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家なき子(いえなきこ)02

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-1 11:48:06  点击:  切换到繁體中文


     りっぱすぎる父母

 父親はろうそくをいて行ったが、車には外からじょうをさした。わたしたちはいつものようにおしゃべりはしないで、できるだけ早くねどこの中へもぐった。
「おやすみ、ルミ」とマチアが言った。
「おやすみ」
 マチアはわたしと同じように、もうなにもものを言いたがらなかった。わたしはかれがだまっていてくれるのがうれしかった。わたしたちはろうそくをふき消したが、とてもねむれそうには思えなかった。わたしはせま苦しい寝台ねだいの中で、たびたび起き返っては、これまでの出来事を思いめぐらした。わたしは上の寝台にいるマチアがやはり落ち着かずに、しじゅうねがえりばかりしている音を聞いた。かれもやはりわたしと同様、ねむることができなかった。
 いく時間かぎた。だんだん夜がふけるにしたがって、とりとめもない恐怖きょうふがわたしを圧迫あっぱくした。わたしは不安ふあんに感じたが、なぜわたしが、そう感じたのかわからない。なにをわたしはおそれているのか。このロンドンのびんぼう町で馬車小屋の中にとまることがこわいのではない。これまでの流浪生活るろうせいかつで、いくたびわたしは今夜よりも、もっとたよりない夜を明かしたことがあったであろう。わたしは現在げんざいあらゆる危険きけんから庇護ひごされていることはわかっているのに、恐怖きょうふがいよいよつのって、もうふるえが出るまでになっている。
 時間はだんだんたっていった。ふとうまやの向こうの、往来おうらいに向かったドアの開く音がした。それから五、六たびいて規則きそく正しいノックが聞こえた。やがて明かりが馬車の中にさしこんだ。わたしはびっくりしてあわててそこらを見回した。わたしの寝台ねだいのわきにねむっていたカピは、うなり声を立てて起き上がった。わたしはそのときその明かりが馬車の小窓こまどからはいって来ることを知った。その小窓はわたしたちの寝台ねだいの向こうについていたのを、さっきはカーテンがかかっていたのでとこにはいるとき気がつかなかったのであった。この窓の上部はマチアの寝台ねだいに近く、下部はわたしの寝台に近かった。カピがうちじゅうを起こしてはいけないと思って、わたしはかれの口に手を当てて、それから外をながめた。
 すると父親がうまやにはいって来て、しずかにこうがわのドアを開けた。そして二人、かたに重い荷をせおった男を外からび入れて、やはり用心深い様子で、またドアをめた。それからかれはくちびるに指を当てて、ちょうちんを持った片手あたてでわたしたちのねむっている事に指さしをした。わたしはほとんどそんな心配はりませんと言って、声をかけようとしたが、もうマチアがよくねむっていると思ったから、それを起こすまいと思って、そっとだまっていた。
 父親はそのとき二人の男に手伝てつだって荷物のひもをほどかせて、やがて見えなくなったが、まもなく母親をれてもどって来た。かれのいないあいだに二人の男は荷物のふうを開いた。中にはぼうしと下着とくつ下に手ぶくろなどがあった。まさしくこの男たちは両親の所へ品物を売りに来た商人であった。父親はいちいち品物を手に取って、ちょうちんの明かりで調べて、それを母親にわたすと、母親は小さなはさみで、正札しょうふだを切り取って、かくしの中に入れた。これがわたしにはきみょうに思えたし、それとともに、売り買いをするのにこんな真夜中まよなかの時間をえらんだということもふしぎであった。
 母親が品物を調べているあいだに、父親は商人に小声で話をしていた。わたしがもうすこしイギリス語を知っていたら、たぶんかれの言ったことばがわかったであろうが、わたしの聞きたかぎりでは、ポリスメン(巡査じゅんさ)ということだけであった。それはたびたびくり返して言ったので、そのためわたしの耳にも止まったのであった。
