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黒百合(くろゆり)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-22 13:13:48  点击:  切换到繁體中文



       四十二

 その蔵屋という方の床几しょうぎに、腰を懸けたのは島野紳士、ここに名物の吹上の水に対し、上衣コオトを取って涼をれながら、硝子盃コップを手にして、
「ああ、涼しいが風がんだ、何だか曇って来たじゃあないか、雨はどうだろうな。」
 客の人柄を見てまねきの女、お倉という丸ぽちゃが、片襷かただすきで塗盆を手にして出ている。
「はい、大抵持ちましょうと存じます。それとも急にこうやって雲が出て参りましたから、ふとすると石滝でお荒れ遊ばすかも分りません。」
「何だね、石滝でお荒れというのは。」
「それはあの、少しでも滝から先へ足踏をする者がございますと、暴風雨あらしになるッて、昔から申しますのでございますが。」
 島野は硝子盃を下に置いた。
「うむ、そして誰か入ったものがあるのかね。」
「今朝ほど、背負上しょいあげを高くいたして、草鞋わらじ穿きましてね、花籃はなかごを担ぎました、容子ようすい、美しい姉さんが、あの小さなお扇子を手に持って、」と言懸いいかかると、何と心得たものか、紳士は衣袋かくしの間から一本平骨ひらぼねの扇子を抜出して、胸の辺りを、さやさや。
「はあ、それが入ったのか。」
「さようでございます。その姉さんは貴方あなた、こないだから、昼間参りましたり、晩方来ましたりいたしましては、この辺を胡乱々々うろうろして、行ったり来たりしていたのでございますがね。今日は七日目でございます。まさかそんなことはと存じておりますと、今朝ほどここの前を通りましてね、滝の方へ行ったきり帰りません、きっと入りましたのでございましょう。」
「何かね、全くそんな不思議な処かね。」
「貴方、お疑り遊ばすと暴風雨あらしになりますよ。」といって、塗盆を片頬かたほにあてて吻々ほほと笑った、聞えた愛嬌者あいきょうものである。島野は顔の皮をゆるめて、眉をびりびり、目を細うしたのはうまでもない。
「それはいが姉さん、心太ところてんを一ツ出しておくれな。」
「はい、はい。」
「待ちたまえ、いや、それともまた降られない内に帰るとするかね。」
「どういたしまして、降りませんでも、貴方川留かわどめでございますよ。」
 方二坪ばかり杉葉の暗い中にむくむくと湧上わきあがる、清水に浸したのをつきにかけてずッと押すと、心太ところてんの糸は白魚のごときその手にからんだ。皿にって、はいと来る。島野は口も着けず下に置いて、
「そうして何かい、ついぞまだそこへ行った者を見たことはないのか。」
「いいえ、私が生れましてから始めてでございますが、貴方どうでございましょう、つい少しばかり前にいらっしゃいました、太った乱暴な、書生さんが、何ですか、その姉さんがここへ参りましたことを御存じの様子で、どうだとお聞きなさいますから、それそれ申しますと、うむといったッきり駈出かけだして、その方もまだおかえりになりません。」
「え、そりゃ何か、目の丸い、」
「はい、お色の黒い、いがぐり天窓あたまの。もうもう貴方のようじゃあございませんよ、おほほほ。」
「いや!」とばかりでこの紳士、何か早や、にたりとしたが、急に真面目になって、
「ちょッ、しようがないな。」
「貴方御存じの方なんですか。」
「うむ、何だよ、その娘の跡をけまわしてな、からいやがられ切ってる癖に、狂犬やまいぬのような奴だ、来たかい! 弱ったな、どうも、うぬ一人で。」
「何でございます。」
「いえさ、つれは無かったのか。」

