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赤外線男(せきがいせんおとこ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 5:51:43  点击:  切换到繁體中文


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 Z大学に附属している研究所ラボラトリー深山楢彦みやまならひこという理学士が居る。この理学士は大学の方の講座を持ってはいないが、研究所内では有名の人物である。専攻しているのは光学オプティックスであるが、事務的手腕もあるというので、この方の人材じんざいとぼしい研究所の会計方面も見ているという働き手であった。色は白い方で、背丈も高からず、肉附もふくらかであったので、何となく女性めき、この頃もてはやされるスポーツマンとはおよそ正反対の男であった。
 深山理学士が目下研究しているものは、赤外線であった。
 赤外線というのは、一種の光線である。人間は紫、あい、青、緑、黄、だいだい、赤の色や、これ等のまじった透明な光を見ることが出来る。この赤だの青だのは、ラジオと同じような電波であるが、ラジオの電波よりも大変波長が小さい。そのうちでも紫は一番短く、赤は比較的波長が長い。長いといっても一センチメートルの千分の一よりもまだ短い。ラジオの波は三百メートルも四百メートルもあってくらべものにならない。
 ところで光線と名付なづけられるものは、この紫から赤までだけではない。紫よりももっと波長の短い波があって、これを紫外線しがいせんとよんでいる。紫外線療法りょうほうといって、紫外線を皮膚にあてると、人体の活力はメキメキと増進ぞうしんすることは誰も知っている。一方、赤よりも波長の長い光線があって、これを赤外線せきがいせんと呼んでいる。赤外線写真というのが発達して軍事を助けているが、山の頂上から向うの峠を目懸めがけて写真をうつすにしても、普通の写真だとあまり明瞭めいりょうにうつらないが、普通の光線はさえぎり、その風景から出ている赤外線だけで写真をとると、人間の眼では到底とうてい見透みとおしができない遠方までアリアリと写真にうつる。人間が飛行機に乗って、千葉県ちばけんかすみうらの上空から西南せいなんを望んだとすると、東京湾が見え、その先に伊豆半島いずはんとうが見える位が関の山だが、赤外線写真で撮すと、雲のあなたに隠れて見えなかった静岡湾しずおかわんを始め伊勢湾いせわんあたりまでが手にとるように明瞭めいりょうに出る。
 この紫外線も赤外線も、同じ光線でありながら、普通ふつう、人間の眼には感じない。つまり人間の網膜もうまくにある視神経ししんけいは、紫から赤までの色を認識することが出来るが、紫外線や赤外線は見えないといえる。
 見えないといえば、色盲という眼の病気がある。これは赤が見えなくて、赤い日の丸も青い日の丸としか感じない人達がいる。それは視神経の疾患しっかんで、生れつきのものが多い。ひどいのになると、七つの色のどれもが色として見えず、世の中がスクリーンにうつる映画のように黒と灰色と白の濃淡にしか見えない気の毒な人がいて、これを全色盲ぜんしきもうと呼んでいる。軽い色盲でも、赤と青とが判別出来ないのであるから、うっかり円タクの運転をしていても、「進め」の青印と、「止れ」の赤印とをとりちがえ、大事故を発生するおそれがある。現に十年ほど前英国えいこくで、列車大衝突れっしゃだいしょうとつ大椿事だいちんじをひきおこしたことがあったが、そのときのぶっつけた方の運転士は、色盲しきもうだったことが後に判明して、無期懲役の判決をうけたのが無罪になった。人間の視力なんて、まことに不思議なものであり、又デリケートなものである。そして紫から赤までしか見えないなんて、貧弱きわまる視力ではある。
