日本球根商会が〕


日本球根商会が、       よきものなりと販りこせば、
いたつきびとは窓ごとに、   春きたらばとねがひけり。

夜すがら温き春雨に、     風信子華の十六は、
黒き葡萄と噴きいでて、    雫かゞやきむらがりぬ。

さもまがつびのすがたして、  あまりにくらきいろなれば、
朝焼けうつすいちいちの、   窓はむなしくとざされつ。

七面鳥はさまよひて、     ゴブルゴブルとあげつらひ、
小き看護は窓に来て、     あなやなにぞといぶかりぬ。



  庚申


歳に七度はた五つ、   庚の申を重ぬれば、
稔らぬ秋をかしこみて、   家長ら塚ををさめにき。

汗に蝕むまなこゆゑ、  ばうの鎖の火の数を、
七つと五つあるはたゞ、 一つの雲と仰ぎ見き。



  賦役


みねの雪よりいくそたび、  風はあをあを崩れ来て、
萌えし柏をとゞろかし、   きみかげさうを軋らしむ。

おのれと影とたゞふたり、  あれと云はれし業なれば、
ひねもす白き眼して、    放牧のがひの柵をつくろひぬ。



  〔商人ら やみていぶせきわれをあざみ〕


商人ら、やみていぶせきわれをあざみ、
川ははるかの峡に鳴る。

ましろきそらの蔓むらに、 雨をいとなむみそさゞい、
黒き砂糖の樽かげを、   ひそかにわたる昼の猫。

病みに恥つむこの郷を、
つめたくすぐる春の風かな。



  風底


雪けむり閃めき過ぎて、  ひとしばし汗をぬぐへば、
布づつみになふ時計の、  リリリリとひゞきふるへる。



  〔雪げの水に涵されし〕


雪げの水に涵されし、   御料草地のどての上、
犬の皮着てたゞひとり、  菫外線をい行くもの。

ひかりとゞろく雪代の、  土手のきれ目をせな円み、
兎のごとく跳ねたるは、  かの耳しひの牧夫なるらん。



  病技師〔二〕


あへぎてくれば丘のひら、    地平をのぞむ天気輪、
白き手巾を草にして、      をとめらみたりまどゐしき。

大寺のみちをこととへど、    いらへず肩をすくむるは、
はやくも死相われにありやと、  粛涼をちの雲を見ぬ。



  〔西のあをじろがらん洞〕


西のあをじろがらん洞、    一むらゆげをはきだせば、
ゆげはひろがり環をつくり、  雪のお山を越し申す。

わさび田ここになさんとて、  枯草原にこしおろし、
たばこを吸へばこの泉、    たゞごろごろと鳴り申す。

それわさび田に害あるもの、  一には野馬 二には蟹、
三には視察、四には税、    五は大更の酒屋なり。

山を越したる雲かげは、    雪をそゞろにすべりおり、
やがては藍の松こめや、    虎の斑形を越え申す。



  卒業式


三宝または水差しなど、  たとへいくたび紅白の、
甘き澱みに運ぶとも、   鐘鳴るまではカラぬるませじと、
うなじに副へし半巾は、  慈鎮くわ尚のごとくなり。



  〔燈を紅き町の家より〕


燈を紅き町の家より、      いつはりの電話来れば、
(うみべより売られしその子)  あわたゞし白木のひのき。

雪の面に低く霧して、      桑の群影ひくなかを、
あゝ鈍びし二重のマント、    銅版の紙片をおもふ。





底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
   1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
※底本は、1作品が1ページにおさまるように行間を調整している。ただし、このファイルでは、作品の末尾にそのつど[#改ページ]と書き込むことはせず、頁の変わり目ごとに3行をあけた。
※底本は、「作者専用の詩稿用紙に書かれた詩篇を収録し」、多くの詩篇で、詩稿の形式に合わせて上下に二句を配置し、字間スペースなどを調整して下の句の頭が横にそろうように組んである。この形を取っている詩篇に関しては、本ファイルでも、句間を最低全角2字空けとし、下の句の頭を横にそろえた。
入力:junk
校正:今井忠夫
2003年9月4日作成
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