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一握の砂(いちあくのすな)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-21 15:52:31  点击:  切换到繁體中文



 煙

   一

やまひのごと
思郷しきやうのこころく日なり
目にあをぞらのけむりかなしも

おのが名をほのかに呼びて
涙せし
十四じふしの春にかへるすべなし

青空に消えゆく煙
さびしくも消えゆく煙
われにし似るか

かの旅の汽車の車掌しやしやう
ゆくりなくも
我が中学の友なりしかな

ほとばしる喞筒ポンプの水の
心地ここちよさよ
しばしは若きこころもて見る

師も友も知らでめにき
なぞに似る
わが学業のおこたりのもと

教室の窓よりげて
ただ一人
かの城址しろあとに寝に行きしかな

不来方こずかたのお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五じふごの心

かなしみといはばいふべき
物のあぢ
我のめしはあまりに早かり

晴れし空あふげばいつも
口笛を吹きたくなりて
吹きてあそびき

夜寝ても口笛吹きぬ
口笛は
十五の我の歌にしありけり

よくしかる師ありき
ひげの似たるより山羊やぎと名づけて
口真似もしき

われととも
小鳥に石を投げて遊ぶ
後備大尉こうびたいゐの子もありしかな

城址しろあと
石に腰掛こしか
禁制のをひとりあぢはひしこと

そののちに我を捨てし友も
あの頃は共に書読ふみよ
ともに遊びき

学校の図書庫としよぐらの裏の秋の草
なる花咲きし
今も名知らず

花散れば
づ人さきに白のふくいへづる
我にてありしか

今は亡き姉の恋人のおとうとと
なかよくせしを
かなしと思ふ

夏休みててそのまま
かへり
若き英語の教師もありき

ストライキ思ひでても
今はや吾が血をどらず
ひそかにさび

盛岡もりをかの中学校の
露台バルコン
欄干てすり最一度もいちど我をらしめ

神有りと言ひ張る友を
きふせし
かの路傍みちばたくりもと

西風に
内丸大路うちまるおほぢの桜の葉
かさこそ散るをみてあそびき

そのかみの愛読のしよ
大方おほかた
今は流行はやらずなりにけるかな

石ひとつ
坂をくだるがごとくにも
我けふの日に到り着きたる

うれひある少年せうねんの眼にうらやみき
小鳥の飛ぶを
飛びてうたふを

解剖ふわけせし
蚯蚓みみずのいのちもかなしかり
かの校庭の木柵もくさくもと

かぎりなき知識のよくに燃ゆる眼を
姉はいたみき
人恋ふるかと

蘇峯そほうしよを我にすすめし友早く
かう退しりぞきぬ
まづしさのため

おどけたる手つきをかしと
我のみはいつも笑ひき
博学の師を

さいに身をあやまちし人のこと
かたりきかせし
師もありしかな

そのかみの学校一のなまけ者
今は真面目まじめ
はたらきて

田舎ゐなかめく旅の姿を
三日みかばかり都にさら
かへる友かな

茨島ばらじまの松の並木の街道を
われと行きし少女をとめ
さいをたのみき

眼を病みて黒き眼鏡めがねをかけし頃
その頃よ
一人泣くをおぼえし

わがこころ
けふもひそかに泣かむとす
友みなおのが道をあゆめり

さきんじて恋のあまさと
かなしさを知りし我なり
先んじて

きようきたれば
友なみだれ手をりて
酔漢ゑひどれのごとくなりて語りき

人ごみの中をわけ
わが友の
むかしながらのふとつゑかな

見よげなる年賀のふみを書く人と
おもひ過ぎにき
三年みとせばかりは

夢さめてふっと悲しむ
わが眠り
昔のごとく安からぬかな

そのむかし秀才しうさいの名の高かりし
らうにあり
秋のかぜ吹く

近眼ちかめにて
おどけし歌をよみでし
茂雄しげをの恋もかなしかりしか

わが妻のむかしの願ひ
音楽のことにかかりき
今はうたはず

友はみな或日あるひ四方しはうに散りきぬ
そののち八年やとせ
げしもなし

わが恋を
はじめて友にうち明けしよるのことなど
思ひづる日

糸切れし紙鳶たこのごとくに
若き日の心かろくも
とびさりしかな

   二

ふるさとのなまりなつかし
停車場ていしやばの人ごみの中に