 のこらずの品物がていねいに書きめられたとき、両親と二人の男がうちの中にはいった。そしてわたしたちの車はまた暗黒あんこくのうちにかれた。かれらはたしかに勘定かんじょうをするために、うちの中にはいったのであった。わたしは自分の見たことがごく当たり前のことであるとしんじようとしたが、いくらそうのぞんでも、そう信ずることできなかった。
 なぜあの両親に会いに来た二人の男が、ほかのドアからはいって来なかったのであろうか。なぜかれらはなにか戸の外で聞くもののあることをおそれるかのように、小声で巡査じゅんさの話をしていたのであったか。なぜ母親は品物を買ったあとで、正札しょうふだを切り取ったのであろうか。わたしはこの考えをとりのけることができなかった。しばらくして明かりがまた馬車の中へさしこんで来た。わたしは今度はついわれ知らず外をながめた。わたしは自分では見てはならないと思っていたが、でも……わたしは見た。わたしは自分では知らずにいるほうがいいと思ったが、でも……わたしは知ってしまった。
 父親と母親と二人だけであった。母親が手早く品物の荷作りをするまに、父親はうまやのすみをはいた。かれがかわいたすなをもり上げたそばに、落としのドアがあった。かれはそれを引き上げた。そのときもう母親は荷物にすっかりなわをかけておいたので、父親はそれを受け取って、落としから下のあなへ下ろした。母親はそばでちょうちんを見せていた。それからかれは落としのドアをめて、またその上にすなをはきせた。その砂の上に二人はわらくずをまきらしてうまやのゆかのほかの部分と同じようにした。そうしておいてかれらは出て行った。
 かれらがそっとドアをめたしゅんかんに、マチアがねどこの中で動いたこと、まくらの上であお向けになったことをわたしは見たように思った。かれは見たかしら。わたしはそれを思い切って聞けなかった。頭から足のつま先までわたしはやあせをかいていた。わたしはこのありさまでまる一晩ひとばんかれた。にわとりが夜明けを知らせた。そのときやっとわたしはまぶたをふさいだ。
 そのあくる朝わたしたちの車の戸を開けるかぎの音がしたので、わたしは目をました。きっと父親がもう起きる時間だと言いに来たのであろうと思って、わたしはかれを見ないように目を閉じた。
「きみの弟だったよ」とマチアが言った。「ドアのかぎを開けて出て行ったよ」
 わたしたちは着物を着た。マチアはわたしによくねむれたかとも聞かなかった。わたしもかれに質問しつもんしなかった。一度かれがわたしのほうを見たように思ったから、わたしは目をそらせた。
 わたしたちは台所まで行った。けれども父親も母親もそこにはいなかった。祖父そふれいの大きないすにこしをかけて、もうゆうべからすわったなりいるように、火の前にがんばっていた。そうしていちばん上の妹のアンニーというのが、食卓しょくたくをふいていた、いちばん上の弟のアレンが部屋へやをはいていた。わたしはかれらのそばへって「おはよう」と言ったが、かれらはわたしには目もくれないで、仕事をつづけていた。
 わたしは祖父そふのほうへ行ったが、かれはわたしを見てそばへはせつけなかった。そうしてまえのばんのようにわたしのほうにつばをはきかけた。それでわたしは行きかけて立ち止まった。
「聞いてくれたまえよ」とわたしはマチアに言った。「いつ、父さんや母さんは出て来るのだか」
 マチアはわたしの言ったとおりにした。すると祖父そふはわたしたちの一人がイギリス語を話したので、すこしきげんを直したように見えた。
「なんだと言うのだね」とわたしは言った。
「きみの父さんは一日よそへ出て帰らない。母さんはねむっている。それで出たければ外へぼくたちが出てもいいというのだ」
「たったそれだけしか言わないの」とわたしはこの翻訳ほんやくがたいへん簡単かんたんすぎると思って言った。
 マチアはまごついたようであった。