 話が色盲の方へ道草をしてしまったが、この赤外線という光線は、人間の眼に感じないとされているだけに、秘密の用をつとめるとて、重宝ちょうほうされている。甲賀三郎こうがさぶろう氏の探偵小説に「妖光ようこう殺人事件」というのがあるが、それに赤外線を用いた殺人法がべられている。それは赤外線警報器を変形したもので、殺そうという人の通路に赤外線を左の壁から右の壁へ、噴水ふんすいを横にとばしたように通して置くのだ。右の壁の中には光電管といって赤外線を感ずる真空管のようなものが秘密に仕掛けてある。人の通らぬときは、赤外線がこの光電管に入って電気を起こし、ピストルの引金をひっぱろうとするバネを動かないように止めている。ところがもしこの廊下に人が通って赤外線をさえぎると、どうなるかというのに、赤外線は人体で遮られ、光電管には今まで流れていた電気がハタと止るから、従ってピストルの引金を動かないようにおさえていた力がぬけ、即座そくざにズドンとピストルが発射され、その人間をたおす……という中々面白い方法だ。赤外線だから、その被害者の眼に見えなかったので、仕方がない。
 満洲の重要な橋梁きょうりょうの東橋脚きょうきゃくから西橋脚の方へ向け、この赤外線を通し、西の方に光電管をとりつけ、光電管から出る電気で電鈴でんれいの鳴る仕掛しかけをおさえておく。匪賊ひぞくが出て、この橋脚に近づき、赤外線をさえぎると、直ちに光電管の電気が停るから、電鈴を圧えていた力は抜け、電鈴はけたたましく匪賊襲来しゅうらいを鳴り告げる。これも赤外線が見えないところを利用したものである。
 深山みやま理学士の研究問題は、この不可視光線ふかしこうせんと呼ばれる赤外線が人間にも見える装置を作ることにあった。彼は、これを近頃流行のテレヴィジョンに組合わすことに眼をつけた。
 テレヴィジョンは、実験室に居て、その映写幕の上へ、例えば銀座街頭きんざがいとうに唯今現に通行している人の顔を見ることが出来るという器械だ。これが室内の様子を見るとなると、写真撮影場で使うようなまぶしい電灯を点じ、マネキン嬢の顔を強照明きょうしょうめいすることによって、実験室でその顔を見ることが出来る。これが普通のテレヴィジョンであるが、それを赤外線で照らすことにし、この実験室にうつし出そうというのである。
 深山理学士は、あの奇怪な轢死れきし婦人事件のあった日と前後して、この装置の製作にとりかかった。
 それは丁度ちょうど新学期であった。この研究所内も上級の大学生や、大学院学生、さては助手などの配属の変更があって、ゴッタがえしをしていた。
 赤外線研究の彼の仕事も、従来は助手も置かず唯一人でやっていたが、今度は赤外線テレヴィジョン装置を作ったり、ロケーションにゆかねばならなくなることも判り切っていたので、助手が一人欲しいと予算を出したところ、元来がんらい経済難のZ大学なので、助手案は一も二もなく蹴飛けとばされたが、その代り大学部三年の学生で、是非ぜひ赤外線研究をやりたいというひとがいるから、助手がわりにそれを廻そう、当分我慢して、それを使えという所長からの話であった。
 それは四月のたしか十日か十一日の午前九時ごろだった。深山理学士の研究室を外からコツコツとノックするものがあった。
「ちょっと待って下さい」
 学士は室内から声をかけた。
 五分ほど経って、学士はやっと戸口に近づいた。
「まだ居ますか?」
 とみょうな、そしてどっちかというと失礼きわまる質問の言葉を、ドアへだてて向うへ投げかけた。――学士の出てくるのにしびれをきらして帰ってゆく人も多かったので、こういうのが学士の習慣だった。人を待たすことに一向頓着とんじゃくしないのも有名なる学士の習慣だった。
「はア――」
 というような返辞へんじと、カタリと靴の鳴る音が、ドア彼方あっちでした。
 学士はそこで渋々しぶしぶとポケットから鍵を出すと戸口の鍵孔かぎあなに入れ、ガチャリと廻して扉を開いた。そこには思いがけなくもピンク色のワン・ピースを着た背の高い若い婦人が立っていた。
「あ――」
「深山先生でいらっしゃいましょうか」若き女性は云った。
「そうです、深山ですが……」
「あたくし、理科三年の白丘しらおかダリアです。先生のところで実習するようにと、科長かちょうの御命令で、上りましたのですけれど」
「ああ、実習生。――実習生は、君だったんですか。じゃ入りなさい」