そをきにゆく

やまひあるけもののごとき
わがこころ
ふるさとのこと聞けばおとなし

ふと思ふ
ふるさとにゐて日毎ひごときしすずめの鳴くを
三年みとせ聴かざり

くなれる師がその昔
たまひたる
地理の本など取りいでて見る

その昔
小学校の柾屋根まさやねに我が投げしまり
いかにかなりけむ

ふるさとの
かの路傍みちばたのすて石よ
今年も草にうづもれしらむ

わかれをればいもといとしも
赤き
下駄げたなどしとわめく子なりし

二日ふつか前に山の見しが
今朝けさになりて
にはかに恋しふるさとの山

飴売あめうりのチャルメラけば
うしなひし
をさなき心ひろへるごとし

このごろは
母も時時ときどきふるさとのことを言ひ
秋にれるなり

それとなく
郷里くにのことなど語りでて
秋のに焼くもちのにほひかな

かにかくに渋民村しぶたみむらは恋しかり
おもひでの山
おもひでの川

田もはたも売りて酒のみ
ほろびゆくふるさとびと
心寄する日

あはれかの我の教へし
子等こらもまた
やがてふるさとをててづるらむ

ふるさとをし子等の
相会あいあひて
よろこぶにまさるかなしみはなし

石をもて追はるるごとく
ふるさとをでしかなしみ
消ゆる時なし

やはらかに柳あをめる
北上きたかみ岸辺きしべ目に見ゆ
泣けとごとくに

ふるさとの
村医そんいの妻のつつましき櫛巻くしまきなども
なつかしきかな

かの村の登記所とうきしよに来て
はいみて
間もなく死にし男もありき

小学の首席を我とあらそひし
友のいとなむ
木賃宿きちんやどかな

千代治等ちよぢらちやうじて恋し
子をげぬ
わが旅にしてなせしごとくに

ある年のぼんの祭に
きぬさむ踊れと言ひし
女を思ふ

うすのろの兄と
不具かたはの父もてる三太さんたはかなし
よるふみ

我と共に
栗毛くりげ仔馬こうま走らせし
母の無き子の盗癖ぬすみぐせかな

大形おほがた被布ひふの模様の赤き花
今も目に見ゆ
六歳むつの日の恋

その名さへ忘られし頃
飄然へうぜんとふるさとに来て
せきせし男

意地悪いぢわる大工だいくの子などもかなしかり
いくさでしが
生きてかへらず

肺を病む
極道地主ごくだうぢぬし総領そうりやう
よめとりの日の春のらいかな

宗次郎そうじろ
おかねが泣きて口説くど
大根だいこんの花白きゆふぐれ

小心せうしんの役場の書記の
気のれしうはさに立てる
ふるさとの秋

わが従兄いとこ
野山のかりきしのち
酒のみいへ売りみて死にしかな

我ゆきて手をとれば
泣きてしづまりき
ひてあばれしそのかみの友

酒のめば
かたなをぬきて妻を教師けうしもありき
村をはれき

年ごとに肺病はいびやうやみのえてゆく
村に迎へし
若き医者かな

ほたるがり
川にゆかむといふ我を
山路やまぢにさそふ人にてありき

馬鈴薯ばれいしよのうす紫の花に
雨を思へり
みやこの雨に

あはれ我がノスタルジヤは
きんのごと
心に照れり清くしみらに

友として遊ぶものなき
性悪しやうわるの巡査の子等こら
あはれなりけり

閑古鳥かんこどり
鳴く日となればおこるてふ
友のやまひのいかになりけむ

わが思ふこと
おほかたはただしかり
ふるさとのたよりけるあした

今日聞けば
かのさちうすきやもめびと
きたなき恋に身をるるてふ

わがために
なやめるたまをしづめよと
讃美歌うたふ人ありしかな

あはれかの男のごときたましひよ
今は何処いづこ
何を思ふや

わが庭の白き躑躅つつじ
薄月うすづき
りゆきしことな忘れそ

わが村に
初めてイエス・クリストの道をきたる
若き女かな

霧ふかき好摩かうまはら
停車場の
朝の虫こそすずろなりけれ

汽車の窓
はるかに北にふるさとの山見えれば
えりただすも

ふるさとの土をわが踏めば
何がなしに足かろくなり
おもれり

ふるさとにりてづ心いたむかな
道広くなり
橋もあたらし

見もしらぬ女教師をんなけうし
そのかみの
わが学舎まなびやの窓に立てるかな

かのいへのかの窓にこそ
春の
秀子ひでことともにかはづきけれ

そのかみの神童しんどうの名の
かなしさよ
ふるさとに来て泣くはそのこと

ふるさとの停車場路ていしやばみち
川ばたの
胡桃くるみの下に小石ひろへり

