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眉かくしの霊(まゆかくしのれい)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-23 10:39:57  点击:  切换到繁體中文



      五

「ええ、その時、この、村方で、不思議千万な、色出入り、――変な姦通まおとこ事件がございました。
 村入りの雁股かりまたと申すところに(代官ばば)という、庄屋しょうやのおばあさんと言えば、まだしおらしく聞こえますが、代官婆。……渾名あだなで分かりますくらいおそろしく権柄けんべいな、家の系図を鼻に掛けて、おらが家はむかし代官だぞよ、と二言めには、たつみ上がりになりますので。その了簡りょうけんでございますから、中年から後家になりながら、手一つで、まず……せがれどのを立派に育てて、これを東京で学士先生にまで仕立てました。……そこで一頃ひところは東京住居ずまいをしておりましたが、何でも一旦いったん微禄びろくした家を、故郷ふるさとぱだけて、村中のつらを見返すと申して、估券こけんつぶれの古家を買いまして、両三年ぜんから、その伜の学士先生の嫁御、近頃で申す若夫人と、二人で引き籠もっておりますが。……菜大根、茄子なすびなどは料理に醤油したじついえ、だという倹約で、ねぶかにら大蒜にんにく辣薤らっきょうと申す五うんたぐいを、空地あきち中に、植え込んで、塩で弁ずるのでございまして。……もう遠くからぷんと、その家がにおいます。大蒜屋敷の代官婆。……
 ところが若夫人、嫁御というのが、福島の商家の娘さんで学校をでた方だが、当世に似合わないおとなしいやさしい、ちと内輪すぎますぐらい。もっともこれでなくっては代官婆と二人住居はできません。……大蒜ばなれのしたかたで、すきにも、くわにも、連尺にも、婆どのに追い使われて、いたわしいほどよく辛抱なさいます。
 霜月の半ば過ぎに、不意に東京から大蒜屋敷へお客人がございました。学士先生のお友だちで、この方はどこへも勤めてはいなさらない、もっとも画師えかきだそうでございますから、きまった勤めとてはございますまい。学士先生の方は、東京のある中学校でれっきとした校長さんでございますが。――
 で、その画師さんが、不意に、大蒜屋敷に飛び込んで参ったのは、ろくに旅費も持たずに、東京からげ出して来たのだそうで。……と申しますのは――早い話が、細君がありながら、よそに深い馴染なじみが出来ました。……それがために、首尾も義理も世の中は、さんざんで、思い余って細君が意見をなすったのを、何を! と言って、一つ横頬よこぞっぽくらわしたはいいが、御先祖、お両親ふたおや位牌いはいにも、くらわされてしかるべきは自分の方で、仏壇のあるわが家には居たたまらないために、その場からかどを駈け出したは出たとして、知合ちかづきにも友だちにも、女房に意見をされるほどの始末で見れば、行きどころがなかったので、一夜ひとよしのぎに、この木曾谷まで遁げ込んだのだそうでございます、遁げましたなあ。……それに、その細君というのが、はじめ画師えかきさんには恋人で、晴れて夫婦になるのには、この学士先生が大層なお骨折りで、そのおかげで思いがかなったと申したようなわけだそうで。……遁げ込み場所には屈竟くっきょうなのでございました。
 時に、弱りものの画師さんの、その深い馴染というのが、もし、何と……お艶様――手前どもへ一人でお泊まりになったその御婦人なんでございます。……ちょいと申し上げておきますが、これは画師さんのあとをたずねて、雪を分けておいでになったのではございません。その間がざっと半月ばかりございました。その間に、ただいま申しました、姦通まおとこ騒ぎが起こったのでございます。」
