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吉原新話(よしわらしんわ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-23 10:57:55  点击:  切换到繁體中文



       三

 大方はそれが、張出し幕の縫目を漏れてぼうと座敷へ映るのであろう……と思う。欄干下らんかんしたひさしと擦れ擦れな戸外おもてに、蒼白い瓦斯がす一基ひともと大門口おおもんぐちから仲の町にずらりと並んだ中の、一番末の街燈がある。
 時々光を、幅広くほとばしらして、かッと明るくなると、燭台しょくだい引掛ひっかけた羽織の袂が、すっと映る。そのかわり、じっと沈んで暗くなると、紺の縦縞が消々きえぎえになる。
 座中は目で探って、やっと一人の膝、誰かの胸、別のまたほおのあたり、片袖かたそでなどが、風で吹溜ふきたまったように、断々きれぎれほのかに見える。間を隔てたほどそれがかえって濃い、つい隣合ったのなどは、真暗まっくらでまるで姿が無い。
 ふと鼠色の長い影が、幕を斜違はすっかいに飜々ひらひらと伝わったり……円さ六尺余りの大きな頭が、ぬいと、天井にかぶさりなどした。
「今、ちなすったのは魯智深ろちしんさんだね。」
 とぬしは分らず声を懸ける。
「いや、わし胡坐あぐらいています、どっしりとな。」
 とわざと云う。……描ける花和尚かおしょうさながらの大入道、この人ばかりは太ッ腹の、あぶらぼてりで、宵からの大肌脱おおはだぬぎ。絶えずはたはたと鳴らす団扇うちわ[#「団扇」は底本では「団扉」]づかい、ぐいと、抱えて抜かないばかり、柱に、えいとこさで凭懸よりかかる、と畳半畳だぶだぶと腰の周囲まわりに隠れる形体ぎょうてい。けれども有名な琴の師匠で、芸は嬉しい。紺地の素袍すおうに、烏帽子えぼしを着けて、十三げん端然ちゃんと直ると、松の姿にかすみかかって、琴爪ことづめの千鳥がく。
「天井を御覧なさい、変なものが通ります。」
いやですね。」と優しい声。
 当夜、二人ばかり婦人も見えた。
 これは、百物語をしたのである。――
 会をここで開いたのは、わざと引手茶屋を選んだ次第では無かった。
「ちっと変った処で、好事ものずきに過ぎると云う方もございましょう。何しろ片寄り過ぎますんで。しかし実は席をめるのに困りました。
 何しろこの百物語……怪談の会に限って、半夜は中途で不可いけません。夜が更けるに従って……というのですから、御一味を下さる方も、かねて徹夜というお覚悟です。処で、宵から一晩の註文で、いや、随分方々へ当って見ました。
 料理屋じゃ、のっけから対手あいてにならず、待合申すまでも無い、辞退。席貸をと思いましたが、やっぱり夜一夜よっぴてじゃ引退ひきさがるんです。第一、人数が二十人近くで、夜明しと来ては、成程、ちょっとどこといって当りが着きません。こりゃ旅籠屋はたごやだ、と考えました。
 これなら大丈夫、と極めた事にすると、どういたして、まるで帳場で寄せつけません、無理もございますまい。旅籠屋は人の寝る処を、起きていて饒舌しゃべろうというんです。はたが御迷惑をなさる、とこの方を関所破りに扱います、困りました。
 寺方はちょっと聞くといようで、億劫おっくうですし、教会へ持込めば叱られます。離れた処で寮なんぞ借りられない事もありませんが――この中にはその時も御一所で、様子を御存じの方もお見えになります、昨年の盆時分、向島のある別荘で、一会催した事があるんです。
 飛んだ騒ぎで、その筋に御心配を掛けたんです。多人数一室へ閉籠とじこもって、徹夜で、密々ひそひそと話をするのが、しんとした人通ひとどおりの無い、樹林きばやしの中じゃ、そのはずでしょう。
 お引受け申して、こりや思懸けない、と相応に苦労をしました揚句あげく、まず……昔の懺悔ざんげをしますような取詰め方で、ここを頼んだのでございます。
 言訳を申すじゃありませんが、以前だとて、さして馴染なじみも無いうちが、快く承わってくれまして、どうやらお間に合わせます事が出来ました。
 ちと唐突だしぬけに変ったあつらえだもんですから、話の会だと言いますと、
(はあ、おはなの……)なんてな、此家ここ姉御あねご早合点はやがってんで……」
 と笑いながら幹事が最初挨拶あいさつした、――それは、神田辺の沢岡という、雑貨店の好事ものずきな主人であった。

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