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悲しき玩具(かなしきがんぐ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-21 15:56:27  点击:  切换到繁體中文

底本: 日本文学全集12 国木田独歩・石川啄木集
出版社: 集英社
初版発行日: 1967(昭和42)年9月7日
入力に使用: 1972(昭和47)年9月10日第9版


底本の親本: 初版本

 

呼吸いきすれば、
胸のうちにて鳴る音あり。
 こがらしよりもさびしきそのおと

づれど、
心にうかぶ何もなし。
 さびしくも、また、眼をあけるかな。

途中にてふと気が変り、
つとめ先を休みて、今日も、
河岸かしをさまよへり。

咽喉のどがかわき、
まだ起きてゐる果物屋くだものやを探しに行きぬ。
秋の夜ふけに。

遊びにて子供かへらず、
取り出して
走らせて見る玩具おもちやの機関車。

本を買ひたし、本を買ひたしと、
あてつけのつもりではなけれど、
妻に言ひてみる。

旅を思ふをっとの心!
しかり、泣く、妻子つまこの心!
朝の食卓!

いへを出て五町ばかりは、
用のある人のごとくに
歩いてみたれど――

痛む歯をおさへつつ、
日が赤赤あかあかと、
冬のもやの中にのぼるを見たり。

いつまでも歩いてゐねばならぬごとき
思ひぬ、
深夜の町町まちまち

なつかしき冬の朝かな。
湯をのめば、
湯気ゆげがやはらかに、顔にかかれり。

なんとなく、
今朝けさは少しく、わが心明るきごとし。
手のつめを切る。

うっとりと
本の挿絵さしゑに眺めり、
煙草たばこの煙吹きかけてみる。

途中にて乗換のりかへの電車なくなりしに、
泣かうかと思ひき。
雨も降りてゐき。

二晩ふたばんおきに、
の一時頃に切通きりどほしの坂をのぼりしも――
つとめなればかな。

しっとりと
酒のかをりにひたりたる
脳の重みを感じて帰る。

今日けふもまた酒のめるかな!
酒のめば
胸のむかつくくせを知りつつ。

何事か今我つぶやけり。
かく思ひ、
目をうちつぶり、ひをあじはふ。

すっきりと酔ひのさめたる心地ここちよさよ!
夜中に起きて、
すみるかな。

真夜中の出窓でまどでて、
欄干らんかんの霜に
手先をやしけるかな。

どうなりと勝手になれといふごとき
わがこのごろを
ひとりおそるる。

手も足もはなればなれにあるごとき
ものうき寝覚ねざめ
かなしき寝覚!

