九
和泉屋市兵衛を
日の光をいっぱいに浴びた庭先には、葉の裂けた
彼は、この自然と対照させて、今さらのように世間の下等さを思い出した。下等な世間に住む人間の不幸は、その下等さに煩わされて、自分もまた下等な言動を余儀なくさせられるところにある。現に今自分は、和泉屋市兵衛を逐い払った。逐い払うということは、もちろん高等なことでもなんでもない。が、自分は相手の下等さによって、自分もまたその下等なことを、しなくてはならないところまで押しつめられたのである。そうして、した。したという意味は市兵衛と同じ程度まで、自分を卑しくしたというのにほかならない。つまり自分は、それだけ堕落させられたわけである。
ここまで考えた時に、彼はそれと同じような出来事を、近い過去の記憶に発見した。それは去年の春、彼のところへ
自分はあなたの八犬伝といい、巡島記といい、あんな長たらしい、拙劣な読本を根気よく読んであげたが、あなたは私のたった六冊物の読本に眼を通すのさえ拒まれた。もってあなたの人格の下等さがわかるではないか。――手紙はこういう文句ではじまって、先輩として後輩を食客に置かないのは、
馬琴はこの記憶の中に、長島政兵衛なるものに対する情けなさと、彼自身に対する情けなさとを同時に感ぜざるを得なかった。そうしてそれはまた彼を、言いようのない寂しさに導いた。が、日は無心に
戯作三昧(げさくざんまい)
作家录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
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