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草迷宮(くさめいきゅう)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-22 13:07:19  点击:  切换到繁體中文


 板を抜けたものか知らん、余り変だ、と貴僧あなた
 ここで心が定まりますと、何の事もない。行燈あんどうは蚊帳の外の、宵から置いた処にちゃんとあって、薄ぼんやり紙が白けたのは、もう雨戸の外が明方であったんです。」
「その晩は、お一人で、」
「一人です、しかも一昨晩。」
「一昨晩?」
 と、思わずまたぎょっとする。
「で、何でございますか、その夜伽連よとぎれんは、もうそれ以来懲りて来なくなったんでございますかな。」
「お待ち下さい、トあの、西瓜すいかで騒いだ夜は、たしかその後でしたっけ。
 何、こりゃつまらない事ですけれども、弱ったには弱りましたよ。……
 確か三人づれで、若いしゅが見えました。やっぱり酒を御持参で。大分お支度があったと見えて、するめの足をかじりながら、冷酒ひやざけを茶碗であおるようなんじゃありません。
 竹の皮包みから、この陽気じゃうおの宵越しは出来ん、と云って、焼蒲鉾やきかまぼこなんか出して。
 うもうございましたよ、私もお相伴しましたっけ、」
 と悠々と迫らぬ調子で、
「宵には何事もありませんでした。塩梅あんばい酔心地よいごこちで、四方山よもやまの話をしながら、いなご一ツ飛んじゃ来ない。そう言や一体蚊もらんが、大方その怪物ばけもの餌食えじきにするだろう。それにしちゃけち食物くいものだ――何々、海の中でも親方となるとかえって小さい物をえさにする。くじらを見ろ、しこいわしだ、なぞと大口を利いて元気でしたが、やがて酒はおつもりになる、夜が更けたんです。
 ここでお茶と云う処だけれど、茶じゃ理に落ちて魔物がけ込む。酔醒よいざめにいいもの、と縁側から転がし出したのは西瓜です。聞くと、途中で畑盗人どろぼうをして来たんだそうで――それじゃかえって、憑込もうではありませんか。」

