十二
ある割合に寒い午後です。僕は「
「ちょっとあの河童を取り調べてください。あの河童はちょうど
巡査は右手の棒をあげ、(この国の巡査は
「お前の名は?」
「グルック。」
「職業は?」
「つい二三日前までは郵便配達夫をしていました。」
「よろしい。そこでこの人の申し立てによれば、君はこの人の万年筆を盗んでいったということだがね。」
「ええ、一月ばかり前に盗みました。」
「なんのために?」
「子どもの
「その子どもは?」
巡査ははじめて相手の河童へ鋭い目を注ぎました。
「一週間前に死んでしまいました。」
「死亡証明書を持っているかね?」
やせた河童は腹の袋から一枚の紙をとり出しました。巡査はその紙へ目を通すと、急ににやにや笑いながら、相手の肩をたたきました。
「よろしい。どうも御苦労だったね。」
僕は
「どうしてあの河童をつかまえないのです?」
「あの河童は無罪ですよ。」
「しかし僕の万年筆を盗んだのは……」
「子どもの玩具にするためだったのでしょう。けれどもその子どもは死んでいるのです。もし何か御不審だったら、刑法千二百八十五条をお調べなさい。」
巡査はこう言いすてたなり、さっさとどこかへ行ってしまいました。僕はしかたがありませんから、「刑法千二百八十五条」を口の中に繰り返し、マッグの
「ペップ君、はなはだ失礼ですが、この国では罪人を罰しないのですか?」
ペップは
「罰しますとも。死刑さえ行なわれるくらいですからね。」
「しかし僕は
僕は委細を話した
「ふむ、それはこういうのです。――『いかなる犯罪を行ないたりといえども、
「それはどうも不合理ですね。」
「
ペップは巻煙草をほうり出しながら、気のない薄笑いをもらしていました。そこへ口を出したのは法律には縁の遠いチャックです。チャックはちょっと
「日本にも死刑はありますか?」
「ありますとも。日本では
僕は冷然と構えこんだペップに多少反感を感じていましたから、この機会に皮肉を浴びせてやりました。
「この国の死刑は日本よりも文明的にできているでしょうね?」
「それはもちろん文明的です。」
ペップはやはり落ち着いていました。
「この国では絞罪などは用いません。まれには電気を用いることもあります。しかしたいていは電気も用いません。ただその犯罪の名を言って聞かせるだけです。」
「それだけで河童は死ぬのですか?」
「死にますとも。我々河童の神経作用はあなたがたのよりも微妙ですからね。」
「それは死刑ばかりではありません。殺人にもその手を使うのがあります――」
社長のゲエルは
「わたしはこの間もある社会主義者に『貴様は
「それは案外多いようですね。わたしの知っていたある弁護士などはやはりそのために死んでしまったのですからね。」
僕はこう口を入れた
「その河童はだれかに
「それはつまり自殺ですね。」
「もっともその河童を蛙だと言ったやつは殺すつもりで言ったのですがね。あなたがたの目から見れば、やはりそれも自殺という……」
ちょうどマッグがこう言った時です。突然その
河童(かっぱ)
作家录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
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