十
独りで寂しい昼飯をすませた彼は、
それは、道徳家としての彼と芸術家としての彼との間に、何時も
しかし公衆は欺かれても、彼自身は欺かれない。彼は
この点に於て、思想的に臆病だつた馬琴は、黙然として煙草をふかしながら、強ひて思量を、留守にしてゐる家族の方へ押し流さうとした。が、彼の前には水滸伝がある。不安はそれを中心にして、容易に念頭を離れない。そこへ折よく久しぶりで、
馬琴は喜んで、この親友をわざわざ玄関まで、迎へに出た。
「今日は拝借した書物を御返却
崋山は書斎に通ると、果してかう云つた。見れば風呂敷包みの外にも紙に巻いた
「御暇なら一つ御覧を願ひませうかな。」
「おお、早速、拝見しませう。」
崋山は或興奮に似た感情を隠すやうに、
馬琴の眼は、この淡彩の
「何時もながら、結構な御出来ですな。私は
戯作三昧(げさくざんまい)
作家录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
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