 と料理番は一息した。
「そこで……また代官ばばに変な癖がございましてな。癖より病で――あるもの知りの方に承りましたのでは、訴訟狂とか申すんだそうで、ねぶかが枯れたと言っては村役場だ、小児こどもにらんだと言えば交番だ。……派出所だ裁判だと、何でも上沙汰かみざたにさえ持ち出せば、我に理があると、それ貴客あなた、代官婆だけに思い込んでおりますのでございます。
 その、大蒜にんにく屋敷の雁股かりまたへ掛かります、この街道かいどう棒鼻ぼうばなつじに、巌穴いわあなのような窪地くぼちに引っ込んで、石松という猟師が、小児がきだくさんでもっております。四十親仁おやじで、これの小僧の時は、まだ微禄びろくをしません以前の……その婆のとこに下男奉公、女房かかあも女中奉公をしたものだそうで。……婆がえろう家来扱いにするのでございますが、石松猟師も、堅い親仁で、はなはだしく御主人に奉っておりますので。……
 よいの雨が雪になりまして、その年の初雪が思いのほか、夜半よなかを掛けて積もりました。山の、ししうさぎあわてます。猟はこういう時だと、夜更よふけに、のそのそと起きて、鉄砲しらべをして、炉端ろばた茶漬ちゃづけっ食らって、手製てづくりさるの皮の毛頭巾けずきんかぶった。むしろの戸口へ、白髪しらがを振り乱して、蕎麦切色そばきりいろふんどし……いやなやつで、とき色の禿げたのを不断まきます、尻端折しりぱしょりで、六十九歳の代官婆が、跣足はだしで雪の中に突っ立ちました。(内へけものが出た、来てくれせえ。)と顔色がんしょく、手ぶりであえいで言うので。……こんな時鉄砲は強うございますよ、ガチリ、実弾たまをこめました。……旧主人の後室様がお跣足でございますから、石松も素跣足。街道を突っ切ってにら辣薤らっきょう葱畑ねぶかばたけを、さっさっと、化けものを見届けるのじゃ、静かにということで、婆が出て来ました納戸口なんどぐちから入って、中土間へ忍んで、指さされるなりに、板戸の節穴からのぞきますとな、――何と、六枚折の屏風びょうぶなかに、まくらを並べて、と申すのが、寝てはいなかったそうでございます。若夫人が長襦袢ながじゅばんで、掻巻かいまきえりの肩からすべった半身で、画師のひざに白い手をかけて俯向うつむけになりました、背中を男が、でさすっていたのだそうで。いつもは、もんぺを穿いて、木綿もめんのちゃんちゃんこで居る嫁御が、その姿で、しかもそのありさまでございます。石松は化けもの以上に驚いたに相違ございません。(おのれ、不義もの……人畜生にんちくしょう。)と代官婆が土蜘蛛つちぐものようにのさばり込んで、(やい、……動くな、そのざまを一寸でも動いてくずすと――鉄砲あれだぞよ、弾丸あれだぞよ。)と言う。にじり上がりの屏風の端から、鉄砲の銃口すぐちをヌッと突き出して、毛の生えたひきがえるのような石松が、目を光らしてねらっております。
 人相と言い、場合と申し、ズドンとやりかねない勢いでごさいますから、画師さんは面喰めんくらったに相違ございますまい。(天罰はどころじゃ、足四本、手四つ、つら二つのさらしものにしてやるべ。)で、代官婆は、近所の村方四軒というもの、その足でたたき起こして廻って、石松が鉄砲を向けたままの、そのありさまをさらしました。――夜のあけ方には、派出所の巡査おまわり檀那寺だんなでら和尚おしょうまで立ち会わせるという狂い方でございまして。学士先生の若夫人と色男の画師さんは、こうなると、緋鹿子ひがのこ扱帯しごきわらすべで、彩色さいしきをした海鼠なまこのように、雪にしらけて、ぐったりとなったのでございます。
