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猫の草紙(ねこのそうし)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-2 5:52:23  点击:  切换到繁體中文


     二

「これではとてもやりきれない。かつえじにぬほかなくなる。いまのうちにどうかしてねこをふせぐ相談そうだんをしなければならない。」というので、あるばんねずみ仲間なかまのこらずおてら本堂ほんどうえんの下にあつまって、会議かいぎひらきました。
 そのとき、中でいちばんとしったごましおねずみが、一だんたかだんの上につっがって、
「みなさん、じつになさけないの中になりました。元来がんらいねこはあわびかいの中のかつ節飯ぶしめししるかけめしべてきていればいいはずのものであるのに、われわれをってべるというのは何事なにごとでしょう。このまますてておけば、いまにこのの中にねずみのたねきてしまうことになるのです。いったいどうしたらいいでしょう。」
 すると元気げんきのよさそうな一ぴきのわかいねずみががって、
「かまわないから、ねこているすきをねらって、いきなりのどぶえいついてやりましょう。」
 といました。
 みんなは「さんせいだ。」というようなかおをしましたが、さてだれ一人ひとりすすんでねこかっていこうというものはありませんでした。
 するとまた一ぴき背中せなかのまがったねずみがぶしょうらしくすわったまま、のろのろしたこえで、
「そんなことをってもねこにはかなわないよ。それよりかあきらめて、田舎いなかってねずみになって、気楽きらくらしたほうがましだ。」
 といました。
 なるほど田舎いなかってねずみになって、木のやきびがらをかじってらすのは気楽きらくにちがいありませんが、これまでさんざんみやこでおいしいものをべて、おもしろいおもいをしたあとでは、さてなかなかその決心けっしんもつきませんでした。
 そこでいちばんおしまいに、中でもふんべつのありそうなあたまの白いねずみががりました。そしてちついた調子ちょうしで、
「まあなにかというよりも、もう一人間にんげんたのんで、ねこをつないでもらうことにしたらいいだろう。」
 といました。
 するとみんながこえわせて、
「そうだ。そうだ。それにかぎる。」
 といました。
 そこで議長ぎちょうのごましおねずみが仲間なかまからえらばれて、ここのおてら和尚おしょうさんのところへ行って、もう一ねこつなをつけてもらうようにたのみに行くやくけることになりました。ごましおねずみはさっそく本堂ほんどうがって、和尚おしょうさんのお居間いままでそっとしのんでいって、
和尚おしょうさま、和尚おしょうさま、おねがいでございます。」
 といました。
 和尚おしょうさんはおどろいて、目をさまして、
「おお、だれかとおもったらねずみか。そのねがいというのはなんだな。」
「はい、和尚おしょうさまも御存ごぞんじのとおり、このごろおかみのおいつけで、みやこねこのこらずはないになりましたので、つみのないわたくしどもの仲間なかまで、毎日まいにち毎晩まいばんねこするどつまさきにかかっていのちとすものが、どのくらいありますかわかりません。もう一にちものあなの中にんだまま、おなかをへらしてぬか、そとに出てねこわれるか、ほかにどうしようもございません。和尚おしょうさま、どうかおじひにもう一ねこをうちの中につなぐようにおかみへおねがもうげてくださいまし。今日きょうはそのおねがいにがったのでございます。」
 とねずみはって、殊勝しゅしょうらしくわせて、和尚おしょうさんをおがみました。
 和尚おしょうさんはしばらくかんがえていましたが、
「なるほど、そうくとどくだが、おまえほうにもいろいろわるいことがあるよ。まあ、おまえたちも人のすてたものや、そこらにこぼれたものひろってべていればいいのだが、これまでのように、夜昼よるひるかまわず、人のうちの中をかけまわってぬすいをしたり、着物きものいやぶったり、さんざんわるいいたずらばかりしておきながら、今更いまさらねこくるしめられるといってごといにても、それは自業自得じごうじとくというもので、わたしにだってどうしてもやられないよ。」
 こうわれて、ごましおねずみもがっかりして、すごすごかえっていきました。
 もとのえんしたかえっててみますと、じいさんねずみも、わかねずみも、おおねずみも、ねずみもみんなさっきのままで、くびながくして、ひげをてて、ごましおねずみがいまかえるか、いまかえるかとちかねていました。けれどもごましおねずみがしおしおと、和尚おしょうさんにってことわられたはなしをしますと、みんなはいっそうがっかりして、またわいわい、いつまでもまとまらない相談そうだんをはじめました。そのうちにけてしまったので、こんなにおおぜいあつまっているところをうっかりねこつけられては、それこそたいへんだといって、
「じゃあ、あすのばんもう一和尚おしょうさんのところへみんなでって、たのむことにしよう。」
 とそれだけきめて、またこそこそとてんでんのあなの中にわかれてかえっていきました。

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