 男の学生だと思っていたのに、やって来たのは、意外にも女学生だった。しかし何というたくましい女性なんだろう。近代の女性は、スポーツと洋装とのお蔭で、背も高くなり、四肢ししも豊かに発達し、まるで外国婦人に劣らぬ優秀な体格の持ち主になったという話だったが、それにしてもこの健康さはどうだ。これが女性というものなんだろうか。深山理学士は早くもこのピンク色の物体が発散はっさんするものに当惑とうわくを感じた。
「ダリアという名前だが」と学士はたずねた。
「失礼ながら君は混血児なのかい」
「まあ、いやな先生!」彼女は仰山ぎょうさんひじを曲げ腰をゆがめてカラカラと笑った。「これでも日本人としては、純種サラブレッドですわヨ」
純種サラブレッドか! イヤ僕は、君があまりにデカイもので、もしやと思ったんだよ」
「先生は、小さくて可愛いいんですのネ」彼女は肥ったあらわな二の腕を並行にあげて、取って喰うような恰好かっこうをしてみせた。
 そんなことから、先生の深山理学士と生徒の白丘ダリアとは、何でもずかずかと云い合う間柄あいだがらになった。しかしこの少女が、まだ十八歳であるとは、学士の容易に信じかねるところであった。
 赤外線研究室は、この先生と生徒とによって、昼といわず夜といわず、乱雑にひっかきまわされた。精密な部分品が、さまざまの実験をて一つ又一つと組立てられていった。二人の熱心さは大変なものだった。入口のドアにはいつものように鍵がかかっていた。食事をはこんでくるときと、白丘ダリアが夜更よふけて自分の住居へ帰るときの外は、滅多めったひらかれはしなかった。深山理学士は独り者の気楽さで、いつもこの研究室に寝泊りしていた。
「アラ先生、まあ面白いことを発見しましたわ」ネジ廻しを握って、器械のパネルに木ネジをねじこんでいたダリアが、頓狂とんきょうな声を張りあげた。
「どうしたんだい」深山学士は増幅器ぞうふくきの向うから顔を出した。
「とても面白いですわ。先生のお顔を右の眼で見たときと左の眼で見たときと、先生のお顔の色が違うんですわ」
「変なことを云い出したネ」学士は自分の顔色のことを云われたので鳥渡ちょっといやな顔をした。
「右の眼で見たときよりも、左の眼で見たときの方が、先生のお顔が青っぽく見えますのよ」
「なアーんだ、君。色盲じゃないのか。ちょっとこっちへ来て、これを見給え」
 学士はダリアを引っぱって、色盲検査図の前につれて来た。それは七色の水珠すいじゅが、円形えんけいに寄りあっているのだが、色の配列具合によって、普通の視力をもっているものには「1」という数字が見える場合にも、色盲には「4」と見えたりするという簡単な検査図だった。ダリアの眼を、片っぽずつじさせて、沢山ある検査図を色々とめくって調べてみた。しかし結果はどういうことになったかというのに、ダリアは色盲ではないということが判明したのだった。
「色盲でも無いようだが……気のせいじゃないか」
「いいえ、気のせいじゃないわ。先生がどうかしてらっしゃるんじゃなくって?」
莫迦ばか云っちゃいかん。君の眼が悪いのだよ。説明をつけるとこうだ。いいかい。君の右の眼と左の眼との色の感度がちがうのだ。今の話だと、君の左の眼は、青の色によく感じ、右の眼は赤の色によく感ずる。両方の眼の色に対する感覚がかたよっているんだ。それも一つの眼病がんびょうだよ」
「そうでしょうか、あたし困ったわ」と白丘ダリアは一向困ったらしい様子も見せずに云った。「ンじゃ先生、あたしが今ている右の眼の風景と、左の眼の風景と、どっちの色の風景が本当の風景なんでしょうか。どっちかの眼が本当のものを見て、どっちかの眼が嘘を視ているのですね」
「そりゃ困った質問だ」と今度は深山理学士の方が本当に弱ってしまった。「どうも君の網膜もうまくのうしろに僕の眼をやってみることも出来ないからネ」
 そういって理学士は考え込んだ。
 こんな調子で、二人はいつの間にか十年の知己ちきのようになってしまった。
 白丘しらおかダリアの入所後にゅうしょごはやくも五日のちには、赤外線テレヴィジョン装置がもう一と息で出来上るというところまでぎつけた。
 ところがの朝に限って、いつもなら午前七時には必ず出てくるはずの白丘ダリアが、十時になっても姿を現わさなかった。学士は一人でコツコツと組立を急いでいたけれど、十一時になると、もう気力きりょくが無くなったと見え、ペンチを機械台の上にほうり出してしまった。
(どうして、白丘は出てこないんだろう?)
