您现在的位置: 贯通日本 >> 作家 >> 幸田 露伴 >> 正文

風流仏(ふうりゅうぶつ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-4 10:06:46  点击:  切换到繁體中文


    第一 如是相(にょぜそう)

      書けぬ所が美しさの第一義諦(だいいちぎたい)

 名物に甘(うま)き物ありて、空腹(すきはら)に須原(すはら)のとろゝ汁殊の外(ほか)妙なるに飯(めし)幾杯か滑り込ませたる身体(からだ)を此尽(このまま)寝さするも毒とは思えど為(す)る事なく、道中日記注(つ)け終(しま)いて、のつそつしながら煤(すす)びたる行燈(あんどん)の横手の楽落(らくがき)を読(よめ)ば山梨県士族山本勘介(やまもとかんすけ)大江山(おおえやま)退治の際一泊と禿筆(ちびふで)の跡(あと)、さては英雄殿もひとり旅の退屈に閉口しての御(おん)わざくれ、おかしき計(ばか)りかあわれに覚えて初対面から膝(ひざ)をくずして語る炬燵(こたつ)に相(あい)宿(やど)の友もなき珠運(しゅうん)、微(かすか)なる埋火(うずみび)に脚を※(「火+共」、第3水準1-87-42)(あぶ)り、つくねんとして櫓(やぐら)の上に首投(なげ)かけ、うつら/\となる所へ此方(こなた)をさして来る足音、しとやかなるは踵(かかと)に亀裂(ひび)きらせしさき程の下女にあらず。御免なされと襖(ふすま)越しのやさしき声に胸ときめき、為(し)かけた欠伸(あくび)を半分噛(か)みて何とも知れぬ返辞をすれば、唐紙(からかみ)する/\と開き丁寧(ていねい)に辞義(じぎ)して、冬の日の木曾路(きそじ)嘸(さぞ)や御疲(おつかれ)に御座りましょうが御覧下され是(これ)は当所の名誉花漬(はなづけ)今年の夏のあつさをも越して今降る雪の真最中(まっさいちゅう)、色もあせずに居(お)りまする梅桃桜のあだくらべ、御意に入りましたら蔭膳(かげぜん)を信濃(しなの)へ向(む)けて人知らぬ寒さを知られし都の御方(おかた)へ御土産(おみやげ)にと心憎き愛嬌(あいきょう)言葉商買(しょうばい)の艶(つや)とてなまめかしく売物に香(か)を添ゆる口のきゝぶりに利発あらわれ、世馴(よな)れて渋らず、さりとて軽佻(かるはずみ)にもなきとりなし、持ち来(きた)りし包(つつみ)静(しずか)にひらきて二箱三箱差し出(いだ)す手(て)つきしおらしさに、花は余所(よそ)になりてうつゝなく覗(のぞ)き込む此方(こなた)の眼(め)を避けて背向(そむ)くる顔、折から透間(すきま)洩(も)る風(かぜ)に燈火(ともしび)動き明らかには見えざるにさえ隠れ難き美しさ。我(が)折(お)れ深山(みやま)に是(これ)は何物。


[#改ページ]



    第二 如是体(にょぜたい)

      粋(すい)の羯羅藍(かららん)と実(じつ)の阿羅藍(あららん)