       二十六

「手並を見ろ、狐でも狸でも、この通りだ、と刃物の禁断は承知ですから、小刀ナイフを持っちゃおりません、拳固で、貴僧あなた
 小相撲こずもうぐらい恰幅かっぷくのある、節くれだった若い衆でしたが……」
 場所がまた悪かった。――
「前夜、ココココ、と云って小刀ナイフを出してくれたと同一おなじ処、敷居から掛けて柱へその西瓜すいかめて置いて、大上段おおじょうだんです。
 ポカリった。途端に何とも、すさまじい、石油缶が二三十つかったような音が台所の方で聞えたんです。
 唐突だしぬけですから、宵に手ぐすねを引いた連中も、はあ、と引呼吸ひきいきに魂を引攫ひきさらわれた拍子に――飛びました。その貴僧あなた、西瓜が、ストンと若い衆の胸へ刎上はねあがったでしょう。
 仰向あおむけひっくりかえると、また騒動。
 それ、肩を越した、ええ、足へ乗っかる。わああ!裾へまつわる、火の玉じゃ。座頭の天窓あたまよ、入道首よ、いや女の生首だって、い加減な事ばかり。夕顔の花なら知らず、西瓜が何、女の首に見えるもんです。
 追掛おっかけるのか、逃廻るのか、どたばた跳飛ぶ内、ドンドンドンドンと天井を下から上へ打抜くと、がらがらと棟木むなぎが外れる、戸障子が鳴響く、地震だ、と突伏つッぷしたが、それなりしんとして、しずかになって、風の音もしなくなりました。
 ト屋根に生えた草の、葉と葉が入交いりまじって見え透くばかりに、月が一ツ出ています。――今の西瓜が光るのでした。
 森は押被おっかぶさっておりますし、行燈あんどうはもとよりその立廻りで打倒ぶったおれた。何か私どもは深い狭い谷底に居窘いすくまって、千仞せんじんの崖の上に月が落ちたのをながめるようです。そう言えば、けやきの枝にいかかって、こう、月の上へ蛇のようにたれかかったのが、つたの葉か、と思うと、屋根一面に瓜畑になって、鳴子縄が引いてあるような気もします。
 したたかな、天狗てんぐめ、とのぼせあがって、宵に蚊いぶしにった、杉ッ葉の燃残りを取って、一人、その月へ投げつけたものがありました。
 もろいの、何の、ぼろぼろと朽木のようにその満月が崩れると、葉末の露と一つになって、棟の勾配こうばいすべり落ちて、消えたはいが、ぽたりぽたりしずくがし出した。えりと言わず、肩と言わず、降りかかって来ましたが、手を当てる、とべとりとして粘る。いでみると、いや、貴僧あなた、悪甘い匂と言ったら。
 夜深しに汗ばんで、蒸々むしむしして、咽喉のどの乾いた処へ、その匂い。血腥ちなまぐさいよりたまりかねて、縁側を開けて、私が一番に庭へ出ると、みんな跣足はだしで飛下りた。
 驚いたのは、もう夜が明けていたことです。山のいただきの方はあおくなって、ふもともやが白んでいました。
 不思議な処へ、思いがけない景色を見て、和蘭陀オランダへ流された、と云うのがあるし、堪らない、まず行燈あんどうをつけ直せ、と怒鳴ったのが居る。
 屋根のその辺だ、と思う、西瓜のあとには、烏が居て、コトコトとはしを鳴らし、短夜みじかよの明けた広縁には、ぞろぞろおびただしい、かば色の黒いのと、松虫鈴虫のようなのが、うようよして、ざっと障子へ駆上かけあがって消えましたが、西瓜のたねったんですって。
 連中は、ふらふら[#「ふらふら」は底本では「ふろふら」]と二日酔いのような工合ぐあいで、ぼんやり黒門を出て、川べりに帰りました。
 橋の処で、くいにかかって、ぶかぶか浮いた真蒼まっさおな西瓜を見て、それから夢中で、げたそうです。
 昼過ぎに、宰八が来て、その話。
 私はその時分までぐっすり寝ました。
 この時おかしかったのは、爺さんが、目覚しに茶を一つ入れてやるべいって、小まめに世話をして、い色に煮花が出来ましたが、あいにく西瓜も盗んで来ない。何かないか、と考えて、有る――台所に糖味噌が、こりゃ私に、と云って一々運ぶも面倒だから、と手の着いたのじゃあるが、おけごと持って来て、時々爺さんが何かを突込つッこんでおいてくれるんでした。
 一人だから食べ切れないで、きつき過ぎる、と云って、世話もなし、茄子なすへたごとしょうのもので漬けてありました。つかり加減だろう、とそれに気が着いて、台所へ出ましたっけ。
(お客様あ、)
(何だい。)
昨夜ゆうべすさまじい音がしたと言わしっけね、何にもおっこちたものはねえね。)
 って言いながら、やがて小鉢へ、丸ごと五つばかり出して来ました。
 薄お納戸のい色で。」