       四十三

「ただお一人でございましたよ、えらそうなお方なんです。それに仕込杖しこみづえなんぞ持っていらっしゃいましたから、私達がかれこれ申上げた処で、とてもお肯入ききいれはなさりますまいと、そう思いまして黙って見ておりましたが、無事にお帰りなさればうございますがね。」
 島野は冷然として、
「何、犬に食われて死にゃあ可いんだ。」
「だって、姉さんはお可哀そうじゃございませんか。」
「そりゃお互様よ。」
「あれ、お安くございませんのね。でも、あの、二度あることは三度とやら申しますから、今日の内また誰かお入りなさりはしまいかと言って、内の父様おとっさんも案じておりますから、貴方またその姉さんをお助けなさろうの何のッて、あすこへいらっしゃるのはお止し遊ばしまし。」
「だが、その滝のそばまでは行っても差支さしつかえが無いそうじゃないか。」
「そこまでならたまに行く人もございますが、貴方何しろ真暗まっくらだそうですよ。もうそこへ参りました者でも、帰ると熱を煩って、七日も十日も寝る人があるのでございます。」
「熱はお前さんを見て帰ったって同一おんなじだ、何暗いたッて日中ひなかよ、構やしない。きっとそこらにうろついているに違いない、ちょっと僕は。おい、姉さん帰りに寄ろう。」
「お気をお着け遊ばしていらっしゃいましよ。」
 島野は多磨太がさきんじたりと聞くより、胸の内安からず、あたふた床几しょうぎを離れて立ったが、いざとなると、さて容易な処ではない。ほぼ一町もあるという、森の彼方かなたにどうどうと響く滝の音は、大河をさかしまに懸けたように聞えて、その毛穴はここに居る身にもぞッと立った。島野は逡巡して立っている。
 折から堤防伝つつみづたいにひづめの音、一人砂烟すなけぶりを立てて、ななめに小さく、くうを駆けるかと見る見る近づき、懸茶屋かけぢゃやの彼方から歩をゆるめて、悠然と打って来た。茶屋の際の葉柳の下枝しずえくぐって、ぬっくりと黒くあらわれたのは、たてがみから尾に至るまで六尺、たけの高きこと三尺、全身墨のごとくにして夜眼やがん一点のはくあり、名を夕立といって知事の君が秘蔵の愛馬。島野は一目見て驚いて呆れた。しっくりと西洋ぐら置いたるに胸を張ってまたがったのは、美髯びぜん広額の君ではなく、一個白面の美少年。頭髪柔かにやや乱れた額少しく汗ばんで、玉洗えるがごとき頬のあたりを、さらさらと払った葉柳の枝を、一掴み馬上に掻遣かいやり、片手に手綱を控えながら、一蹄いってい三歩、懸茶屋の前に来ると、くだんの異彩ある目に逸疾いちはやく島野を見着けた。
「島野、」と呼懸けざま、飜然ひらり下立おりたったのは滝太郎である。
 常にジャムを領するをもって、自家の光彩を発揮する紳士は、この名馬夕立に対して恐入らざるを得ないので、
「おや、千破矢様、どうして貴方、」と渋面を造ってかしらを下げる。その時、駿足しゅんそくに流汗を被りながら、呼吸はあえて荒からぬ夕立の鼻面を取って、滝太郎は、自分もてのひらで額の髪を上げた。
「おい、姉や。」
「はい、」
「水を一杯、つめたいのを大急おおいそぎだ。島野、可い処でおめえに逢ったい。おいら、お前ンとこの義作の来るまで、あすこの柳にでもつないでおこうと思ったんだけれど、お前が居りゃあ世話はねえ。この馬返すからな、四十物町あえものちょうまで持って行ってくんねえ、頼むぜ、おい。」
 呆れたものいいと、唐突だしぬけの珍客に、茶屋の女どもは茫乎ぼんやり

