二十四
やがて足もとの岩は、湿った
森林は容易に尽きなかった。風雨も依然として止まなかった。空には
彼は休みなく進み続けた。彼の心の内には
桟橋を隔てた絶壁には、
若い女は壁に懸けた
女はすでに
「おれは腹が減っているのだ。食事の仕度をしれい。」
彼は
二十五

その内に食事の仕度が出来た。野獣の肉、谷川の魚、森の
彼は
「さあ、これで腹は出来た。今度は着る物を一枚くれい。」
彼は食事をすませると、こう云って、大きな
「何かまだ御用がございますか。」
しばらくの後、女はまた側へ来て、ためらうような尋ね方をした。
「おれは主人の帰るのを待っているのだ。」
「待って、――どうなさるのでございますか。」
「
女は顔にかかる髪を掻き上げながら、
素戔嗚は意外の感に打たれて、思わず眼を大きくした。
「男は一人もいないのか。」
「一人も居りません。」
「この近くの洞穴には?」
「皆
彼は顔をしかめたまま二三度頭を強く振った。火の光、
「妹たちは大勢いるのか。」
「十六人居ります。――ただ今姥が知らせに参りましたから、その内に皆御眼にかかりに、出て参るでございましょう。」
二十六
「あの――御名前は何とおっしゃいますか。私は
「おれは素戔嗚だ。」
彼がこう名乗った時、大気都姫は驚いた眼を挙げて、今更のようにこの
「では今まではあの山の向うの、
彼は黙って
「高天原の国は、
この言葉を聞くと共に、一時静まっていた
「高天原の国か。高天原の国は、鼠が
大気都姫は微笑した。その
「ここは何と云う所だ?」
彼は強いて冷かに、こう話頭を転換した。が、彼女は微笑を含んで、彼の
「ここでございますか。ここは――ここは猪が鼠より強い所でございます。」と答えた。
その時
十六人の女たちは、すぐに彼を取りまいて、こう云う山の中にも似合わない、陽気な
その内に夜になった。老婆は
二十七
やがて老婆は立ち上って、明るい油火の燈台を一つ一つ消して行った。後には
翌日彼は眼をさますと、
に違いなかった。彼は鼻を鳴らしながら、しばらくはただぼんやりと岩の天井を眺めていた。すると気違いじみた
「
洞穴の中には例の老婆が、余念なく朝飯の仕度をしていた。
微風は彼の頭から、すぐさま

この山々と森林とを眺めていると、彼は急に
が、その時賑かな笑い声が、静な谷間に
「素戔嗚尊。素戔嗚尊。」
彼等は小鳥の
二十八
それ以来
一月ばかりは、瞬く暇に過ぎた。
彼は毎日酒を飮んだり、谷川の魚を釣ったりして暮らした。谷川の上流には
その内に偉大な山々も、谷川を隔てた森林も、おいおい彼と交渉のない、死んだ自然に変って行った。彼は
しかしある夜夢の中に、彼は山上の岩むらに立って、再び
彼は恐怖と
外には暗い夜の底に、谷川の音ばかりが聞えていた。彼は
、
彼は
やがて太陽が、森の真上へ来た。彼は
日の暮は
素戔嗚尊(すさのおのみこと)
作家录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
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