       二十七

「青葉の影のす処、白瀬戸の小鉢も結構な青磁の菓子器にったようで、志の美しさ。
 はしを取ると、そのかさなった茄子なすが、あの、薄皮の腹のあたりで、グッ、グッ。
 一ツ音を出すと、また一つグッ、もう一つのもググ、ググと声を立てるんですものね。
 変な顔をして、宰八が、
(お客様、聞えるかね。)
(ああ鳴くとも。)
(ちんじちょうようだ、此奴こいつ、)
 と爺様じいさん鉈豆なたまめのような指のさきで、ちょいと押すと、そのされたのがグググ、手をかえるとまたほかのがググ。
 心あって鳴くようで、何だか上になった、あのへたの取手まで、小さなつのらしく押立おったったんです。
 また飛出さない内に、と思って、私は一ツかじったですよ。」
召食めしあがったか。」
 と、僧は怪訝顔けげんがおで、
「それは、おえらい。」
「何聞く方の耳が鳴るんでしょうから、何事もありません、茄子なすびの鳴くわけは無いのですから。
 それでも爺さんは苦切にがりきって、わかい時にゃ、随分悪物食あくものぐいをしたものだで、葬い料で酒ェ買って、犬の死骸しがいなら今でも食うが、茄子なすの鳴くのは厭だ、と言います。
 もっとも変なことは変ですが、同じ気味の悪い中でも、対手あいてが茄子だけに、こりゃおかしくってかったですよ。」
茄子なすびならば、でございますが、ものは茄子なすでも、対手あいては別にございましょう。」
 明は俯向うつむいて莞爾にっこりした、別に意味のないわらいだった。
「で、そりゃ昼間の事でございますな。」
「昨日の午後ひるすぎでした。」
「昼間からは容易でない。」
 と半ばつぶやくがごとくに云って、
「では、昨夜あたりはさぞ……」
 と聞く方が眉をひそめる。
「ええ、ひどうございました、どうせ、夜が寝られはしないんですから、」
「それでおやつれなさるのじゃ、貴下あなた、お顔の色がとんだ悪い!……
 茶店の婆さんが申したも、その事でございます。
 唯今ただいまお話を伺いました。そんなこんなで村の者もかなくなり、爺様も夜は恐がって参りませんから、貴下の御容子ごようすが分らないに因って、家つきの仏を回向えこうかたがた、お見舞申してはくれまいか、と云うに就いて、推参したのでございますが、いや、何とも驚きました。
 いずれ御厄介に相成らねばなりませんが、わたくしもどうか唯今のその茄子の鳴くぐらいな処で、御容赦が願いたい。
 どこと云って三界さんがい宿なし、一泊御報謝に預る気で参ったわけで。なかなか家つきの幽霊、たたり物怪もののけを済度しようなどという道徳思いも寄らず。実は入道さえ持ちません。手前勝手、申訳のないお詫びに剃ったような坊主。念仏さえろくに真心からは唱えられんでございまして、御祈祷ごきとうそうなどと思われましては、第一、貴下の前へもお恥かしゅうございますが、いかがでございましょう。お宿を願いましても差支えはないでございましょうか。いくらか覚悟はして参りましたが、のあたりお話を伺いましては、ちと二の足でございますが。」
「一人でも客がありますと、それだけ鶴谷では喜びますそうです。持主の本宅が喜びますものを、誰に御遠慮がりますものですか。私もおつれがあって、どんなに嬉しいか知れません。」
「そりゃ、鶴谷殿はじめ、貴下の思召しはさように難有ありがとうございましても、別にその……ええ、まず、持主が鶴谷としますと、この空屋敷の御支配でございますな、――その何とも異様な、あの、その、」
「それは私も御同然です。人の住むのが気に入らないので荒れるのだろうと思いますが。
 そこなんです、貴僧あなたさからいさえしませんければ、畳も行燈あんどうも何事もないのですもの。戸障子に不意に火が附いてそこいらめらめら燃えあがる事がありましても、慌てて消す処は破れ、水を掛けた処は濡れますが、それなりの処は、後で見ますと濡れた様子もないのですから。
 座敷だっていくらもあります、貴僧、」
 とふと心づいたように、
「御一所でおうるさければ、隣のお座敷へいらっしゃい。何か正体を見届けようなぞと云っては不可いけませんが、鶴谷が許したお客僧が、何も御遠慮には及びません。
 ただすらりと開かないで、何かがおさえてでもいるようでしたら、お見合せなさいまし。さからうと悪いんですから。」

