六
内へ帰つて見ると、うす暗い玄関の
「今日も朝の中はつぶされるな。」
かう思ひながら、彼が式台へ上ると、慌しく出迎へた下女の
「
彼は
「お
「
「お
「はい。坊ちやんと御一しよに。」
「
「山本様へいらつしやいました。」
家内は皆、留守である。彼はちよいと、失望に似た感じを味つた。さうして仕方なく、玄関の隣にある書斎の
開けて見ると、そこには、色の白い、顔のてらてら光つてゐる、どこか妙に取り澄ました男が、細い銀の
「いや、先生、ようこそお帰り。」
客は、襖があくと共に、
「大分にお待ちなすつたらう。めづらしく今朝は、朝湯に行つたのでね。」
馬琴は、本能的にちよいと顔をしかめながら、
「へへえ、朝湯に。成程。」
市兵衛は、大に感服したやうな声を出した。
「そこで今日は何か御用かね。」
「へえ、なに又一つ原稿を頂戴に上りましたんで。」
市兵衛は
馬琴はこの声を聞くと、再び本能的に顔をしかめた。
「原稿と云つたつて、それは無理だ。」
「へへえ、何か
「差支へる所ぢやない。今年は
「成程それは御多忙で。」
と云つたかと思ふと、市兵衛は煙管で灰吹きを叩いたのが相図のやうに、今までの話はすつかり忘れたと云ふ顔をして、突然
戯作三昧(げさくざんまい)
作家录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
相关文章
私の好きなロマンス中の女性(わたしのすきなロマンスちゅうのじょせい)
露訳短篇集の序(ろやくたんぺんしゅうのじょ)
LOS CAPRICHOS(ロス カプリチョス)
路上(ろじょう)
六の宮の姫君(ろくのみやのひめぎみ)
老年(ろうねん)
恋愛と夫婦愛とを混同しては不可ぬ(れんあいとめおとあいとをこんどうしてはならぬ)
るしへる(るしへる)
竜(りゅう)
羅生門の後に(らしょうもんのあとに)
羅生門(らしょうもん)
世之助の話(よのすけのはなし)
横須賀小景(よこすかしょうけい)
妖婆(ようば)
百合(ゆり)
夢(ゆめ)
誘惑(ゆうわく)
悠々荘(ゆうゆうそう)
槍が岳に登った記(やりがたけにのぼったき)
槍ヶ岳紀行(やりがたけきこう)
山鴫(やましぎ)
藪の中(やぶのなか)
保吉の手帳から(やすきちのてちょうから)
文部省の仮名遣改定案について(もんぶしょうのかなづかいかいていあんについて)
桃太郎(ももたろう)