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地獄街道(じごくかいどう)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-24 16:53:03  点击:  切换到繁體中文

底本: 海野十三全集 第2巻 俘囚
出版社: 三一書房
初版発行日: 1991(平成3)年2月28日
入力に使用: 1991(平成3)年2月28日第1版第1刷
校正に使用: 1991(平成3)年2月28日第1版第1刷

 

   1


 銀座の舗道ほどうから、足を踏みはずしてタッタ百メートルばかり行くと、そこに吃驚びっくりするほどの見窄みすぼらしい門があった。
「おお、此処ここだ――」
 と辻永つじなががステッキをげて、後からいてくる私に注意を与えた。
「ム――」
 まるで地酒じざけを作る田舎家いなかやについている形ばかりの門と選ぶところがなかった。
「さア、入ってみよう」
 辻永は麦藁帽子むぎわらぼうしをヒョイと取って門衛に挨拶あいさつをすると、スタコラ足を早めていった。私も彼の後から急いだけれど、レールなどが矢鱈やたらに敷きまわしてあって、思うように歩けなかった。そして辻永の姿を見失ってしまった。
 私は探偵小説家だ。辻永は私立探偵だった。
 だから二人は知り合ってから、まだ一年と経たないのに十年来の知己ちきよりも親しく見えた。それはどっちも探偵趣味に生くる者同士だったからであった。しかし正直のところ辻永は私よりもずっと頭脳あたまがよかった。彼は私を事件にひっぱりだしては、頭脳の働きについて挑戦するのを好んだ。それは彼の悪癖あくへきだと気にかけまいとするが、時には何か深いたくらみでもあるのではないかと思うことさえあった。
「オーイ。こっちだア――」
 思いがけない方角から、辻永の声がした。オヤオヤと思って、声のする方に近づいてゆくと一つの古ぼけた建物があった。それをひょいとまがると、イキナリ眼前がんぜんひろげられた異常な風景!
 おびただしい荷物の山。まったく夥しい荷物の山だった。山とは恐らくこれほど物が積みあげられているのでなければ、山と名付けられまい。――さすがは大貨物駅だいかもつえきとして知られるS駅の構内こうないだった。
 辻永は大きな木箱きばこの山の側に立って、鼻を打ちつけんばかりに眼をすり寄せている。早くも彼氏、何物かをつかんだ様子だ。小説家と違って本当の探偵だけに、いつでも掴むのがうまい。あまりうまいので、私はときどき自分が小説家たることを忘れて彼の手腕しゅわん嫉妬しっとを感ずるほどだ。
「これだこれだ山野やまの君」と彼は私の名を思わず大きく叫んだ。「例の箱がいつ何処どこで作られたんだかすっかり判っちまったよ。第一回の箱は七月四日の製造だ。第二回目のは七月十八日の製造だ。そして第三回目のは今から一週間前、実に八月八日の製造だということが判ったよ」
「そりゃどうして?」私はすっかりおどろいた。
「ナニこれは殆んど努力で判ったのさ。今日は箱の山がどんな形に、どんな数量を積み重ねてあるかを知りたかったのだ。あとは発送簿はっそうぼの数量を逆にしらべてゆくと、あの箱を積んだ日、したがってあれを製造した日がわかるという順序なんだ」
 よくは呑みこめなかったけれど、やっぱり頭脳のえた辻永だと感心した。
 例の箱とは、前後三回にわたって発見された有名なる箱詰屍体はこづめしたい事件の、その箱のことなのである。
 細かいことは省略するが、その三つの屍体はすべての貨物積置場に積まれてあったビール箱の中から発見されたのだった。その箱は人間の身体がゆっくり入るばかりか、ビールがその隙間すきまに五ダースも入ろうという大量入りの木箱だった。
 事件を並べてみると、不思議な共通点があった。第一に、屍体のぬしはいずれも皆、若いサラリーマンや学窓がくそうを出たばかりの人達だった。第二にいずれも東京市内の住人じゅうにんだったのも、大して不思議でないとしても、不思議は不思議である。ただし三人の住所は近所ではなくバラバラであった。第三に三人の屍体は同様の打撲傷だぼくしょう擦過傷さっかしょうおおわれていたが、別にピストルを射ちこんだ跡もなければ、刃物はものえぐった様子もない。もう一つ第四に、三人とも殺されるほどの事情を一向持っていなかったということ。それからこれはりだが、三人が三名とも名刺入れをもっていて、直ぐに身許みもとが判明したそうだ。
 ビール会社では、こんな青年の屍体が、どうして箱の中に入っていたか判らないと弁明べんめいした。その工場の内部を隅々まで調べてみたが、そんな青年達の忍びこんでいたような形跡けいせき一向いっこう見当らなかった。ビール瓶に藁筒わらづつかぶして自動的に箱につめる大きな器械がある。これは昼となく夜となく二十四時間ぶっとおしで運転しているもので停めたことはないものだが、それをワザワザ停めても調べてみた。その結果もなんの得るところが無かった。
 事件はそのまま迷宮めいきゅうへ入った――というのが箱詰屍体事件のあらましである。

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