       四十四

 島野は、時というとこの苦手があらわれるのを、前世の因縁とでもいいたげな、弱り果てて、
「へい、その馬を持って帰れとおっしゃるんですか。」
 と不平らしい顔をした。
「そうよ。」
「一体その何でございますが、私はどうも一向馬の方は心得ませんもんですから。」
「大丈夫だ。こう、おめえ一ツ内端うちわじゃあねえか、知己ちかづきだろう、暴れてくれるなって頼みねえ、どうもしやあしねえやな。そして乗られなかったらいて行くさ。だからちったア馬に乗ることも心懸けておくこッた、女にかかり合っているばかりが芸じゃあねえぜ。どうだ、色男。」と高慢なことを罪もなくいって、滝太郎は微笑ほほえんだ。
「失敬な。」も口のうちで、島野は顔を見らるるときまり悪そうに四辺あたりをきょろきょろ。茶店のむすめは、目の前にほっかりと黒毛のこまが汗ばんで立ってるのをはばかって、洋盃コップもたらした。右手めてをのべて滝太郎が受ける時、駒はたてがみさっと振った。あれと吃驚びっくりしてむすめあとへ。若君はくつわを鳴らして、しっかと取りつつ、冷水の洋盃を長く差伸べて、盆に返し、
「沢山だ。おい、可いか、島野、預けるぜ。」
 きっと向直って、早く手綱を棄てようとする。島野は狼狽うろたえて両手を上げて、
「若様どうぞ、そりゃ平に、」とばかり、荒馬を一頭ひとつ背負しょわされて、庄司重忠にあらざるよりは、誰かこれを驚かざるべき。見得も外聞も無しに恐れ入り、
「平に御容赦てッたような訳なんです。へい、全く不可いけません。それにちっと待合わせるものもあるんでございますから。」
 と窮したる笑顔を造って、かれはほとんど哀を乞う。
 滝太郎は黙ってうなずくとひとしく、駒の鼻頭はなづら引廻ひきめぐらした。ひづめの上ること一尺、夕立は手綱を柳の樹に結えられていなないた。
「島野、おい、島野。」
 この声を聞くごとに、ほんのこッた、紳士はぞッとする位で。
「へい、御用ですか。」
「お前、待合わせるものがあるッて、また別嬪べっぴんじゃあねえか、花売のよ。」
御串戯ごじょうだんを、」と言ったが、内心えぐられたように、ぎっくりして、おだやかならず。
 滝太郎はたわむれにいったばかり。そのまま茶屋のむすめを見返り、
「何ぞ食べるものをくれねえか、多い方が可いぜ。」
「姉さんおいしいものを、早く、冷たくして上げるが可い。」と、島野はてれ隠しに世辞をいった。
「はい、西瓜すいかでも切りましょうか。心太ところてん真桑まくわ、何を召あがります。」
「そんな水ッぽいもんじゃあねえや、べらぼうめ、そこいらに在る、有平あるへいだの、餡麺麭あんパンだの、駄菓子で結構だ。懐へ捻込ねじこんで行くんだから紙にでも包んでくんな。」と並べた箱の中にゆびさしをする。
「どちらへいらっしゃいます。」
「石滝よ。」
 驚いたのは茶店のむすめばかりではない、島野も思わず顔をながめる。
兵粮ひょうろうだ、奥へへえって黒百合を取って来ようというんだから、日が暮れようも分らねえ。ひもじくなるとそいつをかじらあ、どうだ、お前、勇美さんに言いねえ、土産を持って行ってやるからッてよ。」
「途方もない、若様。それを取ろうッて、実はつい先刻さっきだそうです。あの花売のむすめも石滝へ入ったんです。」
「うむ、」といった滝太郎の顔の色は動いた。滝のひびきを曇天に伝えて聞える、小川の彼方かなたの森のかたを、きっと見て、すっくと立って、
「あの阿魔がかい、そいつああぶねえ!」
 先立って二度あることは三度とやら、見通みとおしの法印だった、蔵屋の亭主は奥からあわただしく顔を出して、
「そりゃこそ、また一人。」

