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地球要塞(ちきゅうようさい)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 6:37:28  点击:  切换到繁體中文



   空間の大戦慄だいせんりつ――おそるべきX大使の魔力


 さすがの私も、この恐怖の一瞬に、全身からありとあらゆる精力が、一度に抜け去ったように思った。
 が、最後の一歩手前で私は、もしやと考えた。
「これは、夢を見ているのではないか」
 私は、そういうときに誰もがするように、われとわが頬を、指さきで、つよくひねった。
「あ、痛い!」
 頬は痛かった。――しからば、これは、夢ではないのだ。
 夢であった方が、まだましであった。これが夢でないとしたら私は、この不思議な現象を、何と理解したらいいであろうか。全くもって、物理学では説明のつかないことになった。
「ああ、恐ろしい」
 私は、もう恐怖を、隠しきれなかった。そして体を丸くして、両腕に自分の膝小僧を抱えた。
「――夢でなければ、私は、気が変になったのかしらん」
 私は順序として、今度はそう思わないではいられなかった。
(気が変になったのであれば――気が変になったということを、どんな方法で確認したらいいのであろうか?)
 解らない、解らない!
 気が変になった者が、自分で自分の変になったことを検定する方法はない。地獄だ、無間地獄の中へ落ちこんだようなものだ。
 私は、暗闇の中にすくんでしまって、化石のようになっていた。真の絶望だ!
 私は、もう、すべてのことを忘れていた。鬼塚元帥からの密令のことも、欧弗同盟国と汎米連邦の開戦説のことも、また、その両国が連合して、大東亜共栄圏を脅かそうという風説のことも……。いや、そればかりではない。私は、今の今まで心配していたクロクロ島のことさえ忘れそれから、オルガ姫のことや、私の乗っていた筈の快速潜水艇のことさえ、一時忘れてしまった。
 ただ、私の頭脳あたまの中に一杯に拡がっていることは、この不思議な空間のことであった。どこからも解く糸口のない謎!
 もしそのまま、私が後一時間も、そのままで放って置かれたら、恐らく私は、本当に発狂してしまったのかもしれない。
 だが、私は、一つの大きなことを見落していたのである。この不可思議な現象を解く鍵が、まだ一つ、残っていたことを!……真の絶望ではなかったのである。
 その鍵とは?
 それは外でもない、「時間」という鍵であったのだ。
 時間だった。その鍵は!
 時間のみが、その不可思議の扉を開く力を持っていた。――つまり、時間の動きが、ともかくも、私を絶望の世界から救ってくれたのである。
 時間の動きだ。時間が、どんどん経っていった。時間の速さが、どの位であったか、それは知らない。とにかく、何時間か何十時間かが経過した後、私は不意に、一道の光明の中に放りだされたのである。――それは、音響として私の耳を撃った。百雷ひゃくらいが一時にくずれ落ちたかのように、その音響は、私の鼓膜を揺りうごかした。――それは、単に言葉に過ぎなかったのではあるけれど……。
“どうかね、黒馬博士。もういい加減、閉口へいこうしたろうねえ”
 恐怖の声! 戦慄せんりつの言葉!
 私は悪寒おかんと共に、ぶるぶるッと、ふるえあがった。
(どうかね、黒馬博士。もういい加減、閉口したろうねえ)
 ――とは、どこかで聞き覚えのある声音こわねではある!
(ああ、そうだ!)
 私は、思い出した。そしてまた、大きな戦慄が、私の全身に匐い上った。
「おお、X大使か、貴様は!」
 私は、暗闇に向って、声をふり絞った。
 空間から不意に飛び出した声は、たしかに、あの超人X大使の声に違いないと思われた。
「おい、黒馬博士。君は、ひどい奴だ」
 と、その声は、私を責めた。たしかにX大使の声だ!
「わしは君と、大いに友好的に、つきあおうと思っているのに、君はわしに危害を加えようとした。磁力砲というのかね、あれは……。クロクロ島の入口に備えつけて、久慈に使わせたのは……」
 X大使の声には、深いうらみがこもっていた。――私は、ようやく、一つの光明(?)を掴んだのであった。それは実に私が今、怪人X大使の捕虜になっているという事態を悟り得たことであった。
 おそるべきX大使の魔力よ。


   怪声かいせいるX大使――白人種結社から派遣されたスパイ?


