三
彼が「性に合はない」と云ふ
「ははあ、やつぱりさう云ふものでございますかな。手前などの量見では、先生のやうな大家なら、何でも自由にお作りになれるだらうと存じて居りましたが――いや、天二物を与へずとは、よく申したものでございます。」
平吉はしぼつた手拭で、皮膚が赤くなる程、ごしごし体をこすりながら、
「尤も、当節の歌よみや宗匠位には行くつもりだがね。」
しかし、かう云ふと共に、彼は急に自分の子供らしい自尊心が恥づかしく感ぜられた。自分はさつき平吉が、最上級の語を使つて八犬伝を褒めた時にも、格別嬉しかつたとは思つてゐない。さうして見れば、今その反対に、自分が歌や発句を作る事の出来ない人間と見られたにしても、それを不満に思ふのは、
「でございませう。さうなくつちや、とてもああ云ふ傑作は、お出来になりますまい。して見ますと、先生は歌も発句もお作りになると、かう睨んだ手前の眼光は、やつぱり大したものでございますな。これはとんだ手前味噌になりました。」
平吉は又大きな声を立てて、笑つた。さつきの
「いや、うつかり話しこんでしまつた。どれ私も一風呂、浴びて来ようか。」
妙に間の悪くなつた彼は、かう云ふ挨拶と共に、自分に対する一種の腹立しさを感じながら、とうとうこの好人物の愛読者の前を退却すべく、
「では先生その中に一つ歌か発句かを書いて頂きたいものでございますな。よろしうございますか。お忘れになつちやいけませんぜ。ぢや手前も、これで失礼致しませう。お
平吉は追ひかけるやうに、かう云つた。さうして、もう一度手拭を洗ひ出しながら、
戯作三昧(げさくざんまい)
作家录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
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