| 底本: | 蜘蛛の糸・杜子春・トロッコ 他十七篇 |
| 出版社: | 岩波文庫、岩波書店 |
| 初版発行日: | 1990(平成2)年8月16日 |
| 入力に使用: | 1990(平成2)年8月16日第1刷 |
昔、
或風のない春の日の暮、書生はふと外へ出て見ると、何かこの若い女の
「これは一体どうしたのです? 何もこういう年よりを、擲らないでも
書生は彼女の手を抑え、熱心にたしなめにかかりました。
「第一年上のものを擲るということは、修身の道にもはずれている
「年上のものを? この木樵りはわたしよりも年下です。」
「冗談を言ってはいけません。」
「いえ、冗談ではありません。わたしはこの木樵りの母親ですから。」
書生は
「わたしはこの
「では、……この木樵りはもう七十位でしょう。そのまた木樵りの母親だというあなたは、一体いくつになっているのです?」
「わたしですか? わたしは三千六百歳です。」
書生はこういう言葉と一しょに、この美しい隣の女が仙人だったことに気づきました。しかしもうその時には、何か神々しい彼女の姿は
底本:「蜘蛛の糸・杜子春・トロッコ 他十七篇」岩波文庫、岩波書店
1990(平成2)年8月16日第1刷発行
入力:j.utiyama
校正:もりみつじゅんじ
1999年5月15日公開
2004年1月13日修正
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