您现在的位置: 贯通日本 >> 作家 >> 海野 十三 >> 正文

蠅(はえ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 15:56:18  点击:  切换到繁體中文


   第五話 ロボット蠅


 赤軍の陣営では、軍団長(ぐんだんちょう)イワノウィッチが本営から帰ってくると、司令部の広間へ、急遽(きゅうきょ)幕僚(ばくりょう)の参集(さんしゅう)を命じた。
「実に容易ならぬ密報をうけたのじゃ」と軍団長は青白い面に深い心痛(しんつう)の溝(みぞ)を彫(ほ)りこんで一同を見廻した。「白軍には駭(おどろ)くべき多数の新兵器が配布されているそうな。その新兵器は、いかなる種類のものか、ハッキリしないのであるが、中に一つ探りあてたのは、殺人音波(さつじんおんぱ)に関するものだ。耳に聞えない音――その音が、一瞬間に人間の生命を断ってしまうという。とにかく一同は、この新兵器の潜入(せんにゅう)について、極度(きょくど)の注意を払って貰わにゃならぬ。そして一台でも早く見つけたが勝じゃ。一秒間発見が早ければ千人の兵員を救う。一秒間発見が遅ければ、千人の兵員を喪(うしな)う。各自は注意を払って、新兵器の潜入を発見せねばならぬ」
 並居(なみい)る幕僚は、思わずハッと顔色を変えた。そして銘々(めいめい)に眼(まなこ)をギョロつかせて、室内を見廻した。もしやそこに、見馴(みな)れない新兵器がいつの間にやら搬(はこ)びこまれていはしまいかと思って……。
「ややッ、ここに変なものがあるぞ」
 幕僚の一人、マレウスキー中尉が突然叫んだ。
「ナナなんだって?」
 一同は長靴をガタガタ床にぶっつけながら中尉の方を見た。彼は室の隅(すみ)の卓子(テーブル)の上に、手のついた真黒い四角な箱を発見したのだ。
「こッこれだッ。怪しいのは……」
「なんだ其の箱は」
「爆弾が仕掛けてあるのじゃないかナ」
「イヤ短波の機械で、われ等の喋(しゃべ)っていることが、そいつをとおして、真直(まっすぐ)に敵の本営へ聞えているのじゃないか」
「それとも、殺人音波が出てくる仕掛けがあるのじゃないか」
 一同は喚(わめ)きあって、その四角の黒函(くろばこ)をグルリと取り巻いた。
「あッはッはッ」と人垣のうしろの方から、無遠慮(ぶえんりょ)な爆笑の声がひびいた。フョードル参謀の声で。
「あッはッはッ。それア弁当屋(べんとうや)の出前持(でまえもち)の函なんだ。多分お昼に食った俺(おれ)の皿が入っているだろう」
「なんだって、弁当の空(から)か?」
「どうして、それがこんなところにあるのか」
「イヤ、さっき弁当屋の小僧が来た筈なんだが、持ってゆくのを忘れたのじゃあるまいかのウ」フョードル参謀は云った。
「忘れてゆくとは可笑(おか)しい、中を検(しら)べてみろ」
「早くやれ、早くやれッ」
「よォし」とフョードル参謀は進み出た、「じゃ明(あ)けるぞオ」
 一同の顔はサッと緊張した。軍団長イワノウィッチは、大刀(だいとう)を立(たて)て反身(そりみ)になって、この際の威厳(いげん)を保(たも)とうと努力した。
「よォし、明けろッ」
「明けるぞオ」
 フョードルは、黒函(くろばこ)の蓋に手をかけると、音のせぬようにソッと外(はず)しにかかった。一同の心臓は大きく鼓動をうって、停りそうになった。
「……?」
 蓋はパクリと外れた。
「なアんだ」
 見ると、函の中には、白い料理の皿が二三枚重(かさ)なっているばかりだった。皿の上には食いのこされた豚の脂肉(あぶらにく)が散らばっていて、蠅が二匹、じッと止(と)まっていた。
「ぷーッ。ずいぶん汚い」
「見ないがよかった。新兵器だなんていうものだから、つい見ちまった」
 一同は興(きょう)ざめ顔のうちに、まアよかったという安堵(あんど)の色を浮べた。
 そのとき入口の扉(ドア)が開いて、少年がズカズカと入ってきた。
「おや、貴様は何者かッ」
「誰の許しを得て入って来たか」
 将校たちに詰めよられた少年は、眼をグルグル廻すばかりで、頓(とみ)に返辞も出せなかった。
「オイ、許してやれよ」フョードル参謀が声をかけた、「いくら白軍(はくぐん)の新兵器が恐ろしいといったって、あまり狼狽(ろうばい)しすぎるのはよくない……」
「なにッ」
「そりゃ、弁当屋の小僧だよ」
「弁当屋の小僧にしても……」
「オイ小僧、ブローニングで脅(おどか)されないうちに、早く帰れよ」
 少年はフョードルの言葉が呑みこめたものか、肯(うなず)いて黒い函をとると、重そうに手に下げ、パッと室外に走り出した。
「なーんだ、本当の弁当屋の小僧か」
「いや小僧に化けて、白軍の密偵が潜入して来るかも知れないのだ」とマレウスキー中尉は神経を尖(とが)らした。
「油断はせぬのがよい。しかし卑怯(ひきょう)であっては、戦争は負けじゃ」
 と一伍一什(いちぶしじゅう)を見ていた軍団長はうまいことを述(の)べて、大きな椅子のうちに始めて腰を下ろした。