ふるさとの山に向ひて
言ふことなし
ふるさとの山はありがたきかな

 秋風のこころよさに

ふるさとの空とほみかも
たかにひとりのぼりて
うれひてくだ

かうとして玉をあざむく小人せうじん
あきといふに
物を思へり

かなしきは
秋風ぞかし
まれにのみきし涙のしじに流るる

青に
かなしみの玉にまくらして
松のひびきを夜もすがら

びし七山ななやまの杉
火のごとく染めて日りぬ
静かなるかな

そを読めば
うれひ知るといふふみける
いにしへびとの心よろしも

ものなべてうらはかなげに
暮れゆきぬ
とりあつめたる悲しみの日は

水潦みづたまり
暮れゆく空とくれなゐのひもを浮べぬ
秋雨あきさめのち

秋立つは水にかも似る
あらはれて
思ひことごと新しくなる

うれひ来て
丘にのぼれば
名も知らぬ鳥ついばめり赤きばら

秋のつじ
すぢのみちの三すぢへと吹きゆく風の
あと見えずかも

秋の声まづいち早く耳に
かかるさが持つ
かなしむべかり

目になれし山にはあれど
れば
神や住まむとかしこみて見る

わがさむこと世にきて
長き日を
かくしもあはれ物を思ふか

さららさらと雨落ちきた
庭のれゆくを見て
涙わすれぬ

ふるさとの寺の御廊みらう
みにける
小櫛をぐしてふを夢にみしかな

こころみに
いとけなき日の我となり
物言ひてみむ人あれと思ふ

はたはたときびの葉鳴れる
ふるさとの軒端のきばなつかし
秋風吹けば

れあへる肩のひまより
はつかにも見きといふさへ
日記にきに残れり

風流男みやびをは今も昔も
泡雪あわゆき
玉手たまでさしにしゆらし

かりそめに忘れても見まし
石だたみ
ふる草にうもるるがごと

その昔揺籃ゆりかごに寝て
あまたたび夢にみし人か
せちになつかし

神無月かみなづき
岩手いはての山の
初雪のまゆにせまりし朝を思ひぬ

ひでり雨さらさら落ちて
前栽せんざい
はぎのすこしくみだれたるかな

秋の空廓寥くわくれうとして影もなし
あまりにさびし
からすなど飛べ

雨後うごの月
ほどよくれし屋根瓦やねがはら
そのところどころ光るかなしさ

われゑてある日に
細き尾をりて
饑ゑて我を見る犬のつらよし

いつしかに
泣くといふこと忘れたる
我泣かしむる人のあらじか

汪然わうぜんとして
ああ酒のかなしみぞ我にきたれる
立ちてひなむ

※(「蚊」の「文」に代えて「車」、第3水準1-91-55)いとど
そのかたはらの石にきよ
泣き笑ひしてひとり物言ふ

力なくみしころより
口すこしきてねむるが
くせとなりにき

人ひとりるに過ぎざる事をもて
大願たいぐわんとせし
若きあやまち

ずる
そのやはらかき上目うはめをば
づとことさらつれなくせむや

かくばかりあつき涙は
初恋の日にもありきと
泣く日またなし

長く長く忘れし友に
会ふごとき
よろこびをもて水の音

秋の夜の
鋼鉄はがねの色の大空に
火をく山もあれなど思ふ

岩手山いはてやま
秋はふもとの三方さんぱう
野に満つる虫をなにと聴くらむ

父のごと秋はいかめし
母のごと秋はなつかし
いへ持たぬ

れば
ふる心のいとまなさよ
もいがてにかり多く聴く

長月ながつきなかばになりぬ
いつまでか
かくも幼く打出うちいでずあらむ

思ふてふこと言はぬ人の
おくり
忘れなぐさもいちじろかりし

秋の雨に逆反さかぞりやすきゆみのごと
このごろ
君のしたしまぬかな

松の風夜昼よひるひびきぬ
はぬ山のほこら
石馬いしうまの耳に

ほのかなる朽木くちきかを
そがなかのたけの香りに
秋やや深し

時雨しぐれ降るごとき音して
木伝こづたひぬ
人によく似し森のさるども

森の奥
遠きひびきす
のうろにうすひく侏儒しゆじゆの国にかも

世のはじめ
まづ森ありて
半神はんしんの人そが中に火や守りけむ

はてもなく砂うちつづく
戈壁ゴビの野に住みたまふ神は
秋の神かも

あめつちに
わが悲しみと月光げつくわう
あまねき秋のとなれりけり

うらがなしき
よるの物のるを
ひろふがごとくさまよひきぬ

旅の子の
ふるさとにて眠るがに
げに静かにも冬のしかな

 忘れがたき人人

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