「そのほかのことばはよくわかったか、どうだか知らない」とかれは言った。
「ではわかったと思うだけ言いたまえ」
「なんでもあの人は、ぼくたちも町でなにか商売でもして、一もうけして来るがいい。ただめしを食われてはやりきれない、というようなことを言っていたと思う」
 祖父そふはかれの言ったことを、マチアが説明せつめいして聞かしているとさとったものらしく、中気ちゅうきでないほうの手でなにかをかくしにおしこもうとするような身ぶりをして、それから目配せをして見せた。
「出かけよう」とわたしはすぐに言った。
 二、三時間のあいだわたしたちはそこらを歩き回ったが、道にまよってはいけないと思って遠くへは行かなかった。ベスナル・グリーンは夜見るよりも昼見るとさらにひどい所であった。マチアとわたしは、ほとんど口をきかなかった。ときどきかれはわたしの手をにぎりしめた。
 わたしたちがうちへ帰ったとき、母親はまだ部屋へやから出て来なかった。開け放したドアのすきからわたしはかの女がつくえの上につっぷしているのを見た。かの女は病気なのだと思ったが、わたしは話をすることができないから、代わりにキッスしようと思って、そばへかけて行った。
 するとかの女はふらふらする頭を持ち上げて、わたしのほうをながめたが、顔は見なかった。かの女のあつい息の中には、ぷんとジン酒のにおいがした。わたしは後ずさりをした。かの女の頭はまた下がって、つくえの上にぐったりとなった。
「ジンに当たったのだよ」と祖父そふは言って、歯をむき出した。
 わたしはそのほうは見向きもせずにじっと立ちどまった。からだが石になったように感じた。どのくらいそうして立っていたか知らなかった。ふとわたしはマチアのほうを向いた。かれは両眼りょうがんになみだをいっぱいうかべて、わたしを見ていた。わたしはかれに合図をして、また二人でうちを出た。
 長いあいだわたしたちはおたがいの手を組み合ってならんで歩きながら、何も言わずに、どこへ行こうという当てもなしに、まっすぐに歩いた。
「ルミ、きみはどこへ行くつもりだ」とかれはとうとう心配そうにたずねた。
「ぼくは知らない。どこかへとだけしか言えない。マチア、ぼくはきみと話がしたい。だがこの人ごみの中では話もできない」
 わたしたちはそのとき、いつか広い町へ出ていた。そのはずれには公園があった。わたしたちはそこまでかけて行って、こしかけにこしをかけた。
「ねえ、マチア、ぼくがどんなにきみをあいしているか、知ってるだろう。だから今度ぼくがうちの人たちに会いに来るとき、いっしょにきみに来てもらったのは、きみのためを思ったことだったのだ。きみはぼくがなにをたのんでも、ぼくの友情ゆうじょううたがいはしないだろうねえ」とわたしは言った。
「ばかなことを言いたまえ」とかれは無理むりわらって言った。
「きみはぼくをきださせまい思って、そんなふうに笑うのだね」とわたしは答えた。「ぼくはきみといっしょにいるときに、泣けないなら、いつ泣くことができよう。でも……おお……マチア、マチア」
 わたしは両うでをなつかしいマチアの首にかけて、ほろほろなみだをこぼした。わたしはこんなになさけなく思ったことはなかった。わたしがこの広い世界にひとりぼっちであったじぶん、かえってわたしはこのしゅんかんほどに不幸ふこうだとは感じなかった。わたしはすすりきをしてしまったあとで、やっと気を落ち着けることができた。わたしがマチアを公園にれて来たのは、かれのあわれみをもとめるためではなかった。それはわたしのためではなかった。かれのためであった。
「マチア」とわたしは思い切って言った。「きみはフランスへ帰らなければならないよ」
「きみをてて、どうして」
「ぼくはきみがそう答えるだらうと思っていた。それを聞いてぼくはうれしい。ああ、きみがぼくといっしょにいたいというのは、まったくうれしい。けれどマチア、きみはすぐにフランスへ帰らなければならないよ」
「なぜさ、そのわけを言いたまえ」