 いろいろなことが、追懐ついかいされた。何か本気で怒り出したのであろうか。それとも病気にでもなったのであろうか。考えているうちに、自分があの女学生に、あまりにたよりすぎていたことに気がついた。ひょっとすると、自分はもうあの少女の魔術にひっかかって、恋をしているのかも知れない。
莫迦ばかなッ。あんな小娘に……)
 彼は身体を一とゆすりゆすると、実験衣のポケットへ、両手をつっこんだ。ポケットの底に、堅いものが触れた。
「ああ、桃枝ももえから手紙が来ていたっけ」
 今朝、用務員が門のところで手渡してくれた四角い洋封筒をとりだした。発信人は「岡見桃助おかみとうすけ」と男名前であるが、それは桃枝の変名であることは、学校内で学士だけが知っていた。開いてみると、どうやらそれは彼女の勤めているカフェ・ドランの丸卓子テーブルの上で書いたものらしく、洋酒の匂いがしていた。文面は想像のとおり、彼の訪ねて来ないことを大変さびしがっていること、今夜にでも店の方にでも、それともどっかで電話をかけて呼んで呉れれば直ぐ飛んでゆくからというような、当人達でなければ読んでいるにえないような文句が縷々るるとして続いていた。桃枝は学士の内妻ないさいに等しい情人じょうじんだった。彼は手紙をたたむと、ポケットへねじこんだ。
(今日はいっそのこと、仕事をよして、これから桃枝を引張り出しにゆこう)
 深山みやま理学士が実験衣を脱いで、卓子テーブルの上へポーンとほうり出したときに、廊下にコツコツと聞き覚えた跫音あしおとがして、白丘ダリアがやって来た。
「先生、先生」
 ドアをあけてやると、ダリアはうさぎのように飛びこんできた。
「先生みませんでした。急用が出来たものですから……」
「一体どうしたというのです」深山理学士は桃枝のことなんか一時に吹きとばすように忘れてしまって、真剣な面持おももちで聞いた。
「警視庁から呼ばれて、ちょっと行ったんですけれど……」
「なに、警視庁へ」
「あたしのことじゃないんですけど、伯父が呼ばれたんで、あたしも附いてこいというので行ってたんです。伯母おばさんが一週間ほど前に行方不明になったんで、そのことで行ったんですよ。随分ずいぶんこの事件、面白いのよ。ひとには云えないことなんです、ですけれど……」
 ひとには云えないといいながら、白丘ダリアは、それこそ油紙に火がついたようにベラベラ事件をしゃべり出した。
 簡単に云うと、失踪しっそうした伯母さんというのは二十六歳になるひとだった。伯父との仲も大層よかったのに、一週間ほど前に急に行方不明になってしまった。遺書でもないかと調べたが、何一つ書きのこされていなかった。全く原因が不明だった。
 例の身許みもとの知れぬ轢死れきし婦人のことも、一度は問題になったが、着衣も所持品も違っていた。といってほかに年齢の点で似合わしき自殺者もなかった。生か死かも判然しなかった。伯父は捜索につかれ切って半病人になってしまった。そこへ警視庁からかさねての呼び出しが来たので今朝、めいのダリアを介添かいぞえに桜田門さくらだもんへ行ったというのだ。
 本庁では、伯父に対して、どんな些細ささいなことでもよいから、夫人についてに落ちかねることが今までにあったならそれを話してみろということだった。
 伯父は暫く考えていたが、ポンと膝を打った。