「あれは正当防衛だ。あなたから、恨まれる筋はないのだ」
 X大使だと知って、私は猛然と、敵愾心てきがいしんを盛り起した。
「なんだ。その正当防衛という意味は?」
 X大使の声が、問いかえした。
「そうではないか、X大使、断りもなく、わがクロクロ島の内部まで侵入して来るような相手に対しては、吾々は、いかなる手段を用いても、防衛するのだ。当り前のことではないか」
「なあんだ、そんな意味か。ばかばかしい」
 と、X大使は、吐き出すようにいって、
「君の方では、あれで、厳重な戸締りをしたつもりなんだろうねえ。人間なんて、自惚うぬぼればかりつよくて哀れなものだ」
「人間? お互いに人間であることに、変りはない。X大使よ、君は人間の悪口をいうが、それは天に唾をするようなものではないか。つまり自分の悪口をいっているわけだからねえ」
 私は、むかむかして、こっぴどく大使をやっつけたつもりだった。
 しかし、X大使は、無遠慮にからからと笑い、
「あははは、可哀いそうな者よ。なんとでも、好きなように自惚れているがいい。そのうちに君たちの大東亜共栄圏は、白人たちの土足の下に踏みにじられるだろう」
「やあ、そういう君は、白人種結社から派遣されたスパイだろう」
「違う」
 と、X大使は、言下につよく否定したが、しばらくその後を黙っていて、やがてなんだかわざとらしい調子の言葉になって、
「……まあ、なんとでも想像するがいい。しかしとにかく、わしは君に警告しておく。もう、あのようなくだらん磁力砲じりょくほうなどを仕掛けるのはよせ」
「余計な御忠告だ。そういう君は、磁力砲の偉力に、すっかり参ったというわけだろうが……」
 私は、大使が、悲鳴をあげているのだと確信した。
 するとX大使はまた、ふふんと鼻でわらい出して、
「おい、黒馬博士。君は学者のくせに、いつまで、迷夢めいむから覚めないのか。君は、この暗黒世界のことを、何だと考えているのか」
 X大使の言葉は、私の腕に、針を突込んだように痛かった。私は、かなり強がりをいっているものの、踏みしめるべき大地のないこの暗黒世界に、ひとり封じこめられている気味のわるさに、これ以上こらえかねていたところである。
 しかし私は、こんなところで、敵に弱味を見せてはと思い、
「あははは。X大使よ、それよりも、磁力砲の偉力を思い出したがいいぞ。君の身体は、磁力砲のために大怪我をしたではないか。だから君は、今私の前に姿を見せることができないのだろう。そして、声ばかりで、私をおどしている。そんな嚇しに、誰がのるものか」
 と、いってやった。
「おかしなことをいう」
 X大使はちょっと腹を立てたような声になって、
「わしが、磁力砲のため、大怪我をしたと思っているのか。それがため、わしが姿を見せないと思っているのか。ふふん、とんでもないひと合点がてんだ。わしは、ちゃんとしているのだ。今、姿を見せてやろう」
 そういったかと思うと、とつぜん、空気を破って、奇妙な高い調子の震動音が聞えてきた。そのうちに、暗黒の中に、朦朧もうろうと、白く光った人の形があらわれて来た。
(おやッ、出たな。まるで、大魔術を見ているようだ)
 人の形は、どんどん明瞭度めいりょうどを加えていった。そして、ものの三十秒も経たないうちに、その人影は、かつて私が見たことのあるの奇怪なる服装をしたX大使の姿となり果てたのであった。高圧潜水服に全身を包んだような、大使の不思議なる姿!
「どうだ、わしの姿が見えるだろう」
「舞台の上の大魔術というところだ。入場料をとっているなら、拍手を送りたいところだが、そんな手で、私はごま化されないぞ。これは、君の本当の体ではなくて、幻影にすぎないのだ」
「幻影? 可哀いそうな人間よ。これでも、幻影か」
 X大使は、とつぜん私の方に近づき、私が身をかわそうとするのを先まわりして、やっと、かけごえをして、私の腕を掴んだ。
「うむ、痛い! 骨が、折れる……」
 X大使の握力は、まるで万力機械まんりききかいのように、強かった。幻影ではないX大使であった。私は歯を喰いしばって、疼痛とうつうにたえた。
「ははは、それ見たことか」
 X大使は、憫笑びんしょうすると、やっと手を放した。
「だが、黒馬博士。わしの真意は、君を殺すことではない。いや、それよりも、正直なところ、わしは君と友好的に協力し合いたいのだ。どうだ、承知しないか」
 突然、X大使の言葉は、妥協的になった。
 だが、私は油断しなかった。
「身勝手なことを、いってはいかん。私をこんな目にあわせて置きながら、友好的協力もなにも、あったものじゃない」
 私は、すかさず抗議をしてやった。
「まあ、そういうな。今、君が遭っている異変は、魔術でもなんでもない。わしは君に、わしの偉力を、ちょっぴり見せたかったのだ。――だが、今君は、わしに対して感情を害しているようだ。わしは、これ以上無理に君を圧迫しまい。私は自ら一時退却する。しかし、この際、君に一言のこして置くから、忘れないでいてもらいたい」
 と、X大使は、改まった調子で、
「今後、君たち大東亜共栄圏の民族は、更に大きな危険にさらされることになるだろう。そのとき、救援が欲しかったら、わしに求めるがいい。わしは、ちょっとした交換条件をもって、君たちを全面的に援助するだろう。どうか、それを忘れないで……」
 そういったかと思うと、X大使の姿は、にわかに、アーク灯のごとく輝きだした。いや、大使の姿だけではない。私の身のまわりの暗黒世界が、一時にまぶしく輝きだした。私はあっと叫んでその場にひれ伏した。そして知覚を失ってしまったのである。

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