「だって……ねえ、マチア、こわがってはいけないよ。きみはゆうべねむったかい。きみは見たかい」
「ぼくはねむらなかったよ」とかれは答えた。
「するときみは見た……」
「ああのこらず」
「そうしてきみはそのわけがわかったか」
「あの品物が、だいをはらったものでないことはわかるよ。だって、きみのお父さんは、あの男たちに母屋おもやのドアをたたかないで、うまやのドアをたたいたというのでおこっていた。するとあの二人は巡査じゅんさ見張みはりをしているからと言っていたもの」
「それできみは行かなければならないことがよくわかったろう」とわたしは言った。
「ぼくが行かなければならないなら、きみだって行かなければならない。それはぼくにだって、きみにだって、いいはずがないもの」「パリでガロフォリに会ったとして、あの人が無理むりにきみをれ帰ろうとしたら、きみはきっと、ぼくに一人でわかれて行ってくれと言うと思うよ。ぼくはただきみが自分でもするだろうと思うことをするだけだ」
 かれは答えなかった。
「きみはフランスへ帰らなければいけない」とわたしは言いった。「リーズの所へ行ってぼくがやくそくしたことも、あの子の父親のためにしてやることも、みんなできなくなったわけを話してくれたまえ。ぼくはあの子に、なによりもぼくのすることはあの人の借金しゃっきんをはらってやることだと言った。きみはあの子にそれのできなくなったわけを話してくれたまえ。それからバルブレンのおっかあの所へも行ってくれたまえ。ただうちの人たちは思ったほど金持ちではなかったとだけ言ってくれたまえ。金のないということはなにもはずかしいことではないのだから。でもそのほかのことは言わないでくれたまえ」
「きみがぼくに行けと言うのは、あの人たちがびんぼうだからというのではない。だからぼくは行かない」とマチアは強情ごうじょうに答えた。「ぼくはゆうべ見たところでそれがなんだかわかった。きみはぼくの身の上をあんじているのだ」
「マチア、それを言わないでくれ」
「きみはいつか、ぼくまでがだいのはらってない品物の正札しょうふだを切り取るようなことになるといけないと心配しているのだ」
「マチア、マチア、よしたまえ」
「ねえ、きみがぼくのために心配するなら、ぼくはきみのために心配する。ぼくたち二人で出かけよう」
「それはとてもできない。ぼくの両親はきみにとってはなんでもないが、ぼくには父親と母親だ。ぼくはあの人たちといっしょにいなければならない。あれはぼくの家族なのだから」
「きみの家族だって。あのどろぼうをする男が、きみの父親だって。あの飲んだくれ女が、きみの母親だって」
「マチア、それまで言わずにいてくれ」とわたしはこしかけからとび上がってさけんだ。「きみはぼくの父親や母親のことをそんなふうに言っているが、ぼくはやはりあの人たちを尊敬そんけいしなければならない。あいさなければならない」
「そうだ。それがきみのうちの人なら、そうしなければ。だが……あの人たちは」
「きみ、あんなにたくさん証拠しょうこのあるのをわすれたかい」
「なにがさ、きみは父さんにも母さんにもてはいない。あの子どもたちはみんな色が白いが、きみは黒い。それにぜんたいどうしてあの人たちが子どもをさがすためにそんなにたくさんの金が使えたろうか。そういういろいろのことを集めてみると、ぼくの考えでは、きみはドリスコル家の人ではない。きみはバルブレンのおっかあの所へ手紙をやって、きみが拾われたときの産着うぶぎがどんなふうであったか、たずねてみたらどうだ。それからきみがお父さんといまんでいるあの人に子どもがぬすまれたとき着ていた着物のくわしいことを聞かせてもらいたまえ。それまではぼくは動かないよ」
「でももしきみの気のどくな頭が、そのために一つ食らったらどうする」
「なあに友だちのためならぶたれても、そんなにつらくはないよ」とかれはわらいながら言った。


 

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