 男はとにかく、嫁はほんとうに、うしろ手にくくりあげると、細引を持ち出すのを、巡査おまわりしかりましたが、叱られるとなおたけり立って、たちまち、裁判所、村役場、派出所も村会も一所にして、姦通かんつうの告訴をすると、のぼせ上がるので、どこへもやらぬ監禁同様という趣で、ひとまず檀那寺まで引き上げることになりましたが、証拠じょうこだと言い張って、嫁に衣服きものを着せることをきませんので、巡査おまわりさんが、雪のかかった外套がいとうを掛けまして、何と、しかし、ぞろぞろと村の女小児こどもまであとへついて、寺へ参ったのでございますが。」
 境はききつつ、ただ幾度いくたび歎息たんそくした。
「――がしたのでございましょうな。画師さんはその夜のうちに、寺から影をかくしました。これはそうあるべきでございます。――さて、聞きますれば、――せがれの親友、兄弟同様の客じゃから、伜同様に心得る。……半年あまりも留守を守ってさみしく一人で居ることゆえ、嫁女や、そなたも、伜と思うて、つもる話もせいよ、と申して、身じまいをさせて、ものまで着かえさせ、寝る時は、にこにこ笑いながら、床を並べさせたのだと申すことで。……嫁御はなるほど、わけしりの弟分の膝にすがって泣きたいこともありましたろうし、芸妓げいしゃでしくじるほどの画師さんでございます、背中をさするぐらいはしかねますまい、……でございますな。
 代官婆の憤り方をお察しなさりとう存じます。学士先生は電報で呼ばれました。何となだめても承知をしません。ぜひとも姦通の訴訟を起こせ。いや、恥も外聞もない、代官といえば帯刀じゃ。武士たるものは、不義ものを成敗せいばいするはかえって名誉じゃ、とこうまで間違っては事面倒で。たって、裁判沙汰にしないとなら、生きておらぬ。咽喉笛のどぶえ鉄砲じゃ、鎌腹かまばらじゃ、奈良井川のふちを知らぬか。……桔梗ヶ池ききょうがいけへ身を沈める……こ、こ、このばばあめ、沙汰の限りな、桔梗ヶ池へ沈めますものか、身投げをしようとしたら、池が投げ出しましょう。」
 と言って、料理番は苦笑した。
「また、今時に珍しい、学校でも、倫理、道徳、修身の方を御研究もなされば、お教えもなさいます、学士は至っての御孝心。かねて評判な方で、嫁御をいたわるはたの目には、ちと弱すぎると思うほどなのでございますから、こうじ果てて、何とも申しわけも面目めんぼくもなけれども、とにかく一度、この土地へ来てもらいたい。万事はその上で。と言う――学士先生から画師えかきさんへのお頼みでございます。
 さて、これは決闘状はたしじょうより可恐おそろしい。……もちろん、村でも不義もののつらへ、つばと石とを、人間の道のためとか申して騒ぐかたが多い真中まんなかでございますから。……どの面さげて画師さんが奈良井へ二度面がさらされましょう、旦那だんな。」
「これは何と言われても来られまいなあ。」
「と言って、学士先生との義理合いでは来ないわけにはまいりますまい。ところで、その画師さんは、その時、どこに居たとおぼします。……いろのことから、しからん、横頬よこぞっぽったという細君の、そでのかげに、申しわけのない親御たちのお位牌いはいから頭をかくして、しりも足もわなわなと震えていましたので、弱った方でございます。……必ず、連れて参ります――と代官ばばに、誓って約束をなさいまして、学士先生は東京へ立たれました。
 その上京中。その間のことなのでございます、――柳橋の蓑吉みのきちねえさん……お艶様が……ここへお泊まりになりましたのは。……」