「そういえば思い出しましたが、あれの居るときに、妙な質問を私にしたことがありましたよ。江戸川乱歩えどがわらんぽさんの有名な小説に『陰獣いんじゅう』というのがありますが、あの内容なか紳商しんしょう小山田夫人おやまだふじん静子しずこが、平田ひらた一郎という男から脅迫状きょうはくじょうを毎日のように受けとる件があります。その脅迫状の内容というのは、小山田氏と静子夫人の夫婦としての夜の生活を、非常に詳細しょうさいに書きつづってあるのです。それは夫妻ならでは絶対に知ることのない内緒ないしょごとでした。それにもかかわらず、平田一郎という陰険いんけんな男は、一体どこから見ているのか、実にくわしく、実に正確に、夫婦間の秘事ひじを手紙の上に暴露ばくろしてある。――この脅迫状のことを、私の妻が突然話題にしたのです。江戸川さんの小説では、この気味の悪い手紙の主は、実は平田とかいう男ではなくて、小山田夫人静子その人だった。夫人の変態性へんたいせいがこの手紙を書かせ、夫との夜の秘事に異常な刺戟しげきを与えたというのでした。――私のあれは、最後にこんなことをいたことを覚えています。『このような脅迫状が、静子さん自身の手によって書かれたわけなら、静子さんは別に何とも恐ろしくはなかったはずです。しかしもしあの手紙が、本当に見も知らない人の手によって書かれたものだったとしたら、静子夫人のおどろきは、どんなだったでしょうね』と、まアこんな意味のことを云ったことがあります。私は莫迦ばかなことを云いだす奴じゃのうと、笑ってやったんです。しかし今となって思えば、あれも失踪の謎をとく一つの鍵のような気がしてなりません」
 係官は、伯父の話に大変興味を持ったようだった。二人がもう席を立とうというときに一人の警官がまる小箱こばこをもって来て、これに何か見覚えがないかと差し出した。それは茶色の硝子屑ガラスくずのようなものであった。勿論もちろん二人には思いもよらぬ品物だった。
「こんなになっているから判らないかもしれないが」と其の警官が云った。「これは映画のフィルムなんですよ。しかもそのフィルムが燃焼ねんしょうを始めたのを急にもみ消したとでも云いましょうか、フィルムの燃え屑なのです。それでも心当りがありませんか」
 それは二人にとってさら見当けんとうのつかないことだった。話はそれまでとなって、白丘ダリアと伯父とは、警視庁を辞去じきょした、というのであった。
「一体その伯父さんというのは、何という方なのかネ」学士がたずねた。
黒河内尚網くろこうちひさあみというれでも子爵ししゃくなのですよ。伯母の子爵夫人というのは、京子といいました」
「黒河内京子――君の伯母さんか」
「先生、伯母をご存知ですの」
「なアに、知るものかネ」学士は強く首を左右に振った。「さあ、今日は遅れたから、急いで組立てにとりかかろう」
 そういって深山理学士は実験衣を拾いあげると、洋服のそでをとおした。そのときポケットから、四角い封筒がパラリと床の上に落ちたのを、学士は気付かなかった。
 ダリアの眼は悪戯者いたずらものらしく爛々らんらんと輝いた。太い腕が、その封筒の方へニューッと延びていった。

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