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人造人間戦車の機密(じんぞうにんげんせんしゃのきみつ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-24 17:22:02  点击:  切换到繁體中文

底本: 海野十三全集 第10巻 宇宙戦隊
出版社: 三一書房
初版発行日: 1991(平成3)年5月31日
入力に使用: 1991(平成3)年5月31日第1版第1刷
校正に使用: 1991(平成3)年5月31日第1版第1刷

 

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 魔都まと上海シャンハイに、夏が来た。
 だが、金博士きんはかせは、汗もかかないで、しきりに大きな手押式ておししき起電機きでんきを廻している。室内の寒暖計は、今ちょうど十三度を指している。ばかにすずしいへやである。それも道理どうり、金博士のこの実験室は、上海の地下二百メートルのところにあり、あの小うるさい宇宙線も、完全に遮断しゃだんされてあるのであった。
 天井裏のブザーが、奇声きせいをたてて鳴った。
「ほい、また来客か。こう邪魔をされては、研究も何も出来やせん」
 博士は、例の無精髭ぶしょうひげを、うさぎ尻尾しっぽのようにうごかして、天井裏をにらみつけた。
「博士、御来客です。醤買石閣下しょうかいせきかっか密使みっしだそうです。はい、只今、X線で、身体をしらべてみましたが、何も兇器きょうきは所持して居りません。どういたしますか」
 姿は見えないが、声だけの秘書が、用事を取次いだ。
「何か土産みやげを持っている様子か」
「なんだか、大きな風呂敷包を、背負って居ります。どうやら羊か何からしく、X線をかけると、長い脊髄骨せきずいこつが見えました」
「羊の肉は、あまり感心しないが、糧食難の折柄おりがらじゃ、贅沢ぜいたくもいえまい」
「では、通しますか」
「とにかく、こっちへ通してよろしい。土産物を見た上で、話を聞くか、追払おっぱらうか、どっちかに決めよう」
 博士は、把手ハンドルから手を放すと、手をあげて、禿頭はげあたまをガリガリといた。
 醤の密使油蹈天ゆうとうてん氏が、その部屋に現れたのは、それから五分ばかりたって後のことであった。
「おう。油蹈天か。お前が来るようじゃ、大した土産もないのであろう」
 博士は、密使の顔を見て、率直に落胆らくたんの色を現した。
「いや、博士。本日は、わが醤主席の密命を帯びてまいりましたもので、きっと博士のお気に入る珍味ちんみをもってまいりました」
「羊の肉は、くさくて、嫌いじゃ。第一、羊の肉が、珍味といえるか」
「羊の肉ではございません。なら、用談より先に、これをごらんに入れましょう」
 密使は、背中に負っていた大きな包を、機械台のうえにおろした。博士は、鼻をくんくんいわせながら、そばへよってきた。
燻製くんせいじゃな。いくら燻製にしても、羊特有の、あの動物園みたいな悪臭は消えるものか」
「まあ、黙って、これをごらん下さい」
 密使油が、包を派手にひろげると、中から鼠色ねずみいろの大きな動物が現れた。顔を見ると、やはり鼠に似ていた。
「ほう、これは大きな鼠じゃな」
「金博士。鼠ではございません。これはカンガルーの燻製でございます」
「カンガルーの燻製?」
 博士は、目を丸くして、両手を意味なく、ぱしんぱしんと叩いた。
「さようです。カンガルーです。これは只今醤主席の隠れ……あ、むにゃむにゃ、ソノ、特別特製でございます」
「特製はわかったが、むにゃむにゃというところがよく聞えなかったし、一体これは、どこの産じゃ」
「はあ、それは御想像にまかせるといたしまして、とにかく醤主席は、かような珍味を博士に伝達して、その代り、博士におねだりをして来いということでありました」
「なんじゃ、わしにねだるというと、また新発明の兵器を譲れというのじゃろう。昔の因縁いんねんを考えると、わしとて、譲らんでもないが、しかしあのように敗けてばかりいるのでは張合はりあいがない。――で、当時とうじ、醤の奴は、どこにいるのか。重慶じゅうけいか、成都せいとか、それとも昆明こんめいか」
 博士の質問は、密使油にとって、はなはだ痛かった。当時、醤主席およびその麾下きか百万余名は、その重慶にも成都にも、はたまた昆明にも居なかったのである。
「は、それはわが政権の機密に属する事項じこうでございますから、私から申上げかねます。しかし、主席はぜひ博士の御好意によって、最近御発明になったあの……」
 といいながら、密使は一応四方八方へ気を配った上で、
「……あのう、それ、人造人間戦車じんぞうにんげんせんしゃの設計図をおゆずり願ってこいと申されました。どうぞ、ぜひに……」
「あれッ。ちょっと待て。わしが極秘にしている人造人間戦車の発明を、どうして、どこで知ったか」
「それはもう、地獄耳じごくみみでございます。それを下されば、このカンガルーの燻製を置いてまいります。下さらなければ、折角せっかくですが、カンガルーの燻製は、再び私が背負いまして……」
「わかったよ、もうわかった。あの醤め、わしが、珍味に目がないことを知っていて、大きなものをせびりよる。よろしい。では、その設計図をやろう。これが、そうだ。組立のときには、わしに知らせれば、行って指導してやってもいい。しかしそのときは、うんと代償物だいしょうぶつを用意して置けよ」
 そういって、金博士は、大きな青写真にとった設計図を、もなく密使に渡してしまったのであった。

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