      六

「――どんな用事の御都合にいたせ、夜中やちゅう、近所が静まりましてから、お艶様が、おたずねになろうというのが、代官婆のところと承っては、一人ではお出し申されません。ただ道だけ聞けば、とのことでございましたけれども、おともが直接じかについて悪ければ、垣根かきね、裏口にでもひそみまして、内々守って進じようで……帳場が相談をしまして、その人選に当たりましたのが、この、ふつつかなてまいなんでございました。……
 お支度したくがよろしくばと、てまい、これへ……このお座敷へ提灯ちょうちんを持って伺いますと……」
「ああ、二つどもえの紋のだね。」と、つい誘われるように境が言った。
「へい。」
 と暗く、含むような、おとがいで返事を吸って、
「よく御存じで。」
「二度まで、湯殿にいていて、知っていますよ。」
「へい、湯殿に……湯殿に提灯をけますようなことはございませんが、――それとも、へーい。」
 この様子では、今しがた庭を行く時、この料理番とともに提灯が通ったなどとは言い出せまい。境は話を促した。
「それから。」
「ちと変な気がいたしますが。――ええ、ざっとお支度済みで、二度めの湯上がりに薄化粧をなすった、めしものの藍鼠あいねずみがお顔の影に藤色ふじいろになって見えますまで、お色の白さったらありません、姿見の前で……」
 境が思わず振り返ったことは言うまでもない。
「金の吸口くちで、烏金しゃくどうで張った煙管きせるで、ちょっと歯を染めなさったように見えます。懐紙かいしをな、まゆにあてててまいを、おも長に御覧なすって、
 ――似合いますか。――」
「むむ、む。」と言う境の声は、氷を頬張ほおばったように咽喉のどつかえた。
「畳のへりが、桔梗ききょうで白いように見えました。
(ええ、勿体ないほどお似合いで。)と言うのを聞いて、懐紙をおのけになると、眉のあとがいま剃立そりたての真青まっさおで。……(桔梗ヶ池の奥様とは?)――(お姉妹きょうだい……いや一倍お綺麗きれいで)とばちもあたれ、そう申さずにはおられなかったのでございます。
 ここをお聞きなさいまし。」……

(お艶さん、どうしましょう。)
「雪がちらちら雨まじりで降る中を、破れた蛇目傘じゃのめで、見すぼらしい半纏はんてんで、意気にやつれた画師さんの細君が、男を寝取った情婦おんなとも言わず、お艶様――本妻が、そのていでは、情婦いろだって工面くめんは悪うございます。目をわずらって、しばらく親許おやもとへ、納屋なや同然な二階借りで引きもって、内職に、娘子供に長唄ながうたなんか、さらって暮らしていなさるところへ、思い余って、細君が訪ねたのでございます。」
(お艶さん、わたしはそう存じます。私が、貴女あなたほどお美しければ、「こんな女房がついています。何のやどが、木曾街道きそかいどうの女なんぞに。」と姦通まおとこ呼ばわりをするそのばばあに、そう言ってやるのが一番早分りがすると思います。)(ええ、何よりですともさ。それよりか、なおその上に、「おめかけでさえこのくらいだ。」と言ってわたしを見せてやります方が、上になお奥さんという、奥行があってようございます。――「奥さんのほかに、私ほどのいろがついています。田舎いなかで意地ぎたなをするもんですか。」ばばあにそう言ってやりましょうよ。そのお嫁さんのためにも。)――