       二十八

「なかなか、逆らいますどころではございません、座敷好みなんぞしていものでございますか。
 あのふすまを振向いてじっろ、とおっしゃったって、容易にゃそちらも向けません次第で、御覧の通り、早や固くなっております。
 お話につけて申しますが、実は手前もこの黒門をくぐりました時は、草につかえて、しばらく足が出ませんでございました。
 それと申すが、まず庭口と思う処で、キリキリトーンと、余程その大轆轤おおろくろの、刎釣瓶はねつるべ汲上くみあげますような音がいたす。
 もっともいわくづきのやしきながら、貴下あなたお一方はまずともかくもいらっしゃる。人が住めば水も要ろうで、何も釣瓶の音が不思議と云うでは、道理上、こりゃ無いのでありまするが、婆さんに聞きました心積こころづもり、学生の方が自炊をしておいでと云えば、土瓶か徳利とっくりに汲んで事は足りる、と何となく思ってでもおりましたせいか、そのどうも水を汲む音が、れた女中衆おなごしゅでありそうに思われました。
 ト台所の方を、どうやら嫋娜すらりとした、脊の高い御婦人が、黄昏たそがれに忙しい裾捌すそさばきで通られたような、ものの気勢けはいもございます。
 何となくにぎやかな様子が、七輪に、晩のおかずでもふつふつ煮えていようという、豆腐屋さ――ん、と町方ならば呼ぶ声のしそうな様子で。
 さては婆さんに試されたか、と一旦いったんは存じましたが、こう笠を傾けて遠くから覗込のぞきこみました、勝手口の戸からかけて、棟へ、高く烏瓜からすうりの一杯にからんだ工合ぐあいが、何様、何ヶ月も閉切しめきりらしい。
 ござったかな、と思いながら、くすぐったいような御門内の草を、そっんで入りますと、春さきはさぞ綺麗きれいでございましょう。一面に紫雲英げんげが生えた、その葉の中へ伝わって、断々きれぎれながら、一条ひとすじあおずんだ明るい色のものが、ったように浮いたように落ちています。上へさした森の枝を、月が漏る影に相違は無さそうなが、何となく婦人の黒髪、その、丈長く、足許あしもとに光るようで。
 変にまたぎ心地が悪うございますから、けて通ろうといたしますと、右の薄光りの影の先を、ころころと何か転げる、たちまち顔があらわれたようでございましたっけ、く見ると、うさぎなんで。
 ところでその蛇のような光る影も、むきかわって、またわたくし出途でさきへ映りましたが、兎はくるくると寝転びながら、草の上を見附けの式台の方へ参る。
 これが反対あべこべだと、もと潜門くぐりもんへ押出されます処でございました。強いて入りますほどの度胸はないので。
 式台前で、私はまず挨拶あいさつをいたしたでございます。
 ぬしもおわさばきこし召せ、かくの通りの青道心。何を頼みに得脱成仏とくだつじょうぶつ回向えこういたそう。何を力に、退散の呪詛じゅそを申そう。御姿おんすがたを見せたまわばひとえに礼拝をつかまつる。世にかくれます神ならば、念仏の外他言はいたさぬ。平に一夜、御住居おすまいむしろ一枚を貸したまわれ……」
 ――旅僧はその時、南無仏なむぶつと唱えながら、ささなみのごとき杉の木目の式台に立向い、かく誓って合掌して、やがて笠を脱いで一揖いちゆうしたのであった。――
「それから、婆さんに聞きました通り、壊れ壊れの竹垣について手探りに木戸を押しますと、直ぐにきましたから、しきり前刻さっきの、あの、えへん!えへん!せきばらいをしながら――ひどくなっておりますな――芝生を伝わって、おびただしい白粉おしろいの花の中を、これへ。お縁側からお邪魔をしたしました。
 あの白粉の花は見事です。ちらちらべに色のが交って、咲いていますが、それにさえ、貴方あなた法衣ころもの袖のさわるのは、と身体からだをすぼめて来ましたが、今も移香うつりががして、はばかり多い。
 もと花畑であったのが荒れましたろうか。中に一本、見上げるような丈のびた山百合の白いのが、うつむいて咲いていました。いや、それにもまた慄然ぞっとしたほどでございますから。
 何事がございましょうとも、自力を頼んで、どうのこうの、と申すようなことは夢にも考えておりません。
 しかし貴下あなたは、唯今うけたまわりましたような可怖おそろし只中ただなかに、よく御辛抱なさいます、実に大胆でおいでなさる。」
「私くらい臆病おくびょうなものはありません。……臆病で仕方がないから、なるがまかせに、抵抗しないで、自由になっているのです。」
「さあ、そこでございます。それを伺いたいのが何より目的めあてで参りましたが、何か、その御研究でもなさりたい思召おぼしめしで。」
「どういたしまして、私の方が研究をされていても、こちらで研究なんぞ思いも寄らんのです。」
「それでは、外に、」
「ええ、望み――と申しますと、まだがあります。実は願事があって、ここにこうして、参籠さんろう、通夜をしておりますようなものです。」