       四十五

「やあ、島野さん、千破矢の若様はどうしました。」
「義作じゃないか、一体ありゃあどうしたんだね。お前、魔物が夕立に乗って降って来たから、驚いたろうじゃあないか。」となかば独言ひとりごとのようにぶつぶついう。
 かぶった帽も振落したか、駆附けの呼吸いきもまだはずむ、おやかたの馬丁義作、大童おおわらわで汗をき、
「どうしたって、あれでさ、お前様まえさん、私ゃ飛んでもねえどじをったで。へい、今朝旦那様をお役所へ送ってね、それからでさ、えて引張ひっぱって総曲輪まで帰って来ると、何に驚いたんだか、評判の榎があるって朝っぱらから化けもしめえに、畜生棹立さおだちになって、ヒイン、え、ヒインてんで。」
「暴れたかね。」
「あばれたにも何も、一体名代の代物しろものでごぜえしょう、そいつがおさん、盲目めくら滅法界に飛出したんで、はっと思う途端に真俯向まうつむけのめったでさ。」
「おやおや、道理で額を擦剥すりむいてら。」
 義作はてのひらでべたべたと顔を撫でて、
串戯じょうだんじゃあがあせん、わっし一期いちごで、ダーだと思ったね、つちん中へ顔をうずめておさん、ずるずると引摺ひきずられたから、ぐらぐらと来て気が遠くなったんで。しばらくして突立つったって、わってッて追い駆けると、もうわいわいという騒ぎで、砂煙すなけぶりが立ってまさ。あれから旅籠町へ抜けて、東四十物町を突切つっきって、橋通りへかかって神通を飛越そうてえ可恐おそろしれ方だ。南無三宝なむさんぽう、こりゃ加州まで行くことかと息切がしてあおくなりましたね。鳥居前のお前さん、乱暴じゃあがあせんか、華族様だってえのにどうです、もっともまああの方にゃあ不思議じゃねえようなものの、空樽あきだるの腰掛だね、こちとらだって夏向は恐れまさ、あのそら一膳飯屋から、横っちょに駆出したのが若様なんです。え、滝先生、滝公、滝坊、へん滝豪傑、こっちの大明神なんで。」とぐっと乗り、拳を握って力を入れると、島野は横を向いて、
「ふむ。」
「どうです、威勢が可いじゃがあせんか。突然いきなり畜生の前へ突立つったったから、ほい、蹴飛ばされるまでもねえ、前足が揃って天窓あたまの上を向うへ越すだろうと思うと、ひたりととまったでさ。畜生、貧乏ゆるぎをしやあがるあごの下へ、体を入れて透間がねえようにくッついて立つが早いか、ぽんと乗りの、しゃんしゃんさ。素人にゃあ出来やせん。義作、貸しねえ貸しねえてって例の我儘わがままだから断りもされず、不断面倒臭くって困ったこともありましたっけが、先刻さっきほんのこった、わっしゃ手を合わせました。どうしておさんなんざ学者で先生だっていうけれど、からそんな時にゃあ腰を抜かすね。へい。何だって法律で馬にゃあ乗れませんや、どうでげす。」
「はい、お茶を一ツ。」
 大気焔きえんの馬丁は見たばかりで手にも取らず、
「おう、そんなもなあ、まだるッこしい。今にわっしゃそこにいてるのに口をつけて干しちまうから打棄うっちゃっておきねえ。はははは、ええ島野さん。おいらこれから石滝へくから、おめえあとから取りに来ねえ、夕立はちょいと借りるぜって、そのまま乗出したもんだからね、そこいら中騒いでたてええに相済みませんを百万だら並べたんで。転んだ奴あ随分あったそうだけれど、大した怪我人もなし、持主が旦那様なんですから故障をいう奴もねえんで、そっちゃ安心をして追駈おいかけて来ましたが、何は若様はどちらへ行ったんで。」
「じゃあ、その何だろう、馬騒ぎで血逆上ちのぼせがしたんだろう、本気じゃあないな。兵粮だって餡麺麭あんパン捻込ねじこんで、石滝の奥へ、今のさき橋を渡ったんだ、ちょうど一足違い位なもんだ。」
「やッ、」というて目を※(「目+爭」、第3水準1-88-85)みはる義作と一所に吃驚びっくりしたのは、茶店の女で、向うの鍵屋の当のかたき、およねといって美しいのが、この折しも店先からはたはたと堤防つつみへ駆出したことである。故こそあれ腕車が二台。