「注意をすることが、卑怯であるとは思いませぬ」とマレウスキー中尉は引込んでいなかった。「怪しいことがあれば、そいつは何処までも注意しなきゃいけません。たとえば……」
「たとえば何だという?」とフョードルが憎々(にくにく)しげに中尉を睨(にら)みつけた。
「たとえば、ああ、そこをごらんなさい。一匹の蠅が壁の上に止まっている。そいつを怪しいことはないかどうかと一応疑ってみるのがわれわれの任務ではないか」
「蠅が一匹、壁に止まっているって? フン、あれは……あれは先刻(さっき)弁当屋の小僧が持って来た弁当の函から逃げた蠅一匹じゃないか。すこしも怪しくない」
「それだけのことでは、怪しくないという証明にはならない。それは蠅があの黒い函の中から逃げだせるという可能性について論及(ろんきゅう)したに過ぎない。あの蠅を捕獲(ほかく)して、六本の脚と一個の口吻(こうふん)とに異物(いぶつ)が附着しているかいないかを、顕微鏡の下に調べる。もし何物か附著していることを発見したらば、それを化学分析する。その結果があの黒函の中の内容である豚料理の一部分であればいいけれど、それが違っているか、或いは全然附着物が無いときには、どういうことになるか。あの蠅は弁当屋の出前の函にいたものではないという証明ができる。さアそうなれば、あの蠅は一体どこからやって来たのだろうか。もしやそれは一種の新兵器ではないかと……」
「あッはッはッはッ」と参謀フョードルは腹を抱(かか)えて笑い出した。「君の説はよく解った。そういう種類の説は昔から非常に簡単な名称が与えられているのだ。曰く、懐疑(かいぎ)主義とネ」
「イヤ参謀、それは粗笨(そほん)な考え方だと思う。一体この室に蠅などが止まっているというのが極(きわ)めて不思議なことではないか。ここは軍団長の居らるる室だ。ことに季節は秋だ。蠅がいるなんて、わが国では珍らしい現象だ」
「弁当屋が持って来たのなら、怪しくはあるまいが……」
「ことに新兵器なるものは、敵がまったく思いもかけなかったような性能と怪奇な外観をもつのを佳(よし)とする。もし蠅の形に似せた新兵器があったとしたら……。そしてあの弁当屋の小僧が実は白軍のスパイだったとしたら……」
「君は神経衰弱だッ」。
「参謀は神経が鈍(にぶ)すぎるッ」
「いいや、君は……」
「鈍物参謀(どんぶつさんぼう)」
「やめいッ!」
 と軍団長が大喝(たいかつ)した。
「はッ」と二人は直立不動の姿勢をとった。
「もうやめいッ、論議は無駄だ。喋っている遑(いとま)があったら、なぜあの蠅を手にとって検(しら)べんのじゃ」
「はッ」
 二人は顔を見合わせた。誰が蠅を検べにゆくのがよいか――と考えた。その途端(とたん)に、フョードルも、中尉もハッと顔色をかえて、胸をおさえた。軍団長もヨロヨロとよろめきながら、右手で心臓を圧(おさ)えた。そればかりではない。司令部広間にいた幕僚も通信手も伝令も、皆が胸を圧えた。そして次の瞬間には立てて並べてあった本がバタリバタリと倒れるように、一同はつぎつぎに床の上に昏倒(こんとう)した。間もなく、この大広間は、世界の終りが来たかのように、一人のこらず死に絶えた。まことに急激な、そして不可解な死に様(よう)だった。
 たった一つ、依然として活躍しているものがあった。それは壁にとまっていた一匹の蠅だった。その蠅の小さい一翅(いっし)は、どうしたものか、まったく眼に見えなかった。それは翅が無いのではなく、翅が非常に速い振動をしていたからである。その翅の特異な振動から、殺人音波が室内にふりまかれているのであった。白軍の新兵器、殺人音波は、実にこの蠅から放射されていたのである。
 蠅は死にそうでいて、中々元気であった。人間が死んで、蠅が死なないのはおかしいが、もし手にとって、顕微鏡を持つまでもなく肉眼でよく見るならば、この蠅が唯(ただ)の蠅ではなく、ロボット蠅(ばえ)であることを発見したであろう。
 この精巧なロボット蠅は、弁当屋の小僧が持って来て、壁にとりつけていったものだった。蠅が止まっていると格別気にもしなかった間にあの小僧に化けたスパイは遠くに逃げ失せた。その頃、一つの電波が白軍の陣営から送られ、それであのロボット蠅の翅は忽(たちま)ち振動を始めたのだ。その翅からは戦慄(せんりつ)すべき殺人音波が発射され、室内の一同を鏖殺(みなごろ)しというわけだった。軍団長のいうとおり、もっと早く蠅を手にとって検べていたら、こんな悲惨な結果にはならなかったろう。
 ロボット蠅は、それから後も、続々(ぞくぞく)と偉功(いこう)を樹(た)てた。

上一页  [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] 下一页  尾页


 

作家录入:贯通日本语    责任编辑:贯通日本语 

  • 上一篇作家:

  • 下一篇作家:
  •  
     
     
    网友评论:(只显示最新10条。评论内容只代表网友观点,与本站立场无关!)
     

    没有任何图片作家

    广告

    广告