朝な朝な
でてかなしむ、
下にして寝たはうもものかろきしびれを。

曠野あらのゆく汽車のごとくに、
このなやみ、
ときどき我の心を通る。

みすぼらしき郷里くにの新聞ひろげつつ、
誤植ごしよくひろへり。
今朝のかなしみ。

たれか我を
思ふ存分ぞんぶんしかりつくる人あれと思ふ。
なんの心ぞ。

何がなく
初恋人はつこひびとのおくつきにまうづるごとし。
郊外にぬ。

なつかしき
故郷にかへる思ひあり、
久しりにて汽車に乗りしに。

新しき明日あすきたるを信ずといふ
自分の言葉に
うそはなけれど――

考へれば、
ほんとにしと思ふこと有るやうで無し。
煙管きせるをみがく。

今日ひょいと山が恋しくて
山にぬ。
去年腰掛こしかけし石をさがすかな。

朝寝して新聞読むなかりしを
負債ふさいのごとく
今日も感ずる。

よごれたる手をみる――
ちゃうど
この頃の自分の心にむかふがごとし。

よごれたる手を洗ひし時の
かすかなる満足が
今日の満足なりき。

年明けてゆるめる心!
うっとりと
かたをすべて忘れしごとし。

昨日まで朝からばんまで張りつめし
あのこころもち
忘れじと思へど。

戸のには羽子はねく音す。
笑う声す。
去年の正月にかへれるごとし。

何となく、
今年はよい事あるごとし。
元日の朝、晴れて風無し。

腹の底より欠伸あくびもよほし
ながながと欠伸してみぬ、
今年の元日。

いつの年も、
似たよな歌を二つ三つ
年賀のふみに書いてよこす友。

正月の四日よっかになりて
あの人の
ねんに一度の葉書はがきも来にけり。

世におこなひがたき事のみ考へる
われの頭よ!
今年もしかるか。

人がみな
同じ方角はうがくに向いてく。
それを横より見てゐる心。

いつまでか、
この見飽みあきたる懸額かけがく
このまま懸けておくことやらむ。

ぢりぢりと、
蝋燭らふそくの燃えつくるごとく、
夜となりたる大晦日おほみそかかな。

青塗あをぬりの瀬戸の火鉢によりかかり、
ぢ、眼をけ、
時ををしめり。

なんとなく明日はよき事あるごとく
思ふ心を
しかりて眠る。

過ぎゆける一年のつかれしものか、
元日といふに
うとうと眠し。

それとなく
そのるところ悲しまる、
元日の午後のねむたき心。

ぢっとして、
蜜柑みかんのつゆに染まりたるつめを見つむる
心もとなさ!

手を打ちて
眠気ねむげの返事きくまでの
そのもどかしさに似たるもどかしさ!

やみがたき用を忘れぬ――
途中にて口に入れたる
ゼムのためなりし。

すっぽりと蒲団ふとんをかぶり、
足をちぢめ、
舌を出してみぬ、たれにともなしに。

いつしかに正月も過ぎて、
わが生活くらし
またもとの道にはまりきたれり。

神様と議論して泣きし――
あの夢よ!
ばかりも前の朝なりし。

いへにかへる時間となるを、
ただ一つの待つことにして、
今日も働けり。

いろいろの人の思はく
はかりかねて、
今日もおとなしく暮らしたるかな。

おれがしこの新聞の主筆しゆひつならば、
やらむ――と思ひし
いろいろの事!

石狩いしかり空知郡そらちごほり
牧場のおよめさんより送り
バタかな。

外套ぐわいたうえりあごうづめ、
夜ふけに立どまりて聞く。
よく似た声かな。

Yといふ符牒ふてふ
古日記ふるにつき処処しよしよにあり――
Yとはあの人の事なりしかな。

百姓の多くは酒をやめしといふ。
もっとこまらば、
何をやめるらむ。

目さましてぐの心よ!
年よりの家出の記事にも
でたり。

人とともに事をはかるに
てきせざる、
わが性格を思ふ寝覚ねざめかな。

なにとなく、
案外あんがいに多き気もせらる、
自分と同じこと思ふ人。

自分よりも年若き人に、
半日も気焔きえんきて、
つかれし心!

めづらしく、今日は、
議会をののしりつつ涙でたり。
うれしと思ふ。

ひと晩に咲かせてみむと、
梅のはちを火にあぶりしが、
咲かざりしかな。

あやまちて茶碗をこはし、
物をこはす気持のよさを、
今朝けさも思へる。

猫の耳を引っぱりてみて、
にゃとけば、
びっくりして喜ぶ子供の顔かな。

何故なぜかうかとなさけなくなり、
弱い心を何度もしかり、
金かりに行く。

待てど待てど、
来るはずの人の来ぬ日なりき、
机の位置を此処ここに変へしは。

古新聞!
おやここにおれの歌の事をめて書いてあり、
二三ぎやうなれど。

引越しの朝の足もとに落ちてゐぬ、
女の写真!
忘れゐし写真!

その頃は気もつかざりし
仮名かなちがひの多きことかな、
昔の恋文こひぶみ

八年前はちねんぜん
今のわが妻の手紙のたば
何処どこしまひしかと気にかかるかな。

眠られぬくせのかなしさよ!
すこしでも
眠気ねむけがさせば、うろたへて寝る。

笑ふにも笑はれざりき――
長いことさがしたナイフの
手のうちにありしに。

この四五年、
空をあふぐといふことが一度もなかりき。
かうもなるものか?

原稿紙にでなくては
字を書かぬものと、
かたく信ずる我がのあどけなさ!

どうかかうか、今月も無事ぶじに暮らしたりと、
ほかに欲もなき
晦日みそかの晩かな。

あの頃はよくうそを言ひき。
平気にてよく嘘を言ひき。
汗がづるかな。

古手紙よ!
あの男とも、五年前は、
かほど親しくまじはりしかな。

名はなんと言ひけむ。
姓は鈴木なりき。
今はどうして何処どこにゐるらむ。

生れたといふ葉書はがきみて、
ひとしきり、
顔をはれやかにしてゐたるかな。

そうれみろ、
あの人も子をこしらへたと、
何か気の心地ここちにて寝る。

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