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人造人間戦車の機密(じんぞうにんげんせんしゃのきみつ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-24 17:22:02  点击:  切换到繁體中文


     5


 戦機せんきじゅくした。
 全身に、妙な白い入墨いれずみをした原地人兵が、手に手に、たてをひきよせ、やりを高くあげ、十重二十重とえはたえ包囲陣ほういじんをつくって、海岸に押しよせる狂瀾怒濤きょうらんどとうのように、醤の陣営目懸めがけて攻めよせた。
 これに対して、醤の陣営は、げきとして、しずまりかえっていた。
 ただ、かの醤の陣営の目印のような高き望楼ぼうろうには、翩飜へんぽん大旆おおはたひるがえっていた。
 そのはたの下に、見晴らしのいい桟敷さじきがあって、醤主席は、幕僚ばくりょうを後にしたがえ、口をへの字に結んでいた。
 この望楼の前には、百万を数える人造人間が、林のように立って居り、その望楼の後には、これは赤い血の通った醤軍百万の兵士たちが、まるでワールド・シリーズの野球観覧をするときの見物人のような有様ありさまで、詰めかけていた。
 雲霞うんかのような原地人軍は、ついに前方五千メートルの向うの丘のうえに姿を現した。
「おい、油学士。もう人造人間をくりだしてもいいじゃろう」
「はい。只今、命令を出します」
 命令は出た。
 人造人間部隊は、たちまち一せいに手足をうごかして、前進を開始した。冷い灰白色かいはくしょくの身体が、夕陽をうけて、きらきらと、まぶしく輝く。
 この人造人間は、精巧なる内燃機関で動くのであって、別に不思議はない。
 人造人間部隊が粛々しゅくしゅくと行軍を開始して向ってきたので、原地人軍は、さすがにちょっと動揺どうようを見せた。が、先登せんとうに立つ勇猛果敢ゆうもうかかんな酋長は、槍を一段と高くふりまわして、部下を励ました。
 人造人間部隊は、粛々と隊伍を組んで進む。どこか算盤玉そろばんだまが並んだ如くであった。
「おい、油学士。もう始めてよかろう。わしは早く見たいぞ。見て、まず安心をしたいのじゃ」
「はい。では、スイッチを入れましょう。まず第一のスイッチでは人造人間がばらばらと寄り、見事なスクラムを組んで戦車と化します」
「早くやれ!」
「では、――」
 スイッチが入った。人造人間部隊は、その瞬間にさっとどよめいた。
 がちゃがちゃがちゃん――と、まるで長い貨車の後から、機関車がぶつかったときのような音がした。と、なんという奇観きかん、人造人間は、ちに、身体を曲げて車輪になるのがあるかと思うと、四五人横に寝て、鋼鈑こうばんとなるものもある。それがたちまちのうちに折りかさなって、びっくりするような立派な戦車に組上くみあがってしまった。
 ああ、一万台の人造人間戦車隊の出現しゅつげん
「うーむ」
 醤主席も、これにはよほどおどろいたと見える。
「では、この辺で、いよいよ第二のスイッチを入れ、かの人造人間戦車に、全速力進撃を命じ、蹂躙じゅうりんさせます。よろしゅうございますか」
 醤主席は、まだ咽喉のどから声が出てこないので、黙ってうなずいた。
「では、只今、第二のスイッチを入れます。はーい」
 け声と共に、第二のスイッチは入った。
 すると、一万台の人造人間戦車は、とたんに、ぶるんと一揺れ揺れた。と、たちまちものすごい勢いで、がらがらがらと疾走しっそうを始めた。ただし原地人軍の方へ向って前進しないで、何をかんちがいしたか、あべこべに、醤軍の方へ向けて、全速力で後退を始めたではないか。
 っ!
 それは、ほんの一瞬間の出来事――いや、悪夢であったように思われる。一万台の人造人間戦車は、電撃の如く、呀っという間に、醤主席をはじめ全軍一兵のこらずを平等にその鋼鉄の車体の下に蹂躙し去り、それからなおも快速をつづけて、やがて、そこから三百キロ向うの海の中へ、さっとしぶきをあげてはまりこんでしまった。
 あまりに意外な勝戦しょうせんに、原地人軍の酋長は、それ以来、自分が神様の生れかわりであると信ずるようになったそうである。
 一体、なにがこう間違ったのであるか。
 これについて、後日ごじつ、わが金博士はこのことを伝え聞き、そしてしずかにいったことである。
「あいつは、大馬鹿者じゃよ。渦巻気流というものは、北半球と南半球とでは、あべこべに巻くのだ。あの設計図にあるのは、北半球用のエンジンだ。南半球で使うときには、線輪コイルをあべこべに巻かなければ、前進すべきものが後退するのじゃ。油蹈天ゆうとうてんのやつに、組立のときは知らせよと、よくいって置いたのに、彼奴きゃつめ、自分だけの手柄にしようと思って、知らせて来なかったから、あんな間違いをひきおこしたのじゃ。惜しいものじゃ。たった一言、これは南半球で実験をするのですと教えてくれればよかったものを。……まあ、それが、積悪せきあくの醤や油の天命じゃろうよ」





底本:「海野十三全集 第10巻」三一書房
   1991(平成3)年5月31日第1版第1刷発行
初出:「新青年」
   1941(昭和16)年6月
入力:tatsuki
校正:まや
2005年5月15日作成
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