四
一時間の
「
「ただ今電話をかけさせました。――すぐに
賢造は念を押すように、慎太郎の方を振り返った。慎太郎はまだ制服を着たまま、博士と向い合った父の隣りに、
「ええ、すぐに見えるそうです。」
「じゃその
谷村博士はこう云いながら、マロック革の巻煙草入れを出した。
「当年は
「とかく雲行きが悪いんで弱りますな。天候も財界も昨今のようじゃ、――」
お絹の夫も横合いから、滑かな言葉をつけ加えた。ちょうど見舞いに来合せていた、この若い
しかし戸沢と云う出入りの医者が、彼等の間に
「もう御診断は御伺いになったんですか?」と、強い東北
「いや、あなたが御見えになってから、申し上げようと思っていたんですが、――」
谷村博士は指の間に短い巻煙草を挟んだまま、賢造の代りに返事をした。
「なおあなたの御話を承る必要もあるものですから、――」
戸沢は博士に問われる通り、ここ一週間ばかりのお律の
しかしその話が一段落つくと、谷村博士は
「いや、よくわかりました。無論十二指腸の
「ははあ、下腹が押し上げられるように痛い?」
戸沢はセルの
しばらくは誰も息を呑んだように、口を開こうとするものがなかった。
「熱なぞはそれでも
その内にやっと賢造は、覚束ない反問の口を切った。しかし博士は巻煙草を捨てると、
「それがいかんですな。熱はずんずん
「なるほど、そう云うものですかな。こりゃ我々若いものも、伺って置いて
お絹の夫は腕組みをした手に、時々
「しかし私が診察した時にゃ、まだ別に腹膜炎などの
戸沢がこう云いかけると、谷村博士は職業的に、
「そうでしょう。多分はあなたの御覧になった
「じゃすぐに入院でも、させて見ちゃいかがでしょう?」
慎太郎は
「今はとても動かせないです。まず
谷村博士はそう云ったぎり、沈んだ眼を畳へやっていたが、ふと思い出したように、
「じゃ私はもう
慎太郎は父や義兄と一しょに、博士に
「どうか博士もまた二三日
戸沢は
「ええ、
これが博士の最後の言葉だった。慎太郎は誰よりずっと後に、暗い
お律と子等と(おりつとこらと)
作家录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
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