 見て面白き世の中に聞(きい)て悲しき人の上あり。昔は此(この)京(きょう)にして此妓(こ)ありと評判は八坂(やさか)の塔より高く其(その)名は音羽(おとわ)の滝より響きし室香(むろか)と云(い)える芸子(げいこ)ありしが、さる程に地主権現(じしゅごんげん)の花の色盛者(しょうじゃ)必衰の理(ことわり)をのがれず、梅岡(うめおか)何某(なにがし)と呼ばれし中国浪人のきりゝとして男らしきに契(ちぎり)を込め、浅からぬ中となりしより他(よそ)の恋をば贔負(ひいき)にする客もなく、線香の煙り絶々(たえだえ)になるにつけても、よしやわざくれ身は朝顔のと短き命、捨撥(すてばち)にしてからは恐ろしき者にいうなる新徴組(しんちょうぐみ)何の怖(こわ)い事なく三筋(みすじ)取っても一筋心(ひとすじごころ)に君さま大事と、時を憚(はばか)り世を忍ぶ男を隠匿(かくまい)し半年あまり、苦労の中にも助(たすく)る神の結び玉(たま)いし縁なれや嬉しき情(なさけ)の胤(たね)を宿して帯の祝い芽出度(めでたく)舒(の)びし眉間(みけん)に忽(たちま)ち皺(しわ)の浪(なみ)立(たち)て騒がしき鳥羽(とば)伏見(ふしみ)の戦争。さても方様(かたさま)の憎い程な気強さ、爰(ここ)なり丈夫(おとこ)の志を遂(と)ぐるはと一(ひ)ト群(むれ)の同志(どうし)を率いて官軍に加わらんとし玉うを止(とど)むるにはあらねど生死(しょうじ)争う修羅(しゅら)の巷(ちまた)に踏(ふみ)入(い)りて、雲のあなたの吾妻里(あづまじ)、空寒き奥州(おうしゅう)にまで帰る事は云(い)わずに旅立(たびだち)玉う離別(わかれ)には、是(これ)を出世の御発途(おんかどいで)と義理で暁(さと)して雄々(おお)しき詞(ことば)を、口に云わする心が真情(まこと)か、狭き女の胸に余りて案じ過(すご)せば潤(うる)む眼(め)の、涙が無理かと、粋(すい)ほど迷う道多くて自分ながら思い分たず、うろ/\する内(うち)日は消(たち)て愈※(二の字点、1-2-22)(いよいよ)となり、義経袴(よしつねばかま)に男山(おとこやま)八幡(はちまん)の守りくけ込んで愚(おろか)なと笑(わらい)片頬(かたほ)に叱(しか)られし昨日(きのう)の声はまだ耳に残るに、今、今の御姿(おすがた)はもう一里先か、エヽせめては一日路(いちにちじ)程も見透(みとお)したきを役立(たた)ぬ此眼の腹立(だた)しやと門辺(かどべ)に伸び上(あが)りての甲斐(かい)なき繰言(くりごと)それも尤(もっとも)なりき。一(ひ)ト月過ぎ二(ふ)タ月過(すぎ)ても此(この)恨(うらみ)綿々(めんめん)ろう/\として、筑紫琴(つくしごと)習う隣家(となり)の妓(こ)がうたう唱歌も我に引き較(くら)べて絶ゆる事なく悲しきを、コロリン、チャンと済(すま)して貰(もら)い度(た)しと無慈悲の借金取めが朝に晩にの掛合(かけあい)、返答も力無(な)や男松(おまつ)を離れし姫蔦(ひめづた)の、斯(こう)も世の風に嬲(なぶ)らるゝ者(もの)かと俯(うつむ)きて、横眼に交張(まぜば)りの、袋戸(ふくろど)に広重(ひろしげ)が絵見ながら、悔(くや)しいにつけゆかしさ忍ばれ、方様(かたさま)早う帰って下されと独言(ひとりごと)口を洩(も)るれば、利足(りそく)も払わず帰れとはよく云えた事と吠付(ほえつか)れ。アヽ大きな声して下さるな、あなたにも似合わぬと云いさして、御腹(おなか)には大事の/\我子(わがこ)ではない顔見ぬ先からいとしゅうてならぬ方様(かたさま)の紀念(かたみ)、唐土(もろこし)には胎教という事さえありてゆるがせならぬ者と或夜(あるよ)の物語りに聞しに此ありさまの口惜(くちおし)と腸(はらわた)を断つ苦しさ。天女も五衰(ごすい)ぞかし、玳瑁(たいまい)の櫛(くし)、真珠の根掛(ねがけ)いつか無くなりては華鬘(けまん)の美しかりける俤(おもかげ)とどまらず、身だしなみ懶(ものう)くて、光ると云われし色艶(いろつや)屈托(くったく)に曇り、好みの衣裳(いしょう)数々彼に取られ是(これ)に易(か)えては、着古しの平常衣(ふだんぎ)一つ、何の焼(たき)かけの霊香(れいきょう)薫ずべきか、泣き寄りの親身(しんみ)に一人の弟(おとと)は、有っても無きに劣(おと)る賭博(ばくち)好き酒好き、落魄(おちぶれ)て相談相手になるべきならねば頼むは親切な雇婆(やといばば)計(ばか)り、あじきなく暮らす中(うち)月満(みち)て産声(うぶごえ)美(うるわ)しく玉のような女の子、辰(たつ)と名付(づけ)られしはあの花漬(はなづけ)売りなりと、是(これ)も昔は伊勢(いせ)参宮の御利益(ごりやく)に粋(すい)という事覚えられしらしき宿屋の親爺(おやじ)が物語に珠運も木像ならず、涙掃(はら)って其後(そののち)を問えば、御待(おまち)なされ、話しの調子に乗って居る内、炉の火が淋(さみ)しゅうなりました。


[#改ページ]

上一页  [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] 下一页  尾页


 

作家录入:贯通日本语    责任编辑:贯通日本语 

  • 上一篇作家:

  • 下一篇作家:
  •  
     
     
    网友评论:(只显示最新10条。评论内容只代表网友观点,与本站立场无关!)
     

    没有任何图片作家

    广告

    广告