       二十九

「それが貴僧あなた前刻さっきお話をしかけました、あの手毬てまりの事なんです。」
「ああ、その手毬が、もう一度御覧なさりたいので。」
「いいえ、手毬の歌が聞きたいのです。」
 と、うっとりと云った目の涼しさ。月の夢を見るようなれば、変った望み、と疑いの、胸に起る雲消えて、僧は一膝ひとひざ進めたのである。
「大空の雲を当てにいずことなく、海があれば渡り、山があれば越し、里には宿って、国々を歩行あるきますのも、せんずる処、ある意味の手毬唄を……」
「手毬唄を。……いかがな次第でございます。」
「夢とも、うつつとも、幻とも……目に見えるようで、口にはえぬ――そして、優しい、なつかしい、あわれな、情のある、愛のこもった、ふっくりした、しかも、清く、涼しく、悚然ぞっとする、胸を※(「てへん+劣」、第3水準1-84-77)かきむしるような、あの、恍惚うっとりとなるような、まあ例えて言えば、かんばしい清らかな乳を含みながら、生れないさきに腹の中で、美しい母の胸を見るような心持の――唄なんですが、その文句を忘れたので、命にかけて、憧憬あこがれて、それを聞きたいと思いますんです。」
 この数分時のことばうちに、小次郎法師は、生れて以来、聞いただけの、風と水と、鐘の音、楽、あらゆる人の声、虫のの葉のささやきまで、稲妻のごとく胸のうちに繰返し、なおかつ覚えただけの経文を、さっ金字こんじ紺泥こんでいに瞳に描いて試みたが、それかと思うのは更に分らぬ。
「して、その唄は、貴下あなたお聞きになったことがございましょうか。」
小児こどもの時に、亡くなった母親が唄いましたことを、物心覚えた最後の記憶に留めただけで、どういうのか、その文句を忘れたんです。
 年を取るに従うて、まるで貴僧あなた、物語で見る切ない恋のように、その声、その唄が聞きたくッてなりません。
 東京のある学校を卒業ますのをまちかねて、故郷へ帰って、心当りの人に尋ねましたが、誰のを聞いても、どんなに尋ねても、それと思うのが分らんのです。
 第一、母親の姉ですが、私の学資の世話をしてくれます、叔母がそれを知りません。
 ト夢のように心着いたのは、同一おなじ町に三人あった、同一おなじ年ごろの娘です。

(産んだその子が男のなら、
 京へぼせて狂言させて、
 寺へ上ぼせて手習てならいさせて、
 寺の和尚が、
 道楽和尚で、
 高い縁から突落されて、
 こうがい落し
 小枕こまくら落し、)

 と、よく私を遊ばせながら、母もわかかった、その娘たちと、毬も突き、追羽子おいはごもした事をうつつのように思出しましたから、それを捜せば、きっと誰か知っているだろう、と気の着いた夜半よなかには、むっくりと起きて、嬉しさに雀躍こおどりをしたんですが、貴僧あなた、そのうちの一人は、まだ母の存命の内に、ひな祭の夜なくなりました。それは私も知っている――
 一人は行方が知れない、と言います……

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