       四十六

「もしもしちょいとどうぞ、どうぞちょいとお待ち遊ばして。」と路を遮ったので、威勢の腕車くるまが二台ともばったり[#「ばったり」は底本では「ばつたり」]とまる。米は顔を赤らめて手を膝に下げて、
「恐入ります、御免下さいまし。どちらの姫様ひいさまですか存じませんが、どうぞあちらへいらっしゃいましたら、わたくしどもへお休み遊ばして下さいまし、後生でございます。」
 先に腕車くるまに乗ったのは、新しい紺飛白こんがすり繻子しゅすの帯を締めて、銀杏返いちょうがえしに結った婦人おんな
「何だね、お前さん。」
「はい、鍵屋と申します御休憩所おやすみどころでございますが、よそと張合っておりますので。
 今朝からむこうにばかりお客がございます処へ、またお馬に召した立派な若様がお立寄でございました。あのお倉さんというのが、それはもうこれ見よがしで、わたくしは居ても立ってもいられません。あんまり悔しゅうございますから、どんなにお叱り遊ばしてもうございます、お見懸け申しましてお願い申します。助けると思召して後生でございます、わたくしどもへ。」
 とおろおろ声で泣くようにいう。
「おや、じゃああのお茶屋の姉さんかい。」
「はい、さようでございます。」
「それでは御馳走をしてくれますか、」と背後うしろ腕車くるまで微笑みながらいったのは、米が姫様ひいさまと申上げた、顔立も風采ふうさいもそれにかなった気高いのが、思懸けず気軽である。
 女はかえって答もなし得ず、俯向うつむいてただお辞儀をした。
「それじゃ若衆わかいしゅさん。」
「おう、鍵屋だぜ。」
「あい、んねえ。」
 車夫は呼交わしてそのまま曳出ひきだす。米は前へ駆抜けて、初音はつねはこの時にこそ聞えたれ。横着よこづけにした、楫棒かじぼうを越えて、前なるがまず下りると、石滝界隈かいわいへ珍しい白芙蓉はくふようの花一輪。微風にそよそよとして下立った、片辺かたえ引添ひっそい、米は前へ立ってすらすらと入るのを、蔵屋の床几しょうぎに居た両人、島野と義作がこれを差覗さしのぞいて、あわただしくひょいと立って、体と体がれるように並んで、急足いそぎあしにつかつかと出た。
「お嬢様。」
「へい、お道どん、御苦労だね。」
「おや、義作さん、ここに。」
 勇美子は店さきに入ろうとしたが、不意に会った内の者を顧みて、
「島野さんも来ていたの。」
「ええ、僕は大分久しい前からなんです。義作君はたった今、その馬が放れました一件で。」
「実は何でございます、飛んだ疎匆そそうをいたしやして、へい。ねえ、お道どん、こういう訳なんだ、実は、」
「はあ、そりゃもう、路で聞きましたよ、飛んだことだったね、でもまあ塩梅あんばいに。」
「御家来さん、あぶのうがしたな。」
「しかし怪我アしなさらなくって何よりだったよ。」と車夫どもは口々なり。お道もまた、
「そうねえ。」
「ええ、もうわっしゃ怪我なんぞいとやしませんが、何、みんな千破矢の若様のおかげなんで、へい。」
「ちょいとどうなすったの、滝太郎さんは。」と姫は四辺あたりを見て、御意遊ばす。
「お馬はあすこに居るじゃあないかね。」
「お嬢様、何ですか、その事でこちらへお越しなんですか。」
「何あのお雪のことなの。」
「姉さん、花売なんだがね、十八九でちょっとそういった風な女を見当りはしなかったかい。」
 お道に聞かれて米が答えようとするのを、ちゃっと引取ったのは今両人が鍵屋の女客に引付けられて、店から出るのに気をんで、あとからついて出て立っている蔵屋のむすめ
「その人なら、存じております、今朝ほどでございました。」
「私だって知ってます。」と、米はつんとして倉を※(「目+分」、第3水準1-88-77)じろり

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