「――あとで、お艶様の、したためもの、かきおきなどに、この様子が見えることに、何ともどうも、つい立ち至ったのでございまして。……これでございますから、何の木曾の山猿やまざるなんか。しかし、念のために土地の女の風俗を見ようと、山王様御参詣ごさんけいは、その下心だったかとも存じられます。……ところを、桔梗ヶ池の、すごい、美しいお方のことをおききなすって、これが時々人目にも触れるというので、自然、代官婆の目にもとまっていて、自分の容色きりょうの見劣りがするには、美しさで勝つことはできない、という覚悟だったと思われます。――もっとも西洋剃刀かみそりをお持ちだったほどで。――それでいけなければ、世の中にうるさばばあ、人だすけに切っちまう――それも、かきおきにございました。
 雪道を雁股かりまたまで、棒端ぼうばなをさして、奈良井川の枝流れの、青白いつつみを参りました。氷のような月が皎々こうこうえながら、山気が霧に凝って包みます。巌石がんせき、がらがらの細谿川ほそたにがわが、寒さに水涸みずがれして、さらさらさらさら、……ああ、ちょうど、あの音、……洗面所の、あの音でございます。」
「ちょっと、あの水口を留めて来ないか、身体からだの筋々へみ渡るようだ。」
「御同然でございまして……ええ、しかし、どうも。」
「一人じゃいけないかね。」
貴方様あなたさまは?」
「いや、なに、どうしたんだい、それから。」
「岩と岩に、土橋がかりまして、向うにえんじゅの大きいのが枯れて立ちます。それが危なかしく、水で揺れるように月影に見えました時、ジイと、てまいの持ちました提灯ちょうちん蝋燭ろうそくが煮えまして、ぼんやりを引きます。(暗くなると、ともえが一つになって、人魂ひとだまの黒いのが歩行あるくようね。)お艶様の言葉に――てまい、はッとしてのぞきますと、不注意にも、何にも、お綺麗きれいさに、そわつきましたか、ともしかけが乏しくなって、かえの蝋燭が入れてございません。――おつき申してはおります、月夜だし、足許あしもと差支さしつかえはございませんようなものの、当館の紋の提灯は、ちょっと土地では幅が利きます。あなたのおためにと思いまして、道はまだ半町足らず、つい一っ走りで、け戻りました。これが間違いでございました。」
 声も、ことばも、しばらく途絶えた。
裏土塀うらどべいから台所口へ、……まだ入りませんさきに、ドーンと天狗星てんぐぼしの落ちたような音がしました。ドーンとこだまを返しました。鉄砲でございます。」
「…………」
「びっくりして土手へ出ますと、川べりに、薄い銀のようでございましたお姿が見えません。提灯も何もり出して、自分でわッと言ってけつけますと、居処いどころが少しずれて、バッタリと土手っ腹の雪をまくらに、帯腰が谿川の石に倒れておいででした。(寒いわ。)とうつつのように、(ああ、冷たい。)とおっしゃると、そのくちびるから糸のように、三条みすじに分かれた血が垂れました。
 ――何とも、かとも、おいたわしいことに――すそをつつもうといたします、乱れづま友染ゆうぜんが、色をそのままに岩に凍りついて、霜の秋草にさわるようだったのでございます。――人も立ち会い、抱き起こし申す縮緬ちりめんが、氷でバリバリと音がしまして、古襖ふるぶすまから錦絵にしきえがすようで、この方が、お身体からだを裂く思いがしました。胸にまった血は暖かく流れましたのに。――
 撃ちましたのは石松で。――親仁おやじが、生計くらしの苦しさから、今夜こそは、どうでもものをと、しとぎもちで山の神を祈って出ました。玉味噌たまみそなすって、くしにさして焼いて持ちます、その握飯には、魔が寄ると申します。がりがり橋という、その土橋にかかりますと、お艶様の方では人が来るのを、よけようと、水が少ないから、つい川の岩に片足おかけなすった。桔梗ヶ池ききょうがいけの怪しい奥様が、水の上を横に伝うと見て、パッと臥打ふしうちに狙いをつけた。おれは魔を退治たのだ、村方のために。と言って、いまもって狂っております。――
 旦那だんな、旦那、旦那、提灯が、あれへ、あ、あの、湯どのの橋から、……あ、あ、ああ、旦那、向うから、てまいが来ます、てまいとおなじ男が参ります。や、並んで、お艶様が。」
 境も歯の根をくいしめて、
「しっかりしろ、可恐おそろしくはない、可恐しくはない。……うらまれるわけはない。」
 電燈のたまが巴になって、黒くふわりと浮くと、炬燵こたつの上に提灯がぼうと掛かった。

「似合いますか。」

 座敷は一面の水に見えて、雪の気はいが、白い桔梗のみぎわに咲いたように畳に乱れ敷いた。





底本:「現代日本文学館3 幸田露伴・泉鏡花」文藝春秋
   1968(昭和43)年10月1日第1刷
底本の親本:「鏡花全集」岩波書店
初出:「苦楽」
   1924(大正13)年5月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:真先芳秋
校正:鈴木厚司
2001年6月7日公